『スウィン・デ・レラ・スウィン・デ・ニンジャ』

「シンデレラ読んで」
「城ではパーティーが開かれています」
「忍殺っぽく」
『「オウジに見染められた奴が結婚できるって?」「実際前例が無い!」テーブルでサケを飲む参加女性。「オウジとファックした奴がカチグミ?昔の絵本にあったね!」「あったあった。お菓子のハウスのやつ?」』

「ア…?そりゃ人魚姫だろ?」「カグヤヒメじゃね?」「でもホントに姫が来たらアタシら勝ち目無いよ」女性陣は一瞬不安な顔をしたが、すぐに顔を見合わせ笑った。「なワケ無いか!」「ヒメなんざいねぇよ!」「いたけど毒リンゴ食って死んじまったよ!」「ウワーッハッハッハ!」ナムアミダブツ!

女性陣の会話をよそに、パーティー会場中央のカーテンが開く!そこには上等なキング・キモノを着たオウジ!金髪碧眼の美貌に会場の眼が釘付けとなる!このパーティーの間にオウジの愛を獲得した者こそが勝者!参加者の女性達に肉食獣めいたアトモスフィアが満ちた。

「オウジ様のオナリであるぞ!」初老の執事が叫ぶ!会場の参加者は90度の最敬礼をした。ここまでは礼儀作法の初歩だ。できねば良くてケジメか、悪くてセプクである。獣めいた欲望を押さえ込み、マナーと言う名のキモノを着て、愛を奪い合う。さながらここは女達のセキバハラなのだ。

「では皆様、オタノシミクダサイ」執事が開始のアイサツを終え下がる!その時!「アイエエエ!アバーッ!」断末魔と共にホールの巨大なバイオオーク製の扉が粉々に粉砕される!扉を破りエントリーしてきたのは、カボチャの馬車?否!ジゴクめいたカボチャのチャリオット
だ!

チャリオットを引くのは小型乗用車ほどの巨牛!車輪には、断末魔の主であろう衛兵の首がチョウチンめいてぶら下がっている!コワイ!「ロウオオーン!!」巨牛は唸り声を上げながらチャリオットをドリフトさせ、火花の軌跡を描きながらホール中央に停車させた!

そして、おお…見よ!チャリオットの座席に鎮座するのは…ドレスめいた蒼いニンジャ装束を着た、ニンジャ!?ブロンドの髪青い瞳の顔には「灰」「姫」の金のメンポ!「イヤーッ!」ニンジャはチャリオットから飛び降り、アイサツをした。「ドーモ、ごきげんよう。スウィンデレラです」

「アイエエエ!?」ヒメ…、いや、ニンジャ!?」「ヒメナンデ!?ニンジャナンデ!?」慄く参加者!「「「ザッケンナコラー!」」」会場の警備にあたっていたクローンヤクザ3名がカタナを構えスウィンデレラに迫る!「アラアラ、ソソウですわね」

「イヤーッ!」「「「グワーッ!!」」」スウィンデレラの輝く足がイアイドめいてヤクザの首を刎ねる!その足にはダイヤモンドチタン製ブレードの付いたガラスの靴!ゴウランガ!踊るような優雅な動きだが、イアイドめいた恐るべき切断力だ!

「チェラッコラー!?」「イヤーッ!」「アバーッ!?」残るクローンヤクザがスウィンデレラを銃撃しようとするが、スウィンデレラは再びダンスステップで高速移動し首を切断!発砲ならず!「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」残るヤクザもサンズ・リバーへ送られていく!

たちまち各所に栓を抜かれたケモビールめいて血を吹き出すクローンヤクザの死体が出現!ツキジめいた惨状だ!「アイ…アイエーエエエ!」オウジは血生臭いキリングフィールドと化した会場から逃亡を図る!しかし、そこに立ちはだかる者あり!おお…ナムサン!スウィンデレラである!

「ドーモ、オウジ様。スウィンデレラです」スウィンデレラはドレスニンジャ装束を摘み、ヒメめいてオジギをした。姿だけ見れば美しく優雅なタタズマイだが、そこにはニンジャという絶対者としての威圧感があった。「ア、アイエエエ…ドーモ、オウジです。君はいったい…」

「私と踊ってくださるかしら」「え…ナンデ」「イヤーッ!」「アイエエエ!」スウィンデレラの足が一閃されオウジの足が浅く切り裂かれる!「私と踊ってくださるかしら」「や、ヤメテ…」「イヤーッ!」「グワーッ!」今度はミゾオチに右ストレートが叩き込まれる!

「もう一度言うわ。私と踊ってくださるかしら」「た、助け」「…ザッケンナコラー!踊るかっつってんだろうが!スッゾコラー!」「アイエエエ!」スウィンデレラはオウジのムナグラを掴みながらヤクザスラングを放った!コワイ!「お、踊ります!命ばかりは…」オウジはしめやかに失禁!

「アイエーエエエ!」殺伐とした状況に耐えかねた参加者が1人外へ逃亡!「イヤーッ!」「アバーッ!」だがスウィンデレラの放ったスリケンが頭部をトマトめいて破壊!「パーティーはまだ途中ですのよ?途中退席はシツレイですわ」もはや会場の主導権は完全にスウィンデレラに握られていた!

◆◆◆
10分後、会場を完全に掌握したスウィンデレラの前には、彼女の義理の母と姉2人がドゲザさせられていた。普段はミスをした者を制裁する側の彼女らだが、今回は立場が逆。しかも死と隣り合わせだ。スウィンデレラは義母達を道端の汚物を見るような目で見下ろした。

「うーん、思ったよりもつまらないわね」スウィンデレラは首を傾げた。「レ、レラ…こんな事はヤメテ…」義理の母の懇願!「…イヤーッ!」「グワーッ!」スウィンデレラが義母を踏みつける!「ブッダファック!私がヒメだ!命令するなッコラー!」隣の姉2人は悲鳴を噛み殺した。

「実際お母様達は邪魔だし殺しても良いのよね。でも、生かしてやらない事も無いわ。私はヒメだからね」スウィンデレラは義母から足を離した。「マナーのお勉強よ。答えられたら助けてあげるわ。…チンタラやってんなよ?テメッコラー…」3人は顔を強張らせた。

「ではお義母様。マナー講師の前にドレスを着て行ったら、弁えていないと注意された。ナンデ?」「…アクセサリーを付けすぎていたから」「ダメ!」「アバーッ!?」ブレードキック斬撃!即死!「未熟者!ジゴク行きです。正解はマナー講師がゲイのサディストだからよ!」何たる理不尽!

「次は上の姉様、マナー講師の前でオジギをしたら角度が違うと注意された。ナンデ?」「ま、マナー講師がゲイのサディストだからです」「正解!マナー講師はゲイのサディストよ!分かった?」「わ、分かったわ」「イヤーッ!」「アバーッ!?」斬撃!即死!

「次。私は上の姉様を正解なのに殺した。ナンデ?」「ア…アア…」2人目の姉は懐からチャカ・ガンを取り出した!「死ねーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!?」だが撃たれる前にブレードキックで首を刎ねられ即死!「正解はマナーなんて気分で変わるから、です」ナムアミダブツ!

「ま、今ので分かったと思うけど」スウィンデレラは殺した義姉達の生首を弄びながら言った。「マナーはクソだわ。所詮は強者が弱者を踏みつけるために作った決まり。律儀に守っても救いなんかないのよ。真面目に守って、救われる?報われる?絶望から目を逸らしただけ。現実逃避よ」

スウィンデレラは手近なトロマグロ・スシを喰らう。「フゥー…、私は義姉や義母達に奴隷めいて扱われた。ブルシットだわ。威張りくさったアバズレ共。やたらマナーだの言うのも結局はイジメの方便。でも、そんな日も終わりだわ。魔法使いのオジサンのおかげで、私は暴力の素晴らしさを知ったの」

スウィンデレラは近くのサケのグラスを掴み笑顔で宣言した。「皆さん、パーティーを楽しんでちょうだいね!ここでは私がルール!私がマナー!私はヒメだしニンジャだから抵抗は無駄よ!気に入らないことをしたら殺すけど、それ以外は自由よ!私は心が広いのよ!」逆らう者は誰もいなかった。

スウィンデレラは笑みを浮かべ、サケをあおった。そして、傍で震えるオウジの執事に声をかける。「オウジ様はまだかしら?」「アイエエエ…ただいま失禁のため着替えております…」「…チンタラしてんなよ?逃げてたら殺すぞッコラー…」「アイエエエ…!もう間も無くかと…」

と、その時、オニめいて凄むスウィンデレラの前に、オウジが姿を現した。「アア…待ちくたびれたわオウジ様…一緒に踊りましょう…」つい先程の姿が嘘のようにスウィンデレラは手を差し出し相手が掴むのを待つ。自分から掴むのは礼儀知らずとされるからだ。頭では否定しても体に染みついた作法である。

オウジがスウィンデレラの手を静かに掴む。2人はホール中央のダンススペースに移動した。(これでオウジ様は私のモノ。ジゴクで見ているのねお姉様。アバズレ共には勿体無いけど、私が全てを手に入れる様を見せてあげるわ)スウィンデレラは勝利を確信し笑う。…だが!

「グワーッ!?」スウィンデレラの手を掴むオウジの手が、突如マンリキめいた力を発揮しスウィンデレラの手を握りつぶし始めた!指の骨がワリバシめいて折れる!「ぐ、グワーッ!?ブッダファック!」スウィンデレラは足のブレードでオウジの手を切断しようとするが、オウジは素早く手を離し回避!

「テメェ、何者だッコラー!?」スウィンデレラがオウジに吠える!「…一緒に踊るのでは無かったのか?」「な…!?」スウィンデレラはオウジの顔を見た。そこには、金髪碧眼の美青年の顔ではなく、憎悪に燃えた瞳にシャンデリアの灯りで煌めく「忍」「殺」のメンポ!

「イヤーッ!」オウジだった者はキング・キモノを破りその正体を現した!「て、テメェは!?」「ドーモ、スウィンデレラ=サン。ニンジャスレイヤーです。薄汚いニンジャがヒメとは笑わせる。オヌシには死のダンスを踊ってもらおう。私のカラテでな。ニンジャ殺すべし…!」

「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。スウィンデレラです。無粋な人ですわね!野良犬に私の高貴さは解らないかしら。…テメェの首を刎ねてイケバナめいてディスプレイ重点だァーッ!」スウィンデレラはガラスの靴のブレードを展開!カマイタチめいてニンジャスレイヤーに迫る!

「イヤーッ!イヤーッ!」高速回転しながら連続ブレードキックを仕掛けるスウィンデレラ!迂闊に近づけばミキサーめいて切り刻まれるためニンジャスレイヤーは側転をしつつ距離を取る!「逃げても無駄ですわ!切り刻んでネギトロ重点なんだよォーッ!」段々と壁に追い詰められていく!

このままニンジャスレイヤーはネギトロめいた死体に変えられてしまうのか!?すると、ニンジャスレイヤーはドゲザめいた姿勢になり床を掴んだ!(ワッザ!?一体何を!?)スウィンデレラは訝るが、殺せば同じ事である!死の回転ブレードがニンジャスレイヤーに迫る!

だが!おお…見よ!ニンジャスレイヤーが掴んでいたのは床ではない!ニンジャスレイヤーは床に敷かれていた絨毯を掴み、勢いよく上に引き上げたではないか!?「イヤーッ!」「グワーッ!」突如波めいて動いた絨毯にスウィンデレラは足を取られる!体勢を崩されたコマめいて転倒!

読者の皆様の中にエンカイゲイの経験のある方はおられるだろうか?テーブルクロスは素早く引けば上の皿やグラスは微動だにしない!だが、引き方を間違えば上のグラスや皿は倒れ、崩れる!要は、テーブルクロス引きの失敗例をニンジャスレイヤーは実演して見せたのだ!

「ヌゥーッ!?」勢い良く転倒したスウィンデレラの右足のブレードが床に深く突き刺さる!これでは動けぬ!引き抜こうともがくがそれを見逃すニンジャスレイヤーではない!「イヤーッ!「グワーッ!」スウィンデレラの右足がストンピングされ複雑骨折!ブレード・キック破れたり!

ニンジャスレイヤーはなおもストンピング続行!頭を踏み潰すためだ!「サツバツ!」だが、スウィンデレラは痛みに顔を歪めながらもブレードを引き抜き、バックフリップで回避!タツジン!だが、既に勝負は決しつつあった。「認めない…私はヒメなのに…どうしてこんな…ブッダシット…!」

ニンジャスレイヤーは無情に言った。「ヒメだと?スウィンデレラ=サン。違う。オヌシは、ニンジャになったのだ。他者を何の感慨もなく虐げ、虫めいて踏み潰す、ニンジャに!」「違う!私はオヒメサマなの!絵本でもヒメは最後に幸せになるの!」狂乱するスウィンデレラ!フィクションの悪影響だ!

スウィンデレラは残った左足のブレードでブレード・トビゲリを実行する!「死ね!ニンジャスレイヤー=サン!死ね!」ウカツ!ヤバレカバレの一撃を放つとは!ニンジャスレイヤーは最低限の動きでかわし、右足を掴む!続いて左足も!「こ、これは…」スウィンデレラは狼狽!

「イィイヤァアアーッ!!」「グワーッ!?」ニンジャスレイヤーはそのまま高速回転し、スウィンデレラをホール天井付近の巨大時計に向け投げ飛ばした!暗黒カラテ技、ジャイアントスイングだ!スウィンデレラは時計に激突し「12」と書かれた部分よりやや下の壁に首から上を残しめり込む!

「アバッ…」めり込みの衝撃でスウィンデレラは実際虫の息であった。身体も動かぬ。「ナンデ…ヒメは幸せになれるはずなのに…ナンデ…」スウィンデレラは涙を流した。ニンジャスレイヤーはそれを憐れみと憎悪の入り混じった視線で見たのち、巨大時計の操作版を操作した。

「ハイクを詠め。スウィンデレラ=サン。オヌシの狂気と、命の潰える時だ」ニンジャスレイヤーの言葉と共に、時計の長針と短針が「12」の数字に向けゆっくりと動き出す。長針と短針の合わさる部分には自分の首。つまりは。「アイエエエ…!」スウィンデレラは初めて恐怖の悲鳴を上げた。

スウィンデレラの脳裏に今までの人生がソーマト・リコールめいて浮かぶ。父の再婚。義理の家族に奴隷めいて扱われた日々。魔法使いを名乗る男の手でニンジャになり、父や通行人を惨殺した夜。「シンデレラみたいに、幸せになりたかった、ブッダファック」スウィンデレラはハイクを詠んだ。

直後、カタナめいた切れ味の時計の長針と短針が首を切断!「サヨナラ!」スウィンデレラはしめやかに爆発四散した。ニンジャスレイヤーの姿はいつの間にか消え、会場にはニンジャのイクサの恐怖により失神、もしくは心停止に至った参加者と、恐怖に震える参加者が残された。

会場にくぐもった鐘の音が響く。大時計が12時の鐘を鳴らし始めたのだ。その鐘の音は参加者達にいくばくかの安らぎを与えた。しばし鐘の音は続く。死んだ者達と、スウィンデレラへの鎮魂歌めいて。

『スウィン・デ・レラ・スウィン・デ・ニンジャ』終わり。

(おまけ)
「キキーッ!アーッ!アーッ!」輪切りにされた人体標本や内臓などのグロテスクなオブジェの並ぶ薄暗い研究室。目を血走らせ奇声を上げている白衣の男はリー・アラキ。悪魔的ニンジャ研究機関「イモータル・ニンジャ・ワークショップ」のセンセイである。

「スウィンデレラのバイタルサイン…消失!何たる…何たる事だ!せめて爆発四散しなければ捕獲してからデータが取れたのに、いけないねェ!」リー先生はダンスめいたジダンダを踏む!オレンジ色のボブカットの豊満な女性はそれを胸の谷間で頭を挟み込むことで止めた。「アーン、いけませんわ」

巨乳の助手の女性、フブキ・ナハタはモニターの画面を切り替えた。「スウィンデレラに仕込んだナノマシンのデータが来ましたわ」「ホゥ…これは…おやまあ!」先程までの怒りが嘘のようにリー先生はモニターの数値を凝視する。そこには、大きな文字で、「精神の破綻な」の文字!

「なんと、精神の方が先にやられたか!?いけないねェ、いや、興味深い!私は肉体の方に異常が出ると思っていたが!」「あらあら、そうなんですの?ニンジャソウルの経口摂取薬品。成果はありましたわね」リー先生はひとしきり数値を確認した後、端末を操作し始めた。

「イヒヒーッ!人為的なニンジャソウルの憑依!完成は近いぞ!これをカチグミに売り捌けば研究費用も稼げて、実験もできる!アブハチトラズだ!ナハタ君!直ちに次の実験体を探したまえ!」「アーン、わかりましたわ」フブキ・ナハタは卑猥な手つきで端末を操作した。

「マケグミでも浮浪者でも何でも良い!ニンジャソウルを注入するのだ!ナハタ君!エージェントの派遣はまだかねェ?」「もうしましたわ。今度も『魔法使い』と名乗らせます?」「結構!好きにしたまえ!さあ、今度は精神も安定させる薬品も投与だ!イヒヒーッ!」

リー先生は再び悪魔的な研究に没頭し始める。彼にとっては、スウィンデレラの悲劇など試験管の中の化学反応の一つに過ぎぬのだ。「ニンジャ!ニンジャ!この私の頭脳で全てを解き明かしてあげよう!イヒヒーッ!イヒヒヒヒーッ!!」

(おまけ)終わり

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