悠吏の舌が俺の舌と絡み合う。 互いに固くなった股間がスウェットごしに触れ合っている。 「拓斗、、、ごめん、、、俺、我慢できないや。」 そういうと悠吏は「よっ」と俺をお姫様抱っこした。 「ちょ、重たいって!」 「ベッドまで連れてく」 満面の笑みでそう言うと、たかだか数歩の距離を抱っこされたまま連れてかれ、ダブルベッドの中央に静かにおろされた。 すぐさま悠吏が俺の上にまたがり抱き着くと、右手で俺の股間をまさぐった。 「拓斗のすごい固い。」 「お前だって、めっちゃ起って
少しの間があって、自分が何も言葉を発していないことに気づいた。 頭が混乱している。 「な、なに言ってんだよ。酔いすぎ」 気持ちとは裏腹に口からは全く違う言葉が出てしまう。 ベッドから起き上がり、ベッドから離れようとすると、すっと腕を掴まれた。 「待って!」 振り向くと、悠吏がまっすぐな眼差しでこちらを見つめていた。彼は腕を握ったまま 「冗談と思うかもしれないけど、俺、拓斗のことが好きなんだ。 冗談じゃない、、、、 本当に好きなんだ。」 また、時が止まる。 握ったまま
『モルサ』を出て、高島屋を横切り新宿駅に向かう。 金曜日ということもあり、0時前だが人で溢れかえっている。 人をかきわけ悠吏と共に小田急線各駅停車に乗り込んだ。 「拓斗、よかったね、なんとか座れたよ。」 「うん、ラッキーだったな、、、」 席に座ると、沈黙が続く。 「たいき」が日本に帰ってきた。 なぜ、連絡をくれないのか。 なぜだ。 あの時、好きだと言ってくれたのに、俺をおいて海外にいってしまった彼。 彼が海外に行った時点で全てが終わっていたのはわかっていたけれど
集合場所のローソンに近づくにつれ、なんというかリアルの前のような高揚した気分になっていた。 直前の角を曲がり、青と白の看板が見えると、ローソンの前にポツンと身長の高い青年が空を見上げていた。 俺は近くまでいくと、慎重に声をかけた。 「は、、、晴也?」 「あ、まことくん!」 身長は俺よりも5センチほど高く、タイトめのスウェットパンツを履いている青年はこちらをみて、 想像していたよりも2オクターブ低い声でそう答えた。 俺は間髪入れず、 「久しぶりだな~。6年見ないうちに随
部屋が少し蒸し暑い。 雨が降っているため窓を開けることができず、かといってクーラーをかけるまでもなく、そんな居心地の悪い部屋で、なかなか眠りにつけずブランケットの中でもがいていた。 ふと、ベッドの隣に置いてある時計をみると1:30を過ぎようとしていた。 「マジかよ、、、最悪」 連日リモート飲みや夜更かしで不摂生が続いたため、今夜こそは早く寝ようと12時にベッドに入ったものの、結局眠れず1時間半もたっていた。 本当に最悪だ。 いや、最悪なのはこの眠れないストレスだけ
あっという間にビールが空いてしまった。 さっきまで他愛もない話で盛り上がっていたのに、ビールが空くと急に会話がなくなってしまった。 何を話そうかと迷いながら、悠吏のほうにこっそりと視線を向けると、悠吏は夜空をずっと見つめた。 「そんなに満月が気になるの?」 冗談まじりで言ったつもりなのに、 悠吏は満月を見つめたまま微動だにせず 「いや、、、、こんな大都会、東京のど真ん中で、こんなにきれいな満月見れるなんて不思議だなって。 俺の地元、小さいころ見ていたのと変わらない満月。
【17:00】 夕方になると社内の空気が一気に週末モードにかわる金曜日。すでにオフィスは金曜日の夜に向けて、そわそわし始めていた。 そんななか、俺はといういと、もの凄い勢いでキーボードを叩いていた。 普段もこのくらいの勢いで仕事ができたらいいのにと考えてしまう。 「堀川君、今夜デートかなんか?」 「さ、榊部長!急に驚かせないでくださいよ」 榊部長。40前半にして女性で部長になった、所謂キャリアウーマン。 『自分が信じたことは喧嘩してもいいから、最後まで貫き通しなさい!責任
「その子、絶対に『こっち側』の子だよ!!」 「うーーん、そうかなぁ、、、。」 「どう考えたってそうでしょ!『ノンケ』がそんな態度しないって!!」 新宿三丁目にあるスペインバルで、親友のショータが興奮気味に俺に言ってきた。 「お待たせしました、燻製肉の盛り合わせです。えっと、、、岩塩つけてお召し上がりください。」 ちょうど良いタイミングでウェイターが注文の品を持ってきた。 大学生だろうか、まだ接客に慣れていない感じが初々しくてかわいく感じる。 「ありがとうございます」 まる
「ちょっと、トイレ~」 とフラフラした足取りでトイレに向かった悠吏が、かれこれ10分以上戻ってこないので、さすがに心配になってトイレのほうにいくと、トイレの対面にある寝室のドアが少し開いていて、そこから光が漏れていた。 寝室に入ると、そこには立ったままの悠吏が、ある一点をずっと見つめていた。 「ねえ、これ何」 その視界の先には、壁一面に貼られた世界各国の写真があった。100枚以上ある写真は、白い壁一面を埋め尽くしていた。 「あー、これ。 俺、大学生のころ、一眼レフもって
急にため口になった悠吏(ゆうり)が言った 「俺ら、同い年だよ」 という意味が理解できず、悠吏にどういうことか聞こうと彼の方を見たら、 悠吏の瞳にくぎ付けになってしまい、なぜか声がでずにいた。 クーラーから出る風の音しか聞こえない室内。 悠吏の瞳がだんだん俺に近づいてくる。綺麗な黒目が徐々に大きくなってくる。 「なんかついてる、俺の顔?」 その言葉で我に返った俺は、悠吏との顔の距離が10センチほどまで近づいていることに驚き、後ずさった。 「いや、何もついてないよ。」 俺
そうこうしているうちに、Tシャツ・スウェット姿の悠吏(ゆうり)がリビングにやってきた。 「お風呂、ありがとうございました。」 深々と頭を下げるのを見ると、育ちの良い子なんだなと共感を持てる。 「ソファーに座って。今、紅茶用意するから」 「え、すみません。僕も手伝います!!」 と、ダイニングにいる俺の隣までやってきた。 隣にくると、彼の身長の高さが直に感じられる。 俺は170そこそこしかないので、やはり180近くある悠吏が隣にくると威圧感、、、というか、すごく緊張してしま
「ちょっとそこで待ってて。バスタオル持ってくるから」 「ありがとうございます。」 脱衣所でびしょ濡れのジャケットを脱ぐと、取り急ぎ、バスタオルだけをつかみ、玄関まで戻った。 「はい、タオル。拭いたら上がってきなね。」 彼は、先ほどと同じトーンでありがとうございますとだけ言い、 ワシャワシャと頭を拭き始めた。 それを見届けると、また脱衣所に戻り、着替え始めた。 びしょ濡れのズボンを脱ぐと、グレーのローライズパンツまで雨が浸透しており、色が変わっていた。 仕方なく下着も含めて
「雨ひどくなる前に、俺帰るね」 「堀川さん、既に外だいぶひどいですよ」 にやけながら言う悠吏を横目に、窓から外を見ると、雨と強風で外に置いてあるベンチが倒れていた。 間違いなく外に出た瞬間に、パンツまでびしょ濡れになる勢いだった。 「困ったな~」 途方に暮れていると、奥からエプロンを外した悠吏が出てきた。 「何やってるんですか、堀川さん。帰りますよ!」 「え!外ものすごい降ってるけど、出るの!?てか、もう閉める準備できたの?」 「はい。こんなお店、5分もあれば閉めできま
思い切って、カフェのドアを開ける。 チリンチリン 「いらっしゃいませ、、、あ!」 「こ、こんにちは」 まさか彼が出るとは思っておらず、さらに、あちらが俺に驚いた様子だったため、かなりぎこちない挨拶になってしまった。 いつものカウンター席に座りコーヒーを頼むと、彼はテキパキと用意し始めた。 「お待たせしました、どうぞ。」 「ありがとうございます。」 いつもだったらマスターが他愛もない話をもちかけたりもしてくれるが、今日はマスターがいないので、そんなこともない。 沈黙が
「うぁ~~!!もうだめだっ!!」 顕微鏡から目を離し、シャーレを机に置く。 そこには、結果を残せなかったシャーレたちが、また仲間が来たぞと言わんばかりに待ち構えていた。 「はぁ・・・」 何か月、同じ作業しているんだか・・・。 大学で生物学を学んでいたため、そのまま院に上がり「糖」の研究をして1年半。こんなにも孤独と地道な戦いだとは思わなかった。学部生の頃が懐かしい。 そもそも、学部4年だけでよかったものの就職難もあり、流れで院にあがってしまったとは間違っても声に出して
ちょうど一ヶ月ほど前 そう、その日も急なゲリラ雷雨で、雨が激しく降っていた。 全然効果のない傘を差しながらの帰り道、急に取引先から電話がかかってきてこの十字路で止まり、電話を取った。 内容はいつものように、クライアントからのほぼクレームのような問い合わせ。 「承知しました、失礼します。 、、、ったく、なんでこんな大雨の日に、しかも、こんな時間に電話かけてくんだよ。」 電話を切るころには、雨でびしょびしょになった革靴さえも気にならないくらい、疲れ切っていた。 ふと、顔を