屋根修理詐欺にあいそうになった話

私の実家の80代の父母は、訪問販売や訪問営業で外壁塗装や浄水器、床下乾燥システムなど、高額で中には不要な物をいろいろ購入してしまっている。

購入に際しては、注意するように言っているのだが「自分のお金だから」と言われると、4人の子どもを育て上げ、孫を見守り、80を過ぎるまで、働いてきた父母には何も言えない。

そんな老人家庭をターゲットにする詐欺まがいの、訪問営業は少なからずあるのだということは知っていた。

【屋根業者の若者が訪ねてきた】

2020年2月24日祝日の午後。

都内23区内の住宅地にある、2階建て二世帯住宅の我が家に若者がやってきた。
「ピンポン」「ピンポン」「ピンポン」
インターホンがなって応対口に出るが、こちらの声が聞こえないのか、何も言わず何度も鳴らす。
モニターで見るとせわしなく動く男性が見える。
あまりに何度も押すのでしかたなく玄関を出た。

(すぐに出て対応しないのは、宗教の勧誘や、寄付集めの勧誘などが多いため。日頃から、そこそこ慎重に暮らしています)

門扉まで出てみると、作業着、マスク姿の若い男性。
下手すると二十歳前後の若者でした。
「○○建創」というネーム入りの作業着を着ています。
「隣のマンションの屋上点検で来たんですが、お宅の屋根が壊れているのが見えたんすよ。こちらの屋根は○○○○○○という種類で、一枚、一枚、重ねてはっていく物なんすけど、外れちゃっている箇所があって。親方が知らせた方がいいって。ベランダとか、上がれる場所があれば、すぐに直せるんすけどね。できますか?」
「いや、上がれる場所はないし、長い梯子は無いですよ」
「屋根の点検とかしてますか? こちらは20年とか15年とかたってますよね」
「15年くらいですけど。昨年、工務店に点検してもらいましたけど。屋根は見てくれてないなあ」
「ああ、工務店は自分じゃあ屋根に上りたがらないっすよね。下請けにだすから」

この時点で、屋根業者というお兄ちゃんをつゆほども私は疑っていませんでした。
朗らかで屋根の構造に詳しく、そして隣のマンションの点検に来たといったからです。
実は隣のマンションは親戚の所有で、大手の管理会社に委託しているので、そこからの下請けとなれば信頼できる会社のはずです。

そういうわけで、この屋根業者に修理してもらえばよいのでは?と思ってしまいました。
「おたくに修理してもらうことはできます?」
「じゃあ、親方に聞いてきますよ。おれ、ちょっと飲み物買いたいし、少し後で来ます」
「修理にいくらくらいかかるか聞いてください」
「はい。じゃあ、あとで」

そして30分後、再び若者はやって来ました。
「これから、○○○町の現場に移動するんですけど。
親方が言うには、修理なら材料費がいるけれど、外れてるところをはめるくらいだから、お礼なんてお茶くらいでいいって。上がればなぜ外れたか原因もわかるだろうって。
これからしばらく○○○の現場なんで、時間ができたら伺えますよ。
それで、親方が連絡先を交換してこいって」
若者は「○○建創」という会社名と自分の苗字、携帯番号を書いてくれました。
「じゃあ、都合がつくときに連絡してください。
実は隣の建物、うちの親戚が大家なんですよ。○○○の管理会社から依頼の屋根屋さんだったら、信頼できますものね」
「いや、下請けにもあたりはずれありますよ。○○○の下請けなんて千社はありますからね。良い業者に直接つながれるといいんですけどね。では、連絡しますので」
「はい、よろしくお願いいたします」

【ひょっとして詐欺?】

そんな、経緯で屋根業者からの連絡を待っていた。
夫に話し、彼もつゆほども疑っていませんでした。
翌日火曜は「いつ、連絡が来るかな」ぐらいに思っていたのです。
そして、水曜。
「待てよ。この一連の流れ、屋根修理詐欺に酷似してないか?」と気づく。

友人の関西で一人暮らしのお母さんが屋根修理詐欺にあったと聞いたことがあったのだ。
飛び込みの屋根業者から、瓦屋根が壊れている写真を見せられて、修理をしてもらった。そこで法外な修理代金を請求されたと。
しかもその屋根の破損はその屋根屋が壊したものだったとか。

屋根は通常は見えない。普通の家庭は長い梯子も持たない。
例えば、そこに、屋根業者が「隣の建物の屋上点検にきた者なんですが。お宅の屋根が壊れてますよ。簡単に直せますよ。お礼なんてお茶くらいでいいですよ」と来る。
修理を依頼しちゃう。
その屋根業者が屋根にのぼって、どこも壊れていない屋根を、修理するふりをして壊す。
その状態を修理前の証拠写真として撮る。
直して写真を撮る。
「いやー。思った以上に壊れてました。こんなに手間がかかりました。つきましては○○万円いただきたい」
と、なるんでないかい?

こりゃー詐欺だ。
一気に目がさめて、隣のマンションを所有している親戚宅に連絡をとった。
屋上に上らせてもらって、我が家の屋根を確認するのだ。
快諾を得て、すぐに夫と屋上に上らせてもらう。
我が家の屋根を確認!
上から見ると、だだっ広いグレーの屋根。
古びてはいるけれど・・・

「無い。壊れてるところなんて無い! 詐欺だったんだー!」
と叫ぶ私。
証拠の写真を撮りまくる。

「いや。素人目にはわからない、故障があるのかもしれないよ」と言う夫。
そんなわけないだろう。
「やだ、もう怖い。電話が来ても出ない」

【人を見たら泥棒と思え?】

その後、連絡は来ない。
おそらく、我が家の親戚がマンションの大家と知って、これはまずいと思ったのだろう。
もちろん○○○の下請けというのは大ウソだったに違いない。
今回、我が家はたまたま、隣のマンションから屋根を確認できたが、できなかったら、本当に壊れているかわからず、不安でしかたなかっただろう。

世の中には、こんな詐欺師が普通にいるのですね。
とっても好青年に見えました。
マスクで顔半分は見えなかったけれど。
嘘をついているようには見えませんでした。
すごい演技力です。

ターゲットは私の父母のような高齢者だけではありませんでした。
お宅にも明日、ピンポンしてくるかもしれません。
くれぐれもご用心くださいませ。


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