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君が我が子を抱いた時、君に贈る詩


「幸せの寝顔」

幸せそうな寝顔の君
何が幸せで何が不幸なのかも
わからないだろうけど

泣き顔にさえまだ人生の起伏に
触れていないのがわかる

僕らのこの世界は君に
何を与えられるだろうか

頬を撫でる風は
夢の種を運んでくれるだろうか



「息子へ」

泣いて
お乳を飲んで

寝て
また泣いて

時に笑う

人生の始まりは
それがすべてだ

それでいい
今はそれでいいんだ



「ただそこにある笑顔」

ふと視線を感じると
そこには君の笑顔がある

僕と目が合った瞬間に
あふれるような笑顔になる

僕が君を見つけるまで
ずっと待っていてくれたんだね

僕も君がやって来るのを
ずっとずっと待っていたんだ



「汚れなき歩み」

君は何かを求めて
または何も求めずに
歩み出した

これから何人かを追い越し
何人かに追い越され

誰かと出会って
誰かと別れて

何かを得て
何かを捨てるだろう


そんな歩みの最初の一歩は
何の汚れもなかった

いつか君がもう歩けないと
そう思ってしまった時
今日のことを話してあげよう



「夜泣きの君へ」

真夜中に泣き出した君
怖い夢を見たんだね

この国の未来には
僕も不安がいっぱいだけど

君が抱く不安なら
僕はすべて振り払える

だから今は安心して
いつものように優しい寝顔で
僕の横で眠っておくれ


「出し惜しむことのない人生」

満面の笑みで
手足をバタつかせて喜ぶ

大粒の涙をポロポロと落として
泣き叫ぶ

今の君は場所も選ばずに
喜びも悲しみも
全身を使って表現できる

どんなものにも
縛られることなく
君はただ真っ直ぐに生きる

僕は我を忘れ
見入ってしまう


「涙 涙 涙」

母がいないと
泣きじゃくる君

ドアの向こうに消えた姿が
永遠の別れに思えたんだね

その泣き声が
もう少し大きくなれば
君の母はすぐにやってきて

ドアを開けて
優しい笑顔で
君の名前を
呼んでくれるだろう



「君の寝顔」

僕の頬に
額をつけて眠る君

一日じゅう
驚かされてきたけれど

今日最後の驚きは
思ったよりも君の寝息が
大きかったこと

ひと息ひと息が君を
大きく大きく育ててるんだね

僕は寝息を聞きながら
いつまでも寝返りが打てなかった



「癒やしの天使」

その好奇心と笑顔に
何人もの大人が

手を止め足を止め
癒されていく

君にとって
自然な仕草が

僕らにとっては
遠い昔の記憶の更新



「教わる日々」

君は

「やったぁ」と跳び上がって喜ぶ

「ごめんなさい」も素直に言える

「ありがとう」も何度も言える

人生の師はこんなにも近くにいた



「いつか旅立つ君へ」

暑い日差しがうれしくて
飛び出した君の背中は
あまりに小さすぎて捕まえられない

ここと思って手を伸ばした時には
もうずっと遠くで跳び跳ねていた

一瞬も止まることが出来ない君は
何度も僕の腕をすり抜ける

そして君はいつの日か
ずっと遠くへ行ったきりになってしまう

だから今は僕の両手めがけて
飛び込んできてほしい



「君と過ごす毎日」

君には何もかもが
新鮮で驚きの毎日

僕たちはいつから
そうでなくなったのか

かつて僕らは
みんな幼い子だった

同じように輝く毎日があった
知らないことを知る喜びがあった

今もきっと
何処かに転がってるだろう

君の輝く瞳を
見るたびそう思う



「新しいドア」

毎日いくつものドアを開けて
新しい世界へ踏み込む君

思い出は僕が
ちゃんと拾っておくから

振り返らずに次々と
新しいドアを開けてほしい



「栞」

君はその小さい手で
何かをつかみ

キラキラした瞳で
何かを見つける

それが
君のまだ少ない記憶の
栞となりますように



「風と少年」

夕暮れの少し前

飛行機雲とお月様に見守られて
君は風と友だちになった

僕が少年だった頃
君のように笑いながら
一緒に遊んだ風が

あの頃と少しも変わらず
今ここにいる

僕はすっかり忘れてしまっていた

友だちだった風と
誰かに見守られた少年を



「君は人類を救える」

君が危なっかしく
歩くだけで

魔法にかかったように
みんなの顔が和らいでいく

君が世界中を歩けたら
きっと世界は平和になれるのに



「海」

海さんこんにちは!
浜辺に降りた君が言う

波はいつまでやって来るの?
ず~っとやってくるよ

どうして波は終わりがないの?

それは・・・・
波に聞いてみないと解からないなぁ

やっと答えられた僕に
耳をすました君が笑った



「ガミガモ」

ガミガモ
ガミガモ

君が両手で
抱えて持ってきたのは
ゴミ箱だった

もうすぐ君はそれを
ガミガモとは
呼ばなくなってしまうから

僕がそれをずっと
ガミガモと呼ぶことにしよう



「記憶のキャンパス」

ボクね・・・・
地球が丸いって知ってるよ
四歳の時から知ってるよ

五歳の君が言う

三歳の時からだったかも知れないけど
ず~っと昔のことだから憶えてないや

僕は大変な思い違いをしていた

記憶のキャンバスの端っこに
小さな落書きをしているのは僕の方で

君はいつもキャンバスをはみ出して
大きな絵を描いていたんだ



「君の涙」

思いどうりにならない事が
世の中にはいっぱいあって

どうしようもない事は
もっといっぱいあって

誰もが心の中で
頭をかかえてる

君は自分の中の君と
なんとか折り合いをつけて
その涙を拾わなくちゃならない

僕は何も言わずにいるけれど
いつでも君の味方だから
ずっと君の味方だから



「天国」

ねえおとうさん
もしもボクが天国に行っちゃったら
どうする?

おやすみ前の君の言葉に
体じゅうの血液が沸騰して凍りついた

君に会いに行くよ

でもねおとうさん
天国に行っちゃったら
もう帰って来れないんだよ

それでも君に会いに行くよ

天国へはね
死んでしまわないと行けないんだよ

それでもやっぱり君に会いにいくよ

どうして?

大好きだから

君は少し黙った後で言った
やっぱりボク天国に行くのやめる

お互いおやすみを言うと
君はあっさりと寝息をたてた

僕はいつまでも眠れなかった



「発熱」

君の体温が
2℃上がる

祈るような気持ちで
何度も体温計を見つめる

赤い頬が
僕の手の平を押し返すたび

今日の何が良くて
何が悪かったのか

君はその小さな体で
僕を親へと育ててくれる



「影なき笑顔のままで」

腫れぼったい頬の辺りが
昨日の君の辛さを語る

疲れたときの君の顔には
なぜか大人の影を感じる

きっと僕らは
知ってるつもりの何十倍もの
大きな荷物を

背負ったままで
降ろせずにいる

どうか君は影のない
とびっきりの笑顔のままで
君が我が子を抱くその時まで



「君への言葉」

君の色に合わせて作った言葉は
君の肩を抱くことも
背中を押す事も出来ない

君の周りをぐるぐる回って
つまらなさそうに落ちるだけ

最初から特別な言葉なんてなくて
思い出した時に答え合わせするだけ

何処の店でも売ってるような
使い古しの言葉でも

通りすがりの見知らぬ人の
口癖のようなつぶやきでも
君の心に響くときがある



「おやすみ」

君の行く手を
さえぎらないように

君の可能性を
せばめないように

君が自分で
歩き出すまで

だから今は
真っ白な世界で
天然色の夢を



「冒険の始まり」

ブロック塀に手をかけて
向こう側を覗きたい君

僕の目の先にある風景は
何の変わりもない世界だけど

君にとっては
まだ見ぬ未開の地

今日の君が目を丸くしていたのは
背伸びの高さが少し伸びたからだね

君の冒険はまだ始まったばかり
帰る家はまだすぐそこにある


「ごめんなさいとありがとう」

「お父さん、さっきはごめんなさい」
きっと君はお母さんに言われて
僕のところにやって来たんだろう

「もういいよ」のよが終わる前に
君は大声で泣き出した

抱きかかえると
あまりに背中が小さい

小さくて小さくて
あまりに切ない

なぜだか僕は
「ありがとう」と

何度も何度も
ささやいた



「一番の理解者」

君は弟に
アイドルの座を奪われ

母の愛情を取られ
代わりに小言をもらい

自立を急がされて
散々な毎日かもしれない

でももう少し待ってほしい

彼はもうすぐ君の
一番の友となり
一番の子分となり
一番の理解者となる


「最強の盾」

まだ気付いていないだろうけど

君が身につけているのは
着古したものばかりで

お気に入りの三輪車は
最初からキズだらけだった

君は兄に
おもちゃを手にしては取り上げられ
泣かない日は一日もない

でももう少し待ってほしい

彼が君の盾となり
あらゆる敵から守ってくれるから



「どうして?」

車はどうしてガソリンで動くの?
バスのドアはどうして大きいの?
久々のどうして攻撃

僕の答えが終わる前に
次のどうしてが始まってる

君の中では何人もの
ちっちゃい君がいっぱいいて
いつも大騒ぎしているんだと思う

いつからだろうか
僕の中のちっちゃい僕たちは
みんな眠ってしまってる



「春の風」

「春の風はどこにいるの?」

「窓の外にいるよ」

「一緒に春の風を捜そうよ」

「でも今は夜だから明日捜そう」

「どうして夜はダメなの?」

「夜はみんなネンネしてるからね」

「春の風さんオヤスミなさい~」

明日の朝
飛び立った君の声が

春の風を連れて帰って
この部屋の窓を叩くだろう



「君の言葉」

君が浜辺の小石を拾って
海に投げると
チャボンと沈んだ

僕が投げた小石は
海面を這って

ピョンピョンピョンと
幾つも跳ねて遠くに消えた

「お父さんすごいね」
驚いた顔で見上げる君

僕はあと何回
この言葉を聞けるだろうか


「懐かしい記憶」

出かけようとする僕に
抱っこをねだる君

何度も何度もねだるから
何度も何度も抱っこする

まるでもう会えなくなるような
切ない思いがこみあげる

君のお母さんへの
あの日の想いがよみがえる



「王様と神様」

「王様と神様はどっちが偉いの?」

「神様かな」

「どうして?」

「王様は人間の偉い人だけど
神様は全部の偉い人だからね」

「全部ってペンギンとかクジラとかも?」

「そう、王様は座ってるだけだけど
神様はみんなを見守ってくれてるからね」

「お父さん、神様に会ったことあるの?」

「ないけど・・・・」

会ったことはないけれど
君を見ていると
神の意思を感じる

君がやってきたのは
必然だったと思うから


「オリテ、オリテ」

大泣きの君を抱っこする

「オリテ、オリテ」

それは多分
テーブルに上る君に
いつも僕が言う台詞

君は降ろしてほしいんだ

降りた君が行く先は
母の腕の中

そう
それでいい

君が一番に帰る先は
母がいい


「自転車」

君は今日
何度もためらい
何度もあきらめかけて

一度転んで
少し泣いて

それでも涙をこらえて
ペダルをこいだ

「ボク乗れたよ!」

君の笑顔が僕を横切る
右へ左へ
何度も何度も



「優しさ」

昨日の今日
軽やかにペダルをこいだ君が
自転車から降りて言った

「お父さん、ボクに教える事が
なくなって寂しい?」

「うん、寂しいよ」

「でもね、ボクにもっといっぱい
色んなこと教えて」

涙が出るくらいの
優しさをありがとう



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