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ある日のオカルト研究会

ゆらゆらさんって知ってる?

夜道を歩いていると小刻みに揺れながら現れる赤い影。ゆらゆらさんがこちらに気づくとずっとついてくる。白くうすぼんやりと光る眼は相手の精神を汚染する......。

「くねくねじゃねえの?」

俺は、その聞き覚えのある彼女の都市伝説に肘をついて聞いていた。

「全然違いますよ! これ、今度はガチなんで。いつもの調査、行きましょうよ」

彼女が親指を噛むときは嘘をついている。だけど、オカルト好きなら、食いつかないわけはない。

「仕方ねえな。地方伝承による表記ゆれかもしれないし、行ってみるか」

春休みを利用して俺たちはそいつが見たっていう場所まで電車を乗り継いだ。

「来んのに3時間かかったぞ! これでなんもなかったら」

「いますよ。うちが言ってるんですから」

こいつは俺にだけ嘘をつくことが多い。やれ河童だのおばけだの......俺が食いついてきそうなことばかり並べて、行けばただの河童の伝承館だったり、ホームレスのたまり場なだけだったりする。俺をもてあそんで何が楽しいのやら......。彼女はその度けなげな笑顔をみせてくる。

「わかったよ。もう少し見てみよう」

すっかり日は落ち、彼女の証言を頼りに必死に探すもそれらしきものは見つからなかった。

「おいおい。なにもないんじゃ」

言いかけたその時、畑の向こうに赤い何かが揺らめいているのが見えた。大きくゆれたと思えば小刻みに暴れだす。人間だとは思えないような動きを見せてくる。揺れはそこでとどまり、ずぅっとゆらり、ゆらりと動いている。ひっそりと手を握る彼女の手を放し、それに近づくと俺は肩を下ろした。

「これ、町おこしの旗じゃないか。なんてことなかったぞ」

「あ、あれれぇ? おかしいぞ?」

「はぁ。まーたやったなお前」

彼女をたしなめるといつもの笑顔がかえってくる。でも、こんな笑顔に揺り動かされてる俺も俺か......。 ため息をついて彼女の手を引っ張った。

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