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エピソード95 化け灯籠

95化け灯籠

化け灯籠(ばけとうろう)は、栃木県の日光二荒山
(ふたらさん)神社に鎌倉時代に奉納された銅製の灯籠
(唐銅灯籠)の俗称、およびその灯籠にまつわる
怪異譚。

夜になってからこの灯籠に火を入れると、すぐに燃料
の油が尽きて火が消えてしまい、何度やっても同じ結
果だった。
また灯籠を灯すと周りのものが2重に見えたり、灯籠
そのものが様々な姿に変化したともいわれる。
警護の武士たちはこれを怪しみ、毎晩のように刀で斬
りつけた末、灯籠は通常通りになったという。
このために現在でも、この灯籠の受け皿には無数の刀
傷が残されている。
怪異の元となった銅の灯籠は日光二荒山神社が保有す
る重要文化財のひとつに指定されている。


95化け灯籠 オリジナルストーリー

ここは下野の国・日光に竜彦という若い侍がおった。
竜彦は日光杉並木街道を守る役人をしており、竜彦の
父も同じ仕事をしていた、あの日までは...。

ある日、竜彦はいつものように街道と杉並木を点検し
ながら歩いていると、大きな杉の木の裏からバタバタ
暴れるような音が聞こえた。
竜彦は木の後ろに回ってみた。

竜彦:
おやおや猫じゃないか。
これは酷い、脚が罠に挟まって抜け出せないんだな。
ん、まてよ!お前尻尾が二つ!
お前が最近この辺りで旅人を脅かしている猫又か!

見てみると普通の猫の倍はありそうな白黒のぶちの猫
が罠にハマって抜け出せなくなっている。
しかもその猫には尻尾が二本ゆらゆらと揺れている。

猫又:
お侍様、あなたがおっしゃる通りこの街道を通る旅人
を面白半分で仲間の猿たちと脅かしていたのは私です
すいませんでした。
侍様、もう私たちは悪いことは二度としません!
ですからこの罠を外してくださいませんか?
お願いいたします。

竜彦は猫又が必死で頭を下げるのを見て、もう二度と
悪さはするなよと脚がハマっているいる罠を取ってや
った。

猫又:
おぉ~痛かった。
、、、、フフフ、馬鹿めワシは妖怪だぞ。
お前との約束守ると思うのか?
ど~れ取って食ってやる!!

竜彦:
フフフ、お前こそ強がりはよせ。
俺の耳には街道に出る化物の話は聞くが、食われたと
か殺されたという話は一つも聞かん。
おおかたお前は長生きしてしまったばかりに退屈で、
旅人を驚かせて楽しんでいただけだろう。
もう二度とするなよ、次やったら俺が成敗するぞ。

猫又は竜彦の言葉を聞くとニヤリと笑って森の方に走
って行った、森の入り口には猿が三匹待っており、
猫又が来ると一緒に森の中に消えていた。

三日後、竜彦のもとに知り合いから文が届いた。
竜彦の父を切った仇の虎之介が明日の晩 恒例として
いる日光二荒山神社参りをすると書いてあった。

実は8年前竜彦の父は、夜に二荒山神社参りをしに来
た虎之介の参拝を断り、注意したため切り殺されたし
まったのだった。

竜彦:
長かったこの8年。
この日の為にどれだけ剣の腕を磨いてきたか、やっと
父上の仇が取れる!
首を洗って待っていろ虎之介!

次の夕暮れ竜彦は神社の参道にある大きな銅の灯籠の
後ろに隠れ、虎之介が来るのを待っていた。

日も沈み暗くなると提灯を下げた黒ずくめの大男がこ
ちらに向かって歩いてきた。
竜彦は男の顔を確かめると男の前に飛び出した。

竜彦:
待っていたぞ虎之介!お前がこの参道で切った、わが
父の仇覚悟しろ! 

虎之介:
この神社で切った男?
俺は俺がやりたいようにやってきた。それに逆らう奴
はみんな切って来たから覚えちゃいねえ。
まあ、刀の錆にしてやる、かかってこい!

こうして二人の戦いが始まった。
剣の達人である虎之介、そしてこの日の為にずっと剣
の腕を磨いてきた竜彦。
二人の腕は拮抗していたが、経験で勝る虎之介が押し
てきた。

虎之介:
どうした若造、もう後がないぞ。
そろそろ終わりにしてやろうか!ハハハ!

そう言って虎之介は竜彦を押し倒し、上から切りかか
ろうとした!

すると先ほどまで竜彦が隠れていた銅の灯籠が炎を燃
え上がらせ火花を散らしながら虎之介に飛びかかって
きた!

さすがの虎之介も2度3度と灯籠を叩いたが、刀を弾
き飛ばされ尻もちをついた。
それを見ていた竜彦は立ち上がり、虎之介に切りかか
ろうとした。

そこに灯籠から声がかかった。

灯籠:
まて竜彦!お前がこんなところで殺生をしたら重いお
とがめを受けるであろう。
こんな奴の為にお前が罰を受けるのはワシには許せん
のだ、どうか耐えてくれ!

見ると虎之介は大きな猿3匹に襲われ、引っ掻かれて
顔も手足も傷だらけになって泣いている。
そして虎之介は気を失った。
灯籠は本当の姿、猫又に戻った。

猫又:
ワシはあの日お前に助けられた猫又だ。
今晩の事はワシは眠ったフリをして見なかったことに
する。
猿たちも見ざる聞かざる言わざると約束しよう。
後はお前の好きにするといい。
ワシ達はこらからもお前の活躍をみておるぞ。
フフフフ。

猫又と3匹の猿は東照宮の方に消えて行った。

竜彦は気絶した虎之介をもともとあった銅の灯籠にぐ
るぐる巻きに縛り付けた。

そして朝を迎えた。
捕らえられた虎之介は今までの悪行を裁かれ切腹を言
い渡された。

竜彦は東照宮を見回っていた。
そして回廊にある、見覚えのある猫の彫り物を見て
深々とお辞儀をした。

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