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エピソード90 なまはげ

90なまはげ

なまはげは、秋田県の男鹿半島周辺で行われてきた
年中行事、あるいはその行事において、仮面をつけ藁
の衣装をまとった神の使い・来訪神を指す。

なまはげには角があるため、鬼であると誤解されるこ
とがあるが、鬼ではない。
なまはげは本来、鬼とは無縁の来訪神であったが、
近代化の過程で鬼と混同され、誤解が解けないまま鬼
の一種に組み込まれ、変容してしまったという説があ
る。
冬に囲炉裏にあたっていると手足に「ナモミ」
「アマ」と呼ばれる低温火傷ができることがある。
それを剥いで”怠け者を懲らしめ、災いをはらい祝福
を与えるという意味での「ナモミ剥ぎ」から
「なまはげ」などと呼ばれるようになったととも言わ
れている。


90なまはげ オリジナルストーリー

男は生まれた時から体が大きく、なぜか頭に角のよう
なこぶが二つ生えていた。

男の名前は岩太郎といった。

男の家族は男が幼いうちに流行り病でみんな亡くなり
男一人が残った。
男が十歳にもなると背丈が6尺を超え身体は熊のよう
になっていた。ある日、村の長老が家にやって来た。

長老:
岩太郎、ひさしぶりだな。
じつは今日はお前に頼みがあってここにやって来た。
村の者たちが、特に子供たちがお前のことが怖いと言
うんだ。
いやお前が小鳥も殺せない優しい子だというのはワシ
は分かっておる。
だがな、お前のその大きな体、頭の角のようなこぶを
見ると知らない奴らはお前が怖いのじゃ。
このままだといつかお前に悪いことが起きる。
そこでどうじゃ、山の麓に小屋をワシらが作る、飯も
ワシらが運んでやるから、岩太郎そこに住んでもらえ
ないか?

両親が亡くなってからずっと岩太郎の面倒を見てくれ
ている長老の願いとあっては、岩太郎は断るわけには
いかなかった。
話すのが苦手な岩太郎は笑顔で大きくうなずいた。

それから10日、岩太郎は長老たちが作ってくれた山
の麓の小さな小屋に引っ越していった。
見送ってくれたのは長老とその奥さんだけだった。

それから10年が過ぎた。
岩太郎は今では7尺以上の体になり髭がボウボウの顔
を見ると熊も逃げていくのではないかという風貌にな
っていた。

岩太郎も大人になったので身の回りの事はたいがい一
人で出来たが、着物や生活に必要なものは長老か奥さ
んが月に1、2度届けてくれた。

その年の冬の事であった。
その年は天候が悪かったせいか不作で、村々の間でも
争いごとが多かった。
そんな寒い晩、岩太郎が寝床についていると山の方か
ら男の声が聞こえた。

盗賊:
おい下を見ろ、あそこに小さな村がある。
あの規模の村なら俺達が人数を集めれば襲撃し米を略
奪することも出来るだろう。

子分:
おぅ、お頭普段は村は襲わねえ俺達ですが、背に腹は
代えられない。
悪いが村の奴らは皆殺しですね。

盗賊:
口封じには、それしかねえな。
よし、明日の晩仲間を集めて月が真上に上ったら村を
襲撃するぞ。

岩太郎はその話を全部聞き、翌朝に岩太郎から長老に
会いに行った。
そして昨晩の話を伝えようとしたが、普段から話しを
しない岩太郎は盗賊の事を長老に伝えられなかった。

岩太郎は家に帰って行った。長老は笑顔で見送った。
そして岩太郎は決心した。
昔聞いた「なまはげ」の話を利用することを。

岩太郎は日が暮れかかった村に来ていた。
岩太郎は顔を真っ赤に塗って大きな出刃包丁を持ち、
藁を体中に巻いていた。
そして大声を上げ村の一軒一軒に飛び込んでいった。

村の人々は恐怖におののき家から飛び出し、近くの森
に逃げて行った。
村人たちはあの化物を退治する方法を話しあっていた
そこに長老が割って入った。

長老:
待ってくれ、みなの衆。
あれは岩太郎だ、間違いない。
あいつはけっしてワシらに危害を加える気は無い。
誰も怪我しておらんじゃろう。

ワシが戻ってどうしてこんなことをしたのか聞いてく
る。
それまで待ってもらえんだろうか。

こうして長老一人が村に戻って行った。

長老が村に戻ってくると村の入り口に岩太郎の
「なまはげ」が仁王立ちしていた。
そして岩太郎は長老に気づくと涙を流しうろたえ、
来るなと手で合図した。

何でこんなことをしたのかと尋ねようとした長老に何
かが飛んできた。
それは長老の胸を貫き、矢の刺さった長老は地面に倒
れた。

それを合図として盗賊が何十人も山から駆け下りてき
た。
岩太郎は涙の目を怒らせ、近くの太い丸太を持つと盗
賊たちに飛びかかった。
そして丸太で盗賊たちをなぎ倒した。

しばらくは岩太郎と盗賊たちの一進一退の攻防が続い
ていたが、頭の合図で岩太郎に矢を射かけた。
さすがの岩太郎も全身に矢が刺さり地に膝を着けた。

村を守れなかったとさらに泣いている岩太郎の目に信
じられないモノが映った。

身の丈8尺以上ある青い面と赤い面を着けた何者か
二人が盗賊たちを一瞬で薙ぎ払っていた。

森から村の騒ぎが静かになったのを見計らって、村人
たちが戻って来た。
村人たちは目にした光景ですべてを理解した。

何十人もの盗賊たちの死体と、矢を受け亡くなってい
る長老と岩太郎。
村人たちは涙を流し二人に手を合わせた。

岩太郎の顔はなぜか満足そうに微笑んでした。

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