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エピソード97 舟幽霊

97舟幽霊

船幽霊、舟幽霊(ふなゆうれい)は、日本全国各地に
伝わる海上の幽霊が怨霊となったもの。

江戸時代の怪談、随筆、近代の民俗資料などに多く見
られる。
山口県や佐賀県ではアヤカシと呼ぶ。
ひしゃくで水を汲みいれて船を沈没させるなどと信じ
られた幽霊。
水難事故で他界した人の成れの果てといい、人間を自
分たちの仲間に引き入れようとしているという。
その害を防ぐためには、握り飯を海に投げ入れたり、
底の抜けたひしゃくを用意したりするなどの方法が伝
えられている。
現れるのは雨の日や新月または満月の夜、霧のかかっ
た夜が多い。
また盆の十六日に操業していると死者が船縁
(ふなべり)に近づいてき船を沈めようとするともい
う。


97舟幽霊 オリジナルストーリー

ここは瀬戸内海のとある海岸、二人の男が話をしてい
た。

弥七:
どうした新八。
さっさと準備を進めね~か、朝になっちまうだろう。

新八:
でもさ弥七。今夜はお盆の中日だよ、長老たちからも
くれぐれもお盆中には漁をしちゃいけないってきつく
言われてるんだ、止めといたほうがいいって。

弥七:
そんなの迷信に決まってるだろう!昨日の晩、俺一人
で漁に出たら信じられないくらい大量だったからお前
も誘ってやったのに、嫌なら俺一人で行くぞ。

新八:
わかったよ、行くよ。ただし念のため噂の舟幽霊対策
の道具も持ってと、よし行こう。

こうして二人は海の出た。
しかし昨日の弥七の話が嘘のように今晩はまったく魚
が捕れなかった。
それどころか水面に霧が出始めいよいよ嫌な雰囲気に
なってきた。

新八:
やっぱり怖いよ、弥七引き返そう。

弥七:
何言ってるんだ、俺はぼうずじゃ帰らない。
きっと場所が悪いんだ、移動するぞ。

二人がそんなやりとりをしていると舟の回りに霧が立
ち込めてしまい前が見えなくなってしまった。
そしてその霧の中から声が聞こえてきた。

舟幽霊:
ひしゃくを渡せ~。ひしゃくを渡せ~。

海の底から聞こえてくるような恐ろしい声であった。

弥七:
で、出やがったな!コノヤロー俺がこらしめてやる。

新八:
弥七、ダメだよ相手は幽霊なんだから叩いたって当た
りもしないよ。
それより俺にいい考えがあるんだ、まかせて。

そう言うと新八はかつぎ棒のついた挟み箱を海に突き
出した。

そしてそれを霧の中から細い青い手が出てきて受け取
った。

舟幽霊:
そうそうこれこれ、これをかついでと、それじゃ旦那
この手紙どこに届けますか?
.....ってそれは飛脚だ。
ワシが言っているのはひしゃく、ひしゃくを渡せ~。

今度は新八は海に向かって徳利とお猪口を差し出した
また霧の中から手が出てそれを受け取った。

舟幽霊:
そうそうこれこれ、いや~こんな月の晩には月見酒が
いいね~。え、ついでくれるのかい?ありがと。
......ってそれはおしゃくだ。
早くひしゃくを渡せ~。

今度は新八は海に向かってパラソルを差し出した。
また霧の中から手が出てそれを受け取った。

舟幽霊:
そうそうこれこれ、これを立てれば日影が出来る。
いくら涼しい場所でも日に当たったら日焼けしちゃう
からね。
......ってそれは避暑地だ。
ひしゃくだひしゃくをよこせ~。

さすがにネタが無くなったのか新八は海に向かってひ
しゃくを5本突き出した。
今度は霧の中から手が5本出てきてそれを受け取った

舟幽霊:
はじめからそうしろよ、ボケに付き合うの大変なんだ
からな。さあ、覚悟しろ~。

そう言うと五つの手はひしゃくで海の水をすくって舟
に入れてきた。
...水が入らない?
今度は凄い勢いでひしゃくが動いているが
...やはり少しも水は舟には入らない。

舟幽霊:
おのれ~!このひしゃくすべて底が抜けておるではな
いか!馬鹿にしおって。
こうなったらワシ達が力ずくで海に沈めてやる、覚悟
しろ!!

弥七:
ど、どうするよ新八もう手立てねえんだろう?
どうするよ!

新八:
大丈夫、弥七俺にまかせろ。

そう言うと新八は空気を胸いっぱいに吸い込んで、
ニワトリのものまねをして鳴いた。

コケコッコー!!!

舟幽霊:
なに~もう朝なのか?
日の光を浴びたらワシらは消えてしまう。
おのれ~命拾いしたな~。

そう言うと舟幽霊たちは海の底に消えて行った。
そして霧も晴れた。

弥七:
助かった。
新八ありがとう、新八のおかげで助かったよ。
これからは兄貴って呼んでいいか?

新八:
何言ってるんだ、気持ち悪いな。
いままで道理でいいよ。

二人は笑いながら浜に向かって舟を漕いでいった。
月が笑っているように見えた二人だった。

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