見出し画像

感想文:「ストーリーが世界を滅ぼす――物語があなたの脳を操作する」The Story Paradox

ここのところ巷にあふれるイデオロギーについて、人々も関心を持つ機会が増えたのではないだろうか。拙者はこれまでなにかと政治に疎い人生を送ってきたのだが、動乱の時代にはいり、そうもいかなくなったことに気づいたのがつい最近である。なんともお粗末な話である。

「人新世」が「Anthropocene」(アントロポセン)の日本が訳だと知ったのもつい最近である。「アントロポセン。。。なんだよそれ。深海魚か。食べられるの?」と思いつく始末。
ダボス会議の『「グレート・ナラティブ 「グレート・リセット」後の物語』という本が目に入ったときには、「なんでダボス会議が『ナラティブ』なんて洒落たこと言い出したんだよ」と不振に思ったものである。
そんな風に思いながらアマゾンで検索を楽しんでいると、またもやそそられる本のタイトルを発見することになった。それが今回感想文を書こうとした本『ストーリーが世界を滅ぼす』である。まがまがしいタイトルだが、元の英語タイトルは『The Story Paradox』。

結論を先取りしていえば、買わなくてもよかった。買ったことを後悔した。その悔しさから、元を取るべく感想文を書いてやろうというのが本音である。

【要約】
・全体主義を批判するために持ち出されるプラトン。元ネタはポパー『開かれた社会とその敵:プラトンの呪縛』※本著末尾の参考文献。ポパーはとにかく全体主義がお嫌い。全体主義=「敵」認定! 民主主義のためのオープン・ソサエティを徹底擁護。余談ですが、オープン・ソサエティ財団を作ったのはソロス氏。

・結論は最初と最後に書くアメリカン・スタイル。
“物語の語り手を信用するな。しかし彼らを憎まないように努力せよ”。
作者自身の責任回避の伏線のようにもみえる。

全体を通じて、作者による映画や小説、事件に関する感想や創作的な記述が多い。プラトンの日常にまで創作活動を開始するオタク的想像力に、一気に興ざめな気持ちになる。かなり最初の方だったので、そのあたりからトーンダウン。そもそも小説を楽しむ素養がない自分にとって、その後の文章がただのインクのシミに見えるようになり、考察だけを追って1時間程度で挫折。

物語には力(フォース)が宿るらしい。その表現は小説オタクらしい作者の文才がひかる。また、アメリカの国防高等研究計画局(DARPA)がSTORyNETという企画でプロパガンダ研究をしているを知れたのはよかった。検索してみると、その研究成果が結構ネット上で公開されている。これが現代のインテリジェンスなんだなと、本とは脱線して感心したところである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?