愛されるとは

今日俺はスピーチをした
練習も準備もしっかりし、仕上げに仕上げて本番に望んだんだ

トップバッターでの出演で、スピーチ自体も自分なりには満足のゆく出来だった

聞いてもらってる方々の反応が、少しは気になったが、納得も出来ていたから気になってはいなかった

スピーチを終えた俺は、よしよしとばかりに席に戻ったんだ

次の人はどんなスピーチをするんだろう

次の人が、下手でも上手でも何か嫌だな

そんな事を考えながら、次の人が舞台にあがるのを見てたんだ

その次の人は、歳は18歳、色白でフワッとした髪質が素敵な、男の子だった

その子は舞台にあがる前から、客が沸き立っていたんだ

あー、愛されてる子なんだなぁ

そう感じた瞬間から、何故か一気に心の中がやるせなくなっていく自分に気づいたんだ

俺と違うなぁ、お客さんの顔も違う
テンションも、空気も、全てが俺より和やかだ

その子のスピーチが始まると、
俺とは対極に、
練習もしてない、原稿もない、ただ舞台に立って誰よりも素敵な笑顔でニコニコと笑いながら、その場で自分の感じている事を言うだけ

内容も無く、ただ一言
「僕は今幸せです」
それだけでお客の心を鷲掴みにしていったんだ
とても綺麗な笑顔を添えてね

僕は、とても幸せになれた
その子のスピーチで

練習に誰よりも時間を割いた自分だからこそ、その子の、ただの、只々の、
純粋な気持ちだけを話したスピーチが僕には響いたんだと思う

その子の後にも、2人スピーチをしていたが正直頭に入ってない

あの子の笑顔だけが記憶の中に残ってる

スピーチ終了後、何人かの方にはげまされはしたが、そのどれもが慰めにしか思えず泣きたくなった
悔しさ、切なさ、儚さ、そして喜び
様々な感情が入り混じっていった

俺は誰からも愛されてないんだな
そうとさえ思えた

でもそれも仕方ない

だって、俺自身が人を愛せてないんだから、
人からも愛されないさ

スピーチには、結局、小手先の技術は通じない
最後は、普段のキャラクターがモノを言う

良かった、あの子が僕の後で良かった、
あの子と同じ場で、同じタイミングでスピーチを出来て良かった

人生について考えるきっかけになったよ

ありがとう






最後に、

実は一人だけ、僕の事を心から褒めてくれた方がいたよ

それは僕も君と同じ境遇を、味わってたよ

と、安らぐ笑顔で言ってくれた、
名前も知らないおじいちゃんだ

ありがとう、おじいちゃん、
あなたのおかげで僕は、前を向けます


愛されよう、

そして、

愛しよう


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