ワンピース感想めいた羅列

ONE PIECEがグランドライン前半編まで無料公開されている。
現在の少年漫画界において文句のつけようがなく最強の作品と称してなんら嘘にならない一作であり、基本から上等なとこまで色々創作技法が凝らされているに違いないのである。

一方で当然そんな最強漫画なのでONE PIECEの知名度は高い。
「私漫画とかよく読むんですよ〜ONE PIECEとか〜」と言われた場合、そいつがどこまで読み込んでるかわからないので警戒モードに入る。
テキトーにアニメを流してる人なのか、ネットの悪意に使ってエースを敗北者と笑うような輩なのかガチオタでゲーム版にだけ出て来る悪魔の実まで知ってる奴なのか全くわからない。
……話が逸れた。とにかく、漫画といえばワンピ、みたいな人は多いわけで、つまりワンピが凄いことをしてたとしても、呼吸するようにやってるせいでそれが「凄いこと」であるのは全然わからないのである。

しかし私はここしばらく修行を積んだ。具体的に言うとWeb小説コミカライズに突撃し爆死し悟りを得たのと、ジャンプ本誌を購読して打ち切り漫画に触れた。つまり「漫画で感動や興奮はしないのが普通」と言う悲しいことを知った。故にワンピを読んで「ここうまいなー」「ここぐっとくるなー」と思ったところは全部技法の結果だと思うことができるのである。

と言うわけで、以下、感想と呼ぶにもあれな羅列はっじまっるよー。
とりあえず全部やると長くなりすぎるのでまずウソップ仲間入りまでです。

第一話
・「おれのパンチはピストルのように強いんだ」ルフィの代表技がゴムゴムのピストルというのは有名だが、この大言壮語をあとで本当にしたんだなあ
・と言うか、幼い頃の思い出の話なので、ルフィの素朴さ幼さ格好つけようとしてるけどあんまり格好良くなれてなさが強いなこれ。ただ無謀なことができれば格好いいわけではない。バカにされたことにキレても格好良くない。
・そしてマキノさんが「あんな事されても平気で笑ってられるほうがかっこいいと思う」というので、この作品における「格好よさ」はこの時点ではっきりとさせられてるんだな。
・自分のためだけに怒らない。仲間のためには怒るって「格好いい大人の男」だよなあ。
・逆に自分のプライドのためだけに脅したり子供ボコったりする山賊はダサい。悪役だ。
・キャラのいいところを見せるために、それの真反対なキャラを悪役として出して来るのは自然と比較が行われるのでわかりやすいね。
・未熟さが強調されてる子供の頃のルフィも「他人のために怒る」奴なんだ、と言うのを示してるの、成長後の期待を持たせてくれていいなあ。
・絶体絶命のところに誰かが助けに来てくれるのは興奮できる。
・「腕が!!!」のところは編集さんに心を揺さぶるようなところが欲しい、と言われたからだそうだけど、実際効果が出ている。
・主人公のオリジンとして「格好いい憧れの人」を出しておくの、「強くなりたい」の理由として効果的だなあ。憧れ。
・「約束がある」のも主人公の動機として強い。
・弱かった頃の自分の象徴である近海のヌシを倒して外に出る、「彼はもう立派に成長したのだ」という印象として強い。
・「海賊王に俺はなる!!!」決め台詞があることは印象づけとして強い。
・「海賊王」。目指す夢に名前があるのも印象づけとして強い。

アルビダ編
・臆病者が勇気を出すって言うのはぐっとくるパターンだよね
・強い夢や覚悟を持ったキャラの利点は、関わった人にも勇気を出してみたいと思わせることだな…
・臆病者が勇気を出した程度でそこにある困難に即勝てるようになったりはしないが、勇気を出すのを見たら「勝って欲しい」と思うわけで、そこで代わりに勝ってくれるのが、強い主人公の役目なのだなあ
・偉大なる航路、まず第一目的地が存在しているのは短期目標としていいし、そしてそこがゴールじゃなくて旅のルートそのものの名前なのいいなあ

モーガン編
・海軍に初期からエンブレムと制服設定しているの、ちゃんとしている
・約束を守る気がない奴はわかりやすい悪。
・ショート回想を挟むとキャラの過去が伝わってそれによってその瞬間の感情がわかりやすくなるんだな

バギー編
・キャラクター同士を引き離して単独行動をさせる、トラブルに巻き込ませる前提として大事だな…(今後のこと思い返すとゾロとルフィが揃ってると大抵腕力でどうにかなるので)
・ルフィの格好よさは「覚悟を決めているところ」だと言うのが一貫していて、序盤のエピソードはだいたいそれを印象付けている感触。
・ナミがバギーに歯向かうことを決めたのも、コビーの時同様、覚悟決めてるルフィによる感化だよなあ
・絶体絶命にゾロ登場。キャラクター同士を引き離して探させておくと、窮地に助けの手が来ても自然なんだな。
・ルフィを檻に閉じ込めている、「戦えない」状態にすることで、戦えば勝てる相手と戦えず逃げないといけない理由を作ってるんだな。
・バギーたちとはこの時点ではちょっと殺されそうになっただけで戦う理由が存在してないので、逃げた先で新キャラ(犬)と出会って、さっき足りなかった戦う理由を外部補充してるのか。
・1話の時点で「自分のプライドだけの為に戦うことはないが、自分が認めた奴の為になら戦える」男を格好いい姿として置いてるので、戦いに赴く理由としてルフィが認めてそいつの誇りを守ってやりたくなる誰かを用意すると。
・1コマで済むショート回想をしっかり挟み込むことで、ここで出会ったばっかで喋ることもない犬なのにその背景の重さをしっかり読者に伝えてる技
・犬のことを話してくれたおっさんのセリフを想起させることで、ルフィのモノローグすら使わずにバギーの手下がどれだけ酷いことをやってるのかを意識させる技
・このエピソード、「そいつにとって宝とは何か」の話なんだな。宝とは金銭的価値だと思ってるのがバギーとナミ。宝とはそいつの大切なものだと思ってる町長とルフィ。
・ルフィたちはアウトローなので大きく褒められることはないし、けれどルフィはそれを気にしないで笑ってるし、そしてその場にいた人たちと読者はこいつらがいい奴であることを知っている。ワンピの基本構造。

ガイモンさん
・短編として綺麗に収まっているけど、話全体にとってはこれ世界観説明回だったんだな

ウソップ編
・ウソップのウソ、別に伏線と言うほどのものではないのだけど、話にだけ聞いたものが本当に後に出てくるというのは盛り上がるポイントなんだよな
・ワンピース、ファンタジーなのでウソップのウソみたいな奴が後々出て来たりもするんだが、そういう夢物語めいたものを実際に出してこれるの、強いファンタジーだよなあ
・「立派だと思うから手を貸すんだ」「同情なんかで命懸けるか」、ワンピの格好いい奴らが他人のために戦う理由そのもの。
・実は悪かった奴が悪いモードに入る時は多少わざとらしく先走りすぎって感じでも、そいつを信じてた人の信頼を踏みにじって悪い奴だとはっきりさせる、わかりやすい
・敵の上陸場所を見誤ってた、これもキャラ同士を引き離してウソップがボコられつつも意地をはるところを見せた上で後からいいタイミングで強い二人がやってくるシーンを作るためのフリなんだな
・ゾロが刀奪われたり、ルフィが催眠術で眠ってしまったり、戦いを一瞬で終わらせないため、強いこの二人を万全に動かさないための工夫がされてるな…ゾロなんて刀回収したら一撃でニャーバンブラザーズを倒しちゃったし…
・勇気を見せた人に感化されて勇気を出すと言うのはいいシチュだが、今回の勇気はウソップ→カヤ&たまねぎ達で、ウソップもまた人を感化できる勇気ある男であることがわかる
・ルフィは認めた奴のために戦うので、ルフィに直接助けられる奴は勇気を見せるのが必須なのだなあ
・珍しくルフィがマジの目で「殺す」とか言って怒るシーンだが、人の勇気を笑う奴がルフィにとって許せないものなのだなあ
・「死なせたくない男がこの村にいるから」、ほぼ部外者であるルフィが何故戦ってるのかの理由の再確認
・「野望のデカさならおれの方が上だ!」夢バトルだ……
・仲間すら大事にしねえ奴vs友人を大事にしてる奴&出会ったばかりだけど認めた男のために戦える奴、の戦いなんだなこれは
・バカみたいな習慣の裏にエモい過去が存在してた、ぐっとくる


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