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せいろ蒸しで人生変わったかもしれない

私は料理が苦手だ。
不器用だし、そもそも全体的に工程が多くて面倒臭い。
クックパッドや白ごはんドットコムを見てその通りに作ることはできるけど、豚肉で脂ぎった手でスマホとまな板を行ったり来たりするのがほんのり苦痛だ。
何も参考にせずになんとなく焼くと大体パサパサになるし茹でると風味がどっかに飛んで行く。
だが私はお母さん歴約3年。
適当にカップラーメンの残りスープ卵とじご飯で済ませていいわけがないのである。

毎日のご飯に悩む日が続く。
そんな折、妹が「せいろ蒸し、簡単でおいしいからおすすめだよ。」と1年前からしきりに言っていたことを思い出した。せいろって、「ていねいな暮らし」の代表格みたいなイメージである。塩麹で肉を寝かせたり、ほっこりした縄で出来た鍋敷きがある家庭にあるのがせいろ蒸し。こんな限界ズボラ家庭には似合わないし、買ったところでカビ生やして箪笥の肥やしになると決めつけて、丸1年貴重なアドバイスをないがしろにしてきた。

でも、もう、レパートリーが本当にない。
息子(2歳)は、硬い肉を口の中で選別してベッッッと見事に吐き出す習性を持っている。豚バラなんかをしゃぶしゃぶで出した時なんかは最悪である。もしかしてせいろでじっくり蒸せば、お肉がふっくら蒸しあがる可能性があるのではないだろうか?

せいろ欲しいな。

Xと脳が繋がっている私は即座に悩みを吐き出すと、モノ選びのエキスパートのお友達からすかさず連絡が来る。
「中華街昭宝のせいろがいいよ!」
ふむふむ。なんだそれ。本当にこの人はなんでも知っているな。
横浜中華街に行かねばならないのか。自由時間が少ない私には腰が重かったが、なんと通販があった。

せいろにもランクが色々あって、材質やサイズ、段数が違うようだ。
私はありとあらゆる面でオーソドックスな、竹の1段24センチを発注した。それは1週間ほどで届いたが、まだせいろのことを信じきれていない私は、ヤマトから受け取って玄関に放置したままさらに1週間が経過した。ズボラが極まっている。

そして本日。2024年5月22日水曜日。
冷蔵庫にはアスパラと豚肉しかなかった。
アスパラ肉巻きは何度も試したが火を通す過程で固く美味しく無くなってしまっていた憎き料理レパートリーの1つだった。
せいろの出番キタ!!!アスパラは根本を1センチほど切り、ピーラーでスジを取り除く。そして半分に切ったものに、豚バラを巻きつけていく。不器用なので、豚バラが5回ぐらい解けた。
チクショウ、12枚ぐらいあるかと思って買った豚バラが全部で4枚しか入ってなかった。こんなことある?
ここで気がついたのだが、穴が空いているせいろの形に合った丸いクッキングシート的なモノが家にないことに気がついた。終わった。
仕方ないのでただのクッキングシートを使った。大丈夫か、これ。

せいろ(24センチ)より小さな雪平鍋に水を入れボコボコに沸騰させる。
この上にせいろを乗せて7分待つだけで完成するらしい。
無印のキッチンタイマーを滑らせて私は胸を高鳴らせてその時を待った。
ちなみに無印のキッチンタイマーは世界一使いやすい。これより使いやすいキッチンタイマーは存在するのでしょうか。
待つこと7分、やはり穴の空いてないクッキングシートは蒸気を通しづらいらしく、結局12分くらいかかった。
そして私が所持している中で最高の調味料「ろくすけの塩」(これも、せいろのお友達が教えてくれた意味不明な旨みの塊である。)
を少なめに振りかける。
アスパラをかじる。
あっっま!
シャァッッって歯応えがする!
日本橋とかの大将が出してくれそうな天ぷらのアスパラみたいな風味がする!!
豚肉をかじる。
ふわっふわ!
あっっま!
コース料理の最後に出てくる日本のどっか産のなんとか熟成豚みたいな味がする!
ちょっと本当にびっくりしすぎて1人でエッ?!エッ?!と言っていた。息子は怪訝な顔をしていた。
家庭で肉を固くない状態で食べられることってあるんだ。アスパラってこんな風味がするんだ。全ての常識が覆った瞬間である。
普段保育園の帰りがけに「今日はうなぎあるか?」と聞いてくるグルメ寄りの息子もすこぶる気に入ったようで、肉巻きアスパラを片手にかじりながらアンパンマンを投げ飛ばしていた。心の底からテーブルで食べて欲しい。

切って入れて蒸すだけ。こんな簡単な神の料理がこの世に存在していたとは知らなかった。
必要な調理器具がまな板と包丁だけなので、洗い物も最小限で済む。
味よし、栄養面よし、ズボラよし。
私のせいろ人生のスタートにご尽力いただいた方々、ほんとうにありがとうございました!



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