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エピソード78 せこ

78せこ

セコとは、2,3歳ぐらいの子供の妖怪で、河童が山に
登ったものとされる。

外観は一般には、頭を芥子(からし)坊主にした子供の
ようだとも、猫のような動物とも、姿が見えないとも
いう。
島根の隠岐諸島(おきしょとう)では1歳ほどの赤ん
坊のような姿で、一本足とも言われる。

人に対して様々な悪戯を働くと言われる。
島根県では石を割る音や岩を転がす音をたてる。
宮崎県では山の中で山鳴りや木の倒れる音をさせたり
山小屋を揺すったりする。
大分県では山道を歩く人の手や足をつかんでからかう
人をだまして道に迷わせる、怪我を負わせるなどとい
われる。

セコはイワシが嫌いなため「イワシをやるぞ」と言う
と逃げてゆくとも言われる。


78せこ オリジナルストーリー

ここは島根の山の中、一人の猟師が山の中に入ってい
た。

猟師:
くそ~、今日は全然獲物が見当たらないな~。
何かが動物を隠してるんじゃねえのか?

近くの茂みが揺れたすると猟師は足をすくわれ転んで
しまった。
そして茂みの方から子供のような笑い声が聞こえた。

猟師:
この野郎、俺様を脅すつもりか?こっちには鉄砲があ
るんだぞ!

そういって茂みの方に身構えた。
すると今度は反対側の茂みが揺れて、また猟師は足を
すくわれ転ばされた。
そしてまたその茂みの方から笑い声、猟師は怖くなっ
て逃げて行ってしまった。

しばらくすると、今度はこの山の中を小柄なお婆さん
が歩いてきた。何かを探している様子である。

今度も近くの茂みが揺れて、お婆さんは足をすくわれ
転んでしまった。
また茂みの方から笑い声...。
でもすぐにその笑い声は止んでしまった。

せこ:
おい、お前やりすぎだよ!
お婆さん立ち上がれないじゃないか。
お年寄りなんだからもっと優しく転ばさないと。
お婆さん、大丈夫。ごめんちょっとオイラ達悪ふざけ
が過ぎたよ、ごめんね。

そう言うと見えなかった2~3歳くらいの子供の大き
さの妖怪たちが姿を現した。

お婆:
あらあら、心配してくれてありがとうね。
大丈夫だよ、びっくりしただけだだから。
お前さんたちはずっとこの山に住んどるのかい?
だったら教えて欲しいんじゃ。
二日前、うちのお爺さんがこの山に薪を拾いに入った
きり帰ってこないんじゃよ。
もし見かけていたならどこで見かけたか教えてくれな
いかい。

せこ:
お婆さん、オイラ達お爺さんは見かけてないよ。
でも、ちょっと心当たりがあるんだ、一緒についてき
ておくれ。

そう言うと妖怪たちはお婆さんの手を引いて森の奥の
方に連れて行った。
しばらく行くと岩場の所にたどり着いた。
そしてなんとそこにはお爺さんが大きな岩にうなだれ
て座っていた。

せこ:
やっぱりここか!お婆さん、お爺さんが寄りかかって
いる大岩は石妖という妖怪で、きっとお爺さんを化か
してきれいな女の人が肩をもんでくれてると思わされ
てるんだよ。

このままだとお爺さんが死んでしまう。
よしオイラ達があの石妖をやっつけてあげるよ、
見ててね!

そう言うと子供の妖怪たちは近くに落ちている石を持
つと、お爺さんの後ろの大岩に向かって何度も何度も
投げつけた。
大岩は唸り声をあげると静かになった。

せこ:
これで大丈夫だよ。
もうお爺さんも正気を取り戻した。
まあ多少投げた石が当たって血まみれだけどね。

お爺さんは目が覚めたようによろよろとお婆さんの所
にやってきた。
そして額から血を流しながらお婆さんに向けてにっこ
り微笑んだ。

お婆:
お前さんたち本当にありがとう。
これで無事お爺さんと二人里に帰れるわい。
そうそう、お礼と言っては何だがお爺さんに作ってき
たお弁当でも食べておくれ、さ、遠慮せず。

せこ:
え~いいのやった~
......な、なにこれイワシじゃないか!
オイラ達イワシは怖いんだよ~。

そう言うと妖怪たちはクモの子を散らすように逃げて
行っってしまった。

お婆:
あらまあ、イワシが苦手じゃったか、お爺さんの好物
なのに。 
さあお爺さん帰りましょう...。 
後でゆっくりといろいろ訊かせていただきますからね

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