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エピソード98 貧乏神

98貧乏神

貧乏神(びんぼうがみ)は、取りついた人間やその家
族を貧乏にする神。日本各地の昔話、随筆、落語など
に見られる。

基本的には薄汚れた老人の姿で、痩せこけた体で顔色
は青ざめ、手に渋団扇を持って悲しそうな表情で現れ
るが、どんな姿でも怠け者が好きなことには変わりな
いとされる。家に憑く際には、押入れに好んで住み着
くという。
仮にも神なので倒すことはできないが、追い払う方法
はないわけではない。
新潟では、大晦日の夜に囲炉裏で火を焚くと、貧乏神
が熱がって逃げていくが、代わりに暖かさを喜んで福
の神がやって来るとされる。


98貧乏神 オリジナルストーリー

時はまさに戦国時代に入ろうかという時代、とある地
方に山内家と川上家という豪族がおり、長い間領地争
いをしていた。

しかし近年、山内家の財政がひっ迫しており戦どころ
では無くなっていた。
対して川上家は豊かで、その財力で兵士や武器を買い
すぐにでも山内家に戦を仕掛けようとしていた。

そんな中、ここは川上家との境界線にある山内家の城
を守っている森林太郎は困っていた。

森:
ん~どうしてもんか。
この城を殿よりお預かりして20年になるが、この
10年急激に我が山内家の財政が悪くなり、城の修理
もままならないし、籠城するにも米も足りてない、こ
こに川上家が攻めてきたらひとたまりもない。
馬鹿馬鹿しいがまるで貧乏神でも住み着いているんじ
ゃないかと思ってしまうな。

そんなことをブツブツつぶやきながら林太郎は城の一
番奥の開かずの部屋の扉を開けた。
するとそこには見覚えのないみすぼらしい男がびっく
りして立っていた。

貧乏神:
みっかっちゃった!
お前さん鋭いな、俺はこの10年山内家に隠れていた
のに見つかったのは初めてだよ。
よくわかったな、俺は貧乏神だ。

森:
な、なんだとこの城に本当に貧乏神が住んでいたとは
おのれよくも山内家をここまで没落させてくれたな成
敗してやる!

貧乏神:
おっと待ってくれ、俺だって神のはしくれ槍や刀じゃ
俺を殺せないぜ、あきらめな。
ここは居心地いいからまだしばらくは住まわせてもら
うぜ。

そんな話を二人がしていると城門の方から声が上がっ
た。
川上軍が攻めてきたのである。
もう壊れかけた城門などひとたまりもなく敵兵たちが
なだれ込んできた。

森:
なんということだ、もう攻めてきたのか!こうなった
ら言い争っていいる場合ではない、お前もここにある
鎧と槍を持って拙者達と一緒に戦え!
さもないとお前の住むこの城も無くなってしまうぞ!
さあ、敵が来る用意しろ。

林太郎はそう言うと城門の方に走って行った。

貧乏神:
おいおい、そんなことを言ったって俺戦なんかしたこ
とねえよ。
しょうがないな取り合えず鎧だけでも着けておくか。

そうこうしているうちに多勢に無勢あっという間に城
は川上軍に攻め落とされた。
不幸中の幸いは森林太郎をはじめ主要な侍たちは城か
ら逃げ延びたことだった。

兵士:
殿、奥の部屋にこんな男が隠れておりましたので捕ら
えました。

貧乏神は兵士達に捕らえられ川上家の当主の前に引き
出された。

川上:
お前は何者だ? 何、長い間この城に住んでいる?
つまりお前がこの城の城主で、他の者は逃げたがお前
は城と共に最後を迎えんとここに残ったという訳か。
フフフ、あっぱれな奴じゃ。
その男気気に入った我が家臣に加えてやるどうじゃ?

貧乏神:
どうも何も、今度は川上様がじきじきに俺を迎えてく
れるというのならそれもいいでしょう。
ただ、後悔だけはしないでくださいよ。

こうして貧乏神は山内家から川上家にすみかを鞍替え
した。
そしてこの日から川上家に信じられないような不幸が
続いた。

兵糧が川に流されたり、弓矢のツルが全部切れてしま
ったり、重臣たちが急な腹痛で戦線を離脱ししたりと
散々だった。

この機を逃さず森林太郎は反撃に出た、そしてあっと
いう間に城を奪い返し、川上軍は撤退していった。

川上:
おのれ、山内め~。
しかし、お前たちの重臣の一人を人質に取った!この
者の命が欲しくば我らを追ってくるなよ!

森:
なに、なんと卑怯な!
しょうがない追撃はあきらめる、その代わりその者の
命は保証しろよ!

そう言いながら林太郎はベロを出しガッツポーズをし
ていた。

数年後、山内家と川上家の財政状態はひっくり返り今
度は山内家が川上家の領土に攻め込んでいた。

それを見ながら貧乏神はつぶやいた。

貧乏神:
やれやれ、戦はやだね~。
今度はどこか戦のない所に住むことにしようかね~。
そうだ、京の都の足利さんの所あたりがいいな、
そうしよう。

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