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ライザのアトリエ1にあってライザのアトリエ2になかったもの

一言でまとめると

ライザのアトリエは2よりも1の方が面白いよねって話。

2の感想と不満

トリダモノ先生によるキャラクターデザインは依然として素晴らしかった。物語の設定を王都に変える判断も良かった。クーケン島という自然豊かな場所での冒険でやるべきことは前作でやりつくしたと思う。本作では遺跡探索を共通のテーマとしてフィールドを設定していたが、ドラゴンの死骸や水没した遺跡といったファンタジー要素をさらに増してプレイヤーを楽しませようとしてくれたのはありがたい。

不満点は以下の3つに集約される。
①ストーリーがつまらない
②本当にこのバトルシステムが楽しいか?
③遺跡探索で遺跡の謎を解明する作業に面白さを見いだせない

①ストーリーがつまらない

最大のがっかりポイントがここである。話の流れとしては、王都を訪問した主人公ライザが幼馴染のタオに誘われて遺跡探索を開始し、ライザに懐いている謎の小動物フィーが遺跡の秘密と密接に関連していることに気づくというものだ。徐々に体調を崩し始めたフィーを救うために遺跡の深部から得られる異界の魔力を求めてライザ一行は進んでいく。

フィーを助けるためにライザ一行は行動するのだが今一つ共感できない。ライターの方はライザの母性を描きたかったのだろう。そのため子供の代わりに愛らしい小動物を登場させ、小動物を庇護するライザの絵面を創り出した。が、私はフィーに対してそこまで愛着が湧かなかった。なぜ最近出会った見ず知らずの生物を助けるためだけに危険を冒して遺跡の奥まで行くんだ?という気にさせられた。ユーザーとしてはフィーへの母性は湧かず、ライザへの感情移入ができなかったのである。フィーがライザの仲間であるパティを助けるシーンも入れてフィーへの愛着を持たせようとしているのは理解できるのだが、描写の絶対量が少ないと感じる。
ではどうしてほしかったのか?仮にフィーを最大限生かすような話にするのであれば、「のび太の恐竜」のように孵化から愛情をもって育成する描写を増やすか、フィーとライザの相互の愛情をもっと丁寧に描くべきなのではないかと思っている。

シナリオ上の不満点は他にもある。特に好きになれなかったのはキャラクターの会話がビジネスライクで、ストーリー進行上必要最低限度の会話に思える点である。もちろん必要な会話以外もある。例えば冒険終わりに「大丈夫だったか?パティ」とタオが気遣うシーンはある。しかし本当に欲しかったのはキャラ同士の親交を深める掛け合いなのである。テイルズシリーズであればスキットシステムが、ペルソナシリーズであればコミュ(コープ)が存在する。ライザのアトリエ1や2では細かいイベントを挟まれるのだが、仲良くなるイベントにはなっていない。キャラの魅力を最大限引き出すための会話になっていないと感じる。
顕著なのがレントの加入シーンである。ライザは幼馴染であるレントに偶然再会して仲間に誘うが、一人旅を経てやさぐれてしまったレントは俺にかまうなと加入を断る。…と思ったら、ライザ一行が遺跡の最深部で敵と対峙したシーンであっさりと助けに駆け付ける。いったいどういう心情の変化があったのか?レントの過去はのちのイベントで触れられるのだが、ライザやタオの主体的な行動によってレントの心情が変化したわけではないのである。ライザがレントを動かすべく奮闘するイベントを期待していた私は肩透かしを食らった。レントとライザには過去からの強い絆があるのに、それを生かさない展開はもったいないと感じた。

②本当にこのバトルシステムが楽しいか?

本作は前作よりもバトルシステムがパワーアップしている。戦闘はリアルタイムで進行するアクション性が高いシステムである。
通常攻撃→APがたまる→タクティクスレベル上昇→使えるスキルの数が増加
という拡大再生産の流れでスキルの使用可能回数が飛躍的に増加していく。
一度に戦闘に参加できる人数は3人だが、控えのキャラ1名とも交代可能であり、交代際には敵にダメージを与えて交代するためスタイリッシュ&スピーディである。

だが、面白いかと問われると疑問である。戦闘の流れがワンパターンだからだ。タクティクスレベルを上げてスキルの手数で敵を押し切るという流れは雑魚敵でもボスでも変わらず、頭を使う必要がない。ライザのアトリエでは属性による相性システムを採用しているため弱点属性で攻める楽しみはあるかもしれないが、パーティで連携して戦う面白さはない。個々のキャラが別の敵キャラを攻撃する場合さえある。

果たしてここまでアクション性を高める必要はあったのか?コマンド入力方式でもよかったのではないか。また、パーティメンバーがセリを除いて全てアタッカーなのはいただけない。デバフ要因、サポーター、タンクなど、キャラクターの役割をもっと変えるべきではないか?そうすれば、キャラクターの切り替えに意義が増すし、戦闘の幅も広がる。敵キャラの耐性や行動パターンを適切に設定すれば、プレイヤーサイドも戦略を立てる余地が生じて戦闘にバリエーションが出る。もちろんアクション性は下がってしまうのでトレードオフである点には注意が必要である。

③遺跡の謎を解明する作業に面白さを見いだせない

遺跡探索では、遺跡の欠片・遺跡の結晶・記憶の粒子といったアイテムを集めて遺跡の謎を解明していく。遺跡の欠片から得られる情報は古代の物語の一節であり、意味が通るように並び替えが要求される。遺跡探索というテーマとは噛み合っているギミックであるように思う。

問題となるのは遺跡の欠片を並び替えて判明する文章にこれっぽっちも興味が湧かない点である。書いてある文章が遺跡で過去に起きた出来事なのだが、ほとんど全体のストーリーには影響しない。なぜか?ライザの関心はフィーの体調であり、遺跡の秘密を解明することではないためだ。私のような不真面目なプレーヤーとしては、「とりあえずギミックを解いてあげればあとはストーリー中でキャラクターが必要な部分だけ説明してくれるやろ」と高をくくってゲームを進め、キャラクターがほとんど遺跡の謎について説明しないのを見てストーリーに影響しないんだなと判断した。事実、私は全く遺跡で起きた過去の内容を覚えていないが、ストーリーの流れを理解する上では問題になっていない。

繰り返しになるが、作中でキャラクターが遺跡を探索する理由は主にフィーにある。遺跡の謎が衝撃の真実でストーリーに多大な影響を与えるかと言えばそうでもないのだ。フィーの正体についてもアンペルやリラが語っており、その内容もさして驚くことではない。プレイしている最中の私は、単なるストーリー進行のための作業として遺跡の欠片を集める羽目になった。

1の面白かったところ

2の不満点についてはいったん筆を止めて、ライザのアトリエ1について語りたいと思う。

鬱屈した日常からの脱出。冒険に飛び出して、なんてことない日々が大切であることに気が付く物語。ライザのアトリエ1はこのように要約できる。


物語の構造は非常にシンプルである。なんてことない島で暮らしているなんてことない農家の娘であるライザリン・シュタウト、通称ライザが島を抜け出そうと画策するところから物語が始まる。彼女はなんてことない日々を変えたいと焦がれながら過ごしていた。酔っ払いでならず者の親父を持つレントと、いじめられっ子で本の虫のタオと、快活で遊びまわっているライザの3人の悪ガキは、釣り人が使う小さな船に乗って島の外へと冒険に出る。悪ガキと作中では言われているが、彼女たちの年齢は高校生くらいであり、島の外に出ること自体は許可されてもいい年であるので、島の人が保守的で古風という前提に立ったとして悪ガキは言い過ぎな気がする。

ストーリーに関しては王道も王道。ビルトゥングスロマンとか成長小説といったたぐいの作品である。子供であるライザたちを導いてくれる良き師としてアンペルやリラが登場し、ライザたちは成長していく。大人として見守る役であるアンペルとリラは、お茶目で嫌味がなくて好感が持てる。錬金術を習ったライザは町の人の問題を錬金術で解決したり、島へと侵攻する怪物を阻止するために戦ったりする。子供の頃に浴びるほど読んだ剣と魔法の世界をゲーム化されたみたいで、プレイした際にはわくわくが止まらなかった。私はアトリエシリーズをプレイでするのは本作が初であり、錬金術で一つのレシピを覚えると爆発的に作り出せるアイテムが増えた際の全能感がたまらなく楽しかった。ずっと錬金釜に材料を投入し続けたものだ。

OPのライザとEDのライザは一味違っていて、OPでは「なんてことないあたし」という具合に普通の女の子と自称していたが、EDでは自信をもって「結構すごいと自認するあたしは暮らしている」と発言している。錬金術を駆使して島の人々の役に立ち、島を救ったという経験が彼女に自信をもたらした。子供たちの成長が軽快に描かれている点で本作は良作と言えるだろう。

改めて2で何を求めていたのか

ライザ、レント、タオ、クラウディア、アンペル、リラを中心として、大人に近づいたライザたちが成長した姿をアンペルやリラに見せるという話に主題を置くべきではなかったかと私は考えている。アンペルやリラと敵対してもいい。ライザたちがもう子供ではなく、アンペルやリラも一目置く存在になったというテーマにするべきではなかったのだろうか?

パティやセリ、クリフォードもいいキャラをしている。捨てるには惜しいほどいいキャラだ。が、せっかくいい性格をしているのに、ストーリー上必須なポジションにいるわけではない。実を言えば、ライザの母性を描くために必要なキャラはフィーだけである。残りのキャラは単なるストーリーを進行させるための情報提供役になっている。私にはそれがもったいなくてたまらない。ライザとタオの関係を誤解してパティがライザにちょっかいをかける話でもいいし、タオの鍛錬にクリフォードが付き合う話でもいい。面白かった1のキャラクターがまた活躍するという期待で買ったにもかかわらず、本作ではキャラクターがストーリーで役割を果たしていない。キャラクター間の横のつながりをもっと書いてほしかったのだ。

以上が私のライザのアトリエ1, 2に対する感想である。プレイしたときの気持ちを吐き出せてすっきりしている。願わくば、私の人生を豊かにしてくれるような作品にまた出会いたい。

せっかく大量に書いたので投げ銭を設けておく。気に入ってくださった方はご支援いただけると幸いである。


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