サーティシックスアワーズパーティピープル

アレは数年前の残暑も終わりかけで秋になろうとしていた頃。
シフトの都合で2連休を手に入れていたワタシ。
都合で、と言うのはその頃シフトを作る立場で、出来る限り皆の休み希望を通してあげて自分は休めそうな日に休むスタイルだったので事前に予定を入れる事はあまりなかった。
たまたま休みになったその日に思い立った事をやるのが休日の過ごし方だった。
なもんで思い通りにならない事もあれど想像もしなかった事になる事も多々あった。
その日もそうだった。

昼過ぎに起き、洗濯をしながら今日どうしよかなと考えていてふと弟と久しぶりに呑むのもアリだなとよぎってすぐさまメール。
ダメならDVD4本くらい借りて飲みながら観るでも良いかなと思っていた。
するとちょうど彼も予定ナシの休みで2時間後に阿佐ヶ谷の彼の家へと向かった。

駅まで迎えに来てくれた彼の手にはプルタブの開いたビールがあったがそれはワタシも同じ。
彼の家に向かう道中でしこたま買い込み、家に入ると玄関の壁に鹿のアタマがあった。
「コレは…?」
と思って見ていると察したのか
「ああ、コレ?この建物が来年で取り壊すみたいだから好き放題改造しようと思ってさ。面白いじゃんドア開けてコレあったら。みんな笑うっしょ」
相変わらずクレイジーな奴だ。
思えば昔、今は無き高円寺GEARと20000Vが入っていたビルの近くでワイン片手に血塗れで倒れている彼と遭遇した事もあるし、数ヶ月会わないと彼女は変わってるし、いつだかの正月には近所のスーパーがあり得ないくらい安いから行こうと言って1キロの挽肉を買いそれを元に1キロ越えの巨大ハンバーグを作って男3人で食べたりもした。
他にも書き切れないくらい彼の奇行はあるんですがまぁワタシも負けじ劣らずなので人のコトはあまり言えないのが悲しいトコロ。

その日はお互いオススメのパワーポップバンドの動画を見せ合いっこしながらオリジナルツマミを作ってひたすら飲もうというコトになっていた。
先行DJ弟、と言うよりも彼が
「このバンド絶対お兄ちゃん好きだから聴いてほしい!80年代のB級感出まくってて最高だから!」
と言うので聴いてみるとコレがまたストライクでワタシは今でもたまにDJの時にそのバンドの曲を使っている。
それからはお互いコレが良い、アレが良いと言いながら夜が更けて気が付けば23時過ぎ。
実は明日も休みで予定はない事を告げると、彼も休みで夜に飲む約束があるからそれまでは飲めるからこのまま飲もうよとなり我々は缶ビールタワーを増築した。

酒飲みというのはどうしてどれだけ飲んだか、で笑えるのだろうか。
まぁその頃にはタワーは20缶くらいはあって今にも崩れそうだったのと、その頃のワタシは急に眠くなることが多くて気が付けば寝てしまっていた。

7時頃起きてぼんやりしてると寝ていた彼が一瞬起きて
「ウォッカあるから適当に飲んでで良いよ、あと2ちゃんで見たコレ面白いから見てみて」
と言ってまた寝たのでブルドッグを作って飲みながらそのスレッドを見てたら面白くて3時間が過ぎていた。
童貞、風俗嬢、かよちゃんとかで検索すると出てくるかも。
見終わったあとにちょうど彼が起き12時になればいせやが開くから吉祥寺へ行こうとなった。

いせやは老舗として有名だけどもその数年前に改装して。
酔客が空けたであろう壁の穴やお世辞にもキレイとは言えない店内はすっかりキレイになっていた。
それも込みでナイスだったのになぁとは思ったがビールを1杯飲めばそんな風情も何処へやら。
平日の昼間に飲むビールほど最高なものはない。
我々はグイグイ飲んだ。

いせやから移動して井の頭公園で彼の予定まで飲んでいると一通のメールが来て開くと

「ゆうじろうさん、今日どこで飲みます?」

お相手は普段そんなに連絡はしていない。
メールのやり取りを見返しても今日約束してるフシはないし、最近会ってもいない。
うーむ、と思ってそれを彼に話してみると
「昨日飲んでる途中で華がほしいって言って女の子に電話してて今日飲む約束してたよ」
とのコト。

あ!そう言えば!
思い出したワタシは先方が動ける時間を確認した。
たまたま吉祥寺から当時住んでた三茶に帰って支度をすることが出来そうだったので彼とはそこで別れた。
お互いコレから酒の席が待っているが既に出来上がっていた。

シャワーを浴び、準備をしていると飲み続けてたせいか眠くなってきたのと、サシで飲むのは初めてだしそんなに知らないし大丈夫かなと不安になってきた。
なんなら今すぐベッドに飛び込みたい。
が、なんとか待ち合わせの下北へ向かった。

しかし先程の不安は杞憂に終わり、楽しく過ごして気が付けば24時前。
聞けば下北じゃないけど歩いて帰れるとのコトで1時くらいまで飲み途中まで送っていった。

その道中の途中で手を繋いで歩いた。
片方の手にはモチロンビール。
酔っ払い特有の「別れ際が長くなる」のアレで長めの立話しをしてまた下北経由の三茶へ。

いやー飲んだ飲んだ。
千鳥足だしさすがにもうタクシーで帰ろかなと思っていると下北のディスクユニオン近くの居酒屋から知ってる声が聞こえた深夜2時過ぎ。
店を覗くとやっぱり友人の食券がいた。
人懐っこく寂しがり屋な彼に昨日の夕方から飲み続けててもう帰るトコだと話をしたら
「そんなの関係ないよ!俺はゆうちゃんに今会えたのが嬉しいから飲もうよ!」

正直今すぐにでも寝たいワタシは返す刀で店主に言った。

「すいません、ビール下さい」

そうしてワタシは下北沢の夜に溶けたのだった

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