内観法では困難な子どもの考察

ヴントの心理学では主に被験者に内観報告を求めることで実証的データ得ていた。しかし、子どもの内観報告は大人のそれとは違い信用の置けるものではないとの理由により、20世紀半ばまでの間、発達研究ないし固体発生的研究は軽視されていた。現在ではそれらの研究も心理学の大きな分野の一つとして認識されつつある。そして、こころのさまざまな仕組みが明らかになっているのである。

例えば、1983年,kellmanとSpelkeによって行われた、馴化-脱馴化法を利用した有名な発達研究がある。(馴化法とは同じ刺激が反復されると、慣れが生じて殆ど反応しなくなることである。一方脱馴化とは新しい刺激を与え、反応を回復させることである)

乳児に対する研究を行う場合、行動を目印にする必要がある。そこで上の図のように、長方形に棒が隠れた図が左右に動くシーンを繰り返し幼児に見せる。ある一定の回数を超えると、馴化により幼児は慣れてしまう。ここで、二つに分離した棒と、一本の長い棒を見せると、後者に対しては脱馴化が起こらなかった。つまり、乳児が、長方形と重なって動く棒の図形に関して、その重なっている棒が一本の長い棒である、と認識していることがわかる。

次に1992年、Wynnによって行われた実験を紹介する。
上の図を見てみる。まず、一匹の人形を置きスクリーンの裏に隠す。次にもう一匹の人形を子どもに見えるようにスクリーンの裏に隠す。そしてスクリーンを取り去る時、結末としてパターンAとパターンBを用意しておく。パターンAでは人形は二匹いた。一方パターンBでは人形は一匹に減っていた。この時子どもはパターンBを見つめる時間が長いことが観察された。このことから子どもは足し引きのような基本的な演算能力を持ち合わせていることが分かる。

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