推しの持つ「ドラマ性」に惹かれている話

オタクと話しているとだいたいいつも「推しのどこが好き?」という話になる。

歌が好き、ダンスが好き、お芝居が好き、顔が好き、内面やブログで綴る言葉が好き…etc. いろいろ出した後、帰結するのはいつだって「推しが持つドラマ性が好き」だったりする。

そもそもドラマ性って何よ?と思われるかもしれない。
私の言う「ドラマ性」は、推しが今こうして輝くまでの間にあった過程や歴史、経験のことを指している。

例えばオーディションに応募するきっかけが先輩グループのこのライブだったとか、研修生時代いつも隣に立ってくれたのがこのメンバーだったとか、同じオーディションを受けた同期だけどグループが分かれて先輩後輩になったとか。そういう物語を経てアイドルをやっているというドラマ性に惹かれるのだ、と思っている。正気じゃないのはわかってる。

過程や歴史といっても、別にそんな難しいことだらけじゃない。シンプルに推しが大きくなっていく(大成していく)様子だってドラマ性の一端を担っている。

推しメンのことは2017年頃から追っていた。

初めは顔がかっこいいとかパフォーマンスが魅力的とか、そういう理由で好きになった気がする。次第に結成理由やたどってきた歴史を知っていった。そして例のMステのオーディションは毎日投票していたし、最終ステージはリアタイしていた。

結果はご存じの通り。だけど、私はあの時のパフォーマンスを見て、ああこのグループがもっともっと大きくなって、武道館を埋めるところが見てみたい!その姿を応援したい!そう思った。

3月、武道館が終わって、推しの活動がないこと以外は変わらない日々が戻ってきて、推しは今どこで何をしているんだろうと心の隅っこで少し寂しくなった時、ふとあのオーディションのことを思い出した。

あの時の私へ
あの時思ったことは全部本当になるよ。TDCもパシフィコも幕張も武道館もやるよ。横浜アリーナで卒コンもするよ。


少し前、ちょっとした縁でオタク以外でアイドルの話ができる人と飲みに行く機会があった。話題はやっぱりアイドルのことが多くて、大学卒業する前に一回海外行きたいんだよね~、推しがJAPAN Expoに出るのに合わせてタイとか行こうかな~とかそういう話をしていた。

その中で「アイドルの何が好きなの」と聞かれて、私は咄嗟に答えることが出来なかった。推しが好きなのは勿論、素敵な楽曲も魅力的なパフォーマンスも熱いライブという環境もキラキラの衣装も全部好きだけど、総括すると「概念が好き」としか言えなくて、もごもごと口にした後、ウーロンハイを流し込むことしかできなかった。

前回その人と会ったのが5、6年前、自分が中学生の時だった(ような気がする)ので、久しぶりに会った上に自分は成人して就活を控えていることもあって、話は次第に大学や就職のことになった。

同じ卓で飲んでいたもう一人がお手洗いに立って会話が途切れたとき、私は小さい声で「多分、アイドルのドラマ性が一番好きなんだと思う」とだけ伝えた。その人は「よくわかってるじゃん」と言った。

「アイドルというビジネスはプロレスと一緒なんだよ。そしてそのストーリーはアイドル1人じゃ作り上げられない。だからプロデューサーやマネージャーがその道を整備する」とその人は笑いながら生ビールを飲んでいたのを鮮明に覚えている。渋谷の焼肉屋での話だ。

その話を聞いて自分がどんな顔をしていたかわからない。上手く言葉は出てこないし、それが良いことなのか悪いことなのかわからなくてなんだか変に落ち込んでしまった私にその人は「ドラマ性が好きなことを悪いことだなんて思わないでよ、アイドルが好きな人が行き着く先はそこなんだから」とだけ言った。


楽しくオタクをしたい気持ちはあるのだけれど、ふとした瞬間にそういうことを考えてしまう時がある。
「ドラマ性」とか高尚な感じにいってるけど、実質他人の人生を消費してるだけなんだよな~!?と正気に戻りかける私が推しの卒業までの残り半年をくじけずに走り続けられたのは、推しがそのアイドル人生の「ドラマ性」を最後まで見せつけてくれたからなんだと思う。

とりあえずしばらくは推しのどこが好きか聞かれたら「顔」って言おうかな……。

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