歯医者にて
今日は、歯医者の日。
息子くんが預けられず、大人しくしておくように言い聞かせて連れて行った。
まあ、大人しくなんかしてるわけないのだが、長い待ち時間もよく耐えてくれた。
そして順番となり、診察台に上がり、その診察台の前に小さな子供用椅子を用意してもらい、そこへ息子くんが座った。
お医者さんが来るまで、しばし、見つめあう。
その息子の目が診察室の色々なものの観察を始めた。
隣の診察台のばあさんが、入れ歯の型取りのためになんだかすごいものを歯にくっつけたまま、大口開けて、虚空を見ている。
その向こうの診察台からは歯を削るドリルの音と、唾を吸うバキュームの大きな音がする。
ゆっくりとその視線が私のものへ帰って来た。
そして、こう言った。
すごい。
なんの強がりなのかよく分からないけど、
この恐怖空間で、私を怖がらせないように笑顔を作りつつ、俺は逃げると宣言してみせた。
なんせ、まだ生まれて3年しか経ってないのでいろんな感情がウラハラなのだが、男としての矜持を垣間見る思いだ。守るべき私のために強い自分を見せてくれた。
そうそう、男の子って強いんだよなあ。
小学生の頃、クラスの男子のこういうところに憧れた。
よかった、私の息子はいい男だ。
その後、逃亡をはかろうしたところで、めっちゃ可愛い歯科助手さんによって言いくるめられ、最後まで機嫌よく待って居てくれた。
しかし、歯医者に必ずかわい子ちゃんがいるっつーのはなんの力が働いてのことなんだろうか。しばらく通うことになりそうなので、おいおい検証していきたいと思う。
「かわい子ちゃんにはよわいけど」というのは、怪物くんしかり、ルパン三世にしかり、昭和生まれ世代には堪らない、いい男の条件だ。
よしよし、素質はあるぞ。
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