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無名サラリーマンが本を出版したそれまでの道のり

やや古新聞の情報なのですが・・・2022年11月17日、幻冬舎ルネッサンス新書より本を出版しました。タイトルは見出しの画像のとおり「就職活動の本質」。無名のサラリーマンの自費出版。費用は新車のカローラ一台分くらいかかりました。ゆえに、ぶっちゃけ大赤字もいいところ。別に裕福でもなく、資金に余裕があったわけでもなく、ましてや当時、私立大学在学中の息子が大学院に進む矢先で出費が嵩んでいた時期。そんなコンテクストの平凡なサラリーマンが、なぜこんな大胆なことをしてしまったのか。今更ながらではありますが、思い切ったことをしたなぁと振り返ります。

Noteには本の出版を志している人が多いかと思うので、私のような凡人サラリーマンが本を出版したひとつのケースとして参考までに、ここに綴っておきたいと思い立ちました。概ねこの筋書きや当時の心境は本書の中に綴ってあるので、そちらを参照頂けると嬉しいのですが(笑)、本書の主旨は文字通り”就職活動の本質”ですので、そことは一線を画して、少々の前置きはご容赦頂き、以下に本の出版、そのプロセスや意義という部分だけにフォーカスして綴りたく思います。

【背景】
さて、そもそも私は本を出版するなんていう意志など全くありませんでしたし、いうほどの本読みでもありませんでした。平均すると年間40冊~50冊くらいを読むといったところでしょうか。本を書きたいなんて考えたこともなかったですし、そんな野心などまるで皆無でした。そんな私がなぜ?ということになるわけなのですが・・・

一言でいうと、”変な使命感” だったんです。

2020年~2021年は私の息子にとっての就職活動の年次でした。息子の今後の人生を左右するかもしれないひとつの岐路。まぁ父親でもありますし、そもそも世話焼きな性格でもあったもので、大所高所から息子への就職活動のアドバイスをしておりました。というのも、当時は前代未聞の世界的なパンデミック渦。従来の採用プロセスとは全く事情が異なり、書類選考後の企業と学生との面談はほぼオンライン。対面面談ができない企業も試行錯誤しながら、未曾有の社会現象の中で採用活動を走らせていたのだと思います。反対に、学生たちも過去の事例や手引きがない中で暗中模索の就職活動。息子も含めてとても不安な時代だったと思います。そんな時代背景もあり、やはり心配があったのも否めないのですが、それよりも父親として社会人としての在り方、企業のどこに注目すべきか、その見方や選び方や絞り込み方、そして自己分析や自己PRのテクニックなど、思うままにインプットしていったのでした。そんな話がそれなりに息子の共感を得られたのか、息子から、Matcherという無料のスマホアプリを紹介され、「親父、こんなん好きやろ?他の学生たちもきっと親父の話聞いたら救われると思うで。」と登録を勧められたのでした。

Matcherとは文字通りマッチングアプリでありますが、実態はそのネーミングから想像に難くない男女マッチングアプリ・・・ではなく、全国の就活生と、彼ら、彼女らの就活に係る迷いや悩みに対して、ボランティアで相談に応じる意思のある社会人とをマッチングする、いわゆるOB訪問アプリです。常時ウン万人を超える登録者数を誇っており、学生たちが登録社会人のプロフィールや学生たちからのレビューを参照し、相談したい意中の社会人をみつけたら面談を申し込み、社会人側が受け付けたらマッチングが成立。それぞれオンライン(リアル面談もある模様)などでOB訪問をするといった仕組み。私が学生だった30年前は、自ら大学の就職課(今でいうキャリアセンター)に足しげく通い、登録名簿から自分が入りたい企業に就職した先輩を探し出し、電話でOB訪問を申し込んでいました。そんな時代から比べるとありがたいプラットフォームができたものです。昔は自分の在籍大学の先輩という大学縛りでしかOB訪問が実現できませんでしたが、同社設立の目的として、そのような垣根を取り払い、学生たちが在籍校という範囲を超えて広く情報収集し、自己研鑽に取り組み、有意義な就職活動を実践できることを志して、このプラットフォームを作られたそうです。

私はこのプラットフォームの社会人側に自分を登録し、今日までに概ね3年半、550名を超える全国の学生たちの相談を受け付けてきました。感覚的にほぼ全国の大学は制覇できたのではと自負しております。今でも続けていますが、他にも大学院生や海外に留学中の学生なども受け付けてきました。もはやライフワークになってしまっています。

【変な使命感】
3年半、550人もの就活生と面談してきたからわかります。本来は一人ひとりが魅力たっぷりの学生さんなのに、就職面談に臨むにあたりみんな耳タコほど同じ話をするのです。これには本当に驚愕しました。そして、同時に日本の教育課題を肌で感じました。一億総中流社会、平均点の人材を作り続けてきた結果がこれかと愕然としたのです。結局、皆、企業へのアプローチの仕方がわからないので、答えをネットのテンプレートに探しにいくのが常套手段。だから誰に志望動機を聞いても、自己PRを聞いても、いわゆるガクチカを聞いても同じようにしか聞こえなかったんです。それでも、じっくり一人ひとりの話を深掘りしていくと、それはそれは皆さんぞれぞれが魅力に満ち溢れていて、なぜそんな大事なことを発言しないの?というくらい、ネタは豊富。でも、テンプレートのパターンから外れて、出る杭になることに躊躇してしまっているのが実態だったのです。

失われた20年、いや、失われた30年。私は、今の日本の課題は「変わらない」ことにあると思っていて、ゆえに「変わらないといけない」と常々思っています。ずっとずっと、しおらしく、優等生を演じて、平均点から平均点のちょっと上くらいを求め続け、そこに安住していたら、この先も日本は変わらない。失われた40年まっしぐら。日本にとどまらず、世界規模で社会の課題を捉え、社会貢献活動に尽力する企業の一員として、社会人としての役割を果たす、そういった本質的な志をもった人が一人でも多く社会出て行ってくれたら、きっとこの先の社会は変わってくれるはず!!そう語ってきた私の話は学生たちの心に刺さっているというひとつの手ごたえを感じていました。長くなりましたが、当時は300人くらいの学生たちと関わってきた頃だったでしょうか、ただのしがないサラリーマンの私が、こんな私の思いを一人でも多くの学生たちに広めていきたい!といった”変な使命感”を抱くきっかけとなったわけです。

【意思決定】
こんなことで、2022年1月1日元旦。家族に向けて私が語った3つの抱負のうち、その一つが「本を書く」。家族全員「えー!マジか!?!?」と半信半疑だった様子でしたが、意外にも私は本気だったもので、集中して、そこからたった約2カ月で本書を書き上げてしまったのです。自分でも少し驚きの才能?開花だったのですが、頭の中に筋書ができあがっていて、スラスラ書き上げることができたのです。ところが、「原稿を書き上げたのはいいけど、本ってどうやって出版すんの?」そんなこと知る由もなく、書き上げた原稿を無駄骨作品にしてはならんと、ネットで本の出版方法についてあれこれ調べていったのでした。

【自費出版の方向づけ】
まずは、商業出版にするのか、個人(自費)出版にするのか、これを決めなくてはなりませんでした。ここは正直あまり考えるのに時間はかかりませんでした。私のような無名の単なるサラリーマンが商業出版を企てたところで、星の数ほどの応募作品群の中から、年単位かかっても恐らく出版社に読んでももらえないだろうし、まして出版に辿りつくことなんてできないだろうということくらいは容易に想像がつきました。だから自費出版しか選択肢はないだろうなと。そこから、講談社、集英社、小学館などなど、指を加えながら大手の出版社を横目に調べていくと、幻冬舎ルネッサンス新書なる出版社のホームページに辿りついたのでした。幻冬舎の本はよく読んでいましたが、そこの自費出版部門が幻冬舎ルネッサンス新書ということ。本屋にいけばわかるのですが、新書コーナーで黄色く一段と目立っているのが幻冬舎。書店の規模によっては置かれていませんが、幻冬舎新書の横に細々と時折みかけられる緑色のカバーの新書が、個人が自費出版した作品を扱う幻冬舎ルネッサンス新書です。一通りホームページで情報収集したあと、コンタクトしてみたところ、同社の担当の方とオンラインで面談(先方からすると営業・商談)の運びとなりました。

【出版社の決定】
実は、他に二社ほどベンチマークをしていたのですが、話をコンパクトにするために割愛しますと、概ね幻冬舎ルネッサンス新書に即決でした。冒頭にも触れているとおり金額はそれなりに張りましたが、一番の決め手は流通。私が本書を出す目的は、「出版すること」ではなく、「一人でも多くの学生の手に届けること」だったので、そのためには流通がどうしてもキーだったのです。初版は出版社の提案もあり2,000部。同社の場合、全国の大型書店にバラまいて頂けましたし、私からのお願いで大学生協にも流して頂けました。加えて、電子書籍もアベイラブルで、24社ほど(だったかな?)の有力電子書籍販売サイトにも掲載頂けるということが、同社に決めた私にとっての最大の魅力でした。

【本のタイトル決め】
ここは私の拘りで、当初より決めていた「就職活動の本質」としましたが、実は私の担当だった27歳の若手企画担当者のO氏は、少々固い表現ということで、若手には刺さりにくいと反対でした。O氏がイメージしていたタイトルは、やはり売れ筋本によくみられる「内定確実!」とか、「絶対内定!」とか、キャッチーな、わかりやすいものだったようです。ですが、ここは自費出版、即ち、幻冬舎ルネッサンス新書からするとクライアントにあたる私のわがままを推して「就職活動の本質」で決着しました。

【文字数・ページ数・値決め】
前後しますが、ページ数は80,000字以内程度の指示で、それで概ね180ページから200ページになるとのことでした。原稿は概ね書きあがっていたので、180ページから200ページに収まるようにうまく調整していっていました。新書スタイルにするか、ハードカバー本にするか、どちらも選べました。概ね新書は1,000円未満、ハードカバーは1,500円程度ですが、私は就活生のお守りとして、女性の小さなポーチにも入れられるようにと新書サイズに拘りました。そして、お金のない学生たちが購入できるようにと1,000円未満ということで、990円に設定することになりました。

【スケジュール】
出版までのスケジュールはネットでもよく語られていますが、概ね原稿完了から6カ月が目安のようで、私の場合も概ねそのとおりでした。まず、目標出版日を決めると、そこから逆算して初校(ゲラ)、第二校、第三校、念校という、出版社と著者双方での原稿確認プロセスがあり、その間に法務確認(他人の作品の権利侵害有無や用語など)、カバーや帯デザインの確認や提案などなど。また、諸々、登場人物や会社名の権利確認は私が自ら行いました。私の場合、一番ハードルが高かったのが自身が所属する会社の権利確認でした。個人名は伏せていましたが、社名や社内での出来事、社長名等々は本書の中で綴られており、大企業ゆえにどうやってステップを踏んだらよいのか悩みに悩みましたが、結果的に適切なルートで承認を得ることができました(ここは少々特殊なテクニックを使っているので割愛します)。

【ロイヤルティ条件】
印税については、それぞれの交渉や条件によって変わってくると思いますが、簡単にいうと、初版の2,000部は私が全部買い取っている形になるので、印税は入りません(涙)重版されて初めて入ります。まぁ、一般的には小売り価格の8%~10%といったところでしょうか。私の契約はご想像にお任せします。重版されたらの話ですけどね(笑)電子書籍も幾分か読んで頂けていますが、実入りは雀の涙です(涙)。

つまり、結論、私のこの自費出版は大赤字なのです。私が海外出向時にコツコツ貯めていた隠し口座-今般嫁さんに自供した隠し口座(笑)を全額はたいて、出版費用はなんとか工面しました。正直、回収しようともできるとも思っていません。恐らく不可能なので(笑)。でも、よかったんです。私の作品は国立図書館に納本されますし、学生や社会人、数百人の読者様方に読んでも頂けています。それがきっかけで出身大学でちょっとした講演(無償)の機会も頂けました。ゆえにサプライジングな出会いもありましたし、なにせ、どこに行っても話のネタにはなるんです。ちなみに、一つ前の投稿にもありますが、今般、国家資格キャリアコンサルタントの資格をとりましたので、きっとこれから先の営業で活かせる場面があるだろうと淡い期待もあったりします。

【まとめ】
走り書きではありましたが、こんな感じで無名のサラリーマンが偉そうに「作家」を名乗ることができるようになったのでした。拙著を手にとって頂いた方々には「中原先生」と呼んで頂けます。ただ、くすぐったいのと、そんな柄でもないので、私は「中原さん」で・・・と照れくさくお願いしています。私が本を出版した目的は、先述のとおり、「一人でも多くの学生たちに、社会人としての役割を認識し、社会の役にたてる舞台に巡り合ってほしい」といった志だったので、儲けとか、何か大きなことを狙ったわけでは全くないのです。まぁ、今後の何かのきっかけになったらうれしいとは思いますけどね。とかいいながら、Breakeven Point(採算点)の重版数とか、10万部売れたらいくらなの?とか計算したことはあるんですけどね。因みに、3万部くらいで採算点です。途方もなく遠いゴールです(涙)。

もしも自費出版を考えておられる方がいらっしゃったら、少しでも参考になっていれば幸いです。私のように広い流通網を条件にしたらかなりの金額になってしまうかもしれませんが、わくわくするチャレンジになると思いますし、いろんな出会いがあることは間違いありません。私はB2C商材の商品企画という仕事をしていましたが、自身が企画した商品が店頭に並んだ時は大きな達成感を感じることができました。本書の出版も同じで、Amazonや楽天のようなネット上の書店、大手のリアル書店で自身の作品を見つけた時は本当にうれしい気持ちになります。そして、店頭ではそんな何万冊、何十万冊とある本棚の中から、自分の本を選んで頂いた実績が少しでもあることだけでも感謝の気持ちが芽生えますし、ゆえに生きた心地になれますよ。あなたも如何ですか?

最後になりますが、ご紹介の拙著、よければ是非手にとってみてください。
就職活動の本質 (幻冬舎ルネッサンス新書 258) | 中原 勇一郎 |本 | 通販 | Amazon


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