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母の器

私はフルタイムの仕事のかたわら、陶芸をちょこちょこして10年くらいたつ。
いつも使い手が決まってから作る。自分の、こうしたい、は、あまりいれない。使い手さんの希望を聞き、使い手さんをひたすら想い、入れるものにも想いをめぐらすため、同じものは、結果的にはほぼ作らないことになる。在庫もない。
母のリクエストに応えて作った小鉢を
最期まで入院生活になるであろう、母の自宅から、荷物整理の際、持ち帰って、自分で使い始めたのだが。ある日、この器がどれほど母に大切にされ、喜んで使われていたかを感じた。
娘が作ってくれた喜び。自分の好きな色合い。
そして、器が、母の元に帰りたいと言ってきたような気もしてきて。
大切に使われるってこういうことなのかもしれないとも思った。
だとしたら。たとえ寝たきりの、入院生活だとしても。テレビの横に置いてもらえないかとか。
母の元に返すことを考えはじめた。

器さん、待っていてね。
母の元に帰ろうね。

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