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メンターの話#11 【ワンナイトの法則】

こんにちは、メンターのあおたです。
前々回は「エントロピー増大の法則」という熱力学の法則を紹介し、それが熱力学のみならず身近な事柄にも当てはまりうる可能性を指摘しました。

今回はその第2回とも言える「僕の考える法則シリーズ」です。


前もって言っておきますが、これから話すのは科学の法則を拡大解釈するもので、必ずしも成り立つとは言えません。が、少なくとも科学ではみられる現象かつ、この世界全体を支配する法則として十分可能性がありそうものを選んでいるので、聞いてもらえればと思います。


 大学生になると聞く頻度が増える言葉のひとつにワンナイトという言葉があります。深夜バラエティでもたまに聞きますね。
これは異性と一晩だけ体の関係を持つことを指す単語です。あ、今回はそういう話じゃないので安心して聞いてください。

そこで一度関係をもってしまうと、片方がもう片方を好きになってしまうことがしばしばあります。そういう話を割と聞くので多分結構あるんじゃないかなと思っています。でも、残念ながらそれで好きになったとしてもそういう恋愛は成就しにくいんだそうです。これを念頭にこれからの話を聞いてみてください。

 さて、もともと実験で見られるこの現象はよくガラスで観察できます。

みなさんは炭酸水素ナトリウムの熱分解の実験を覚えていますか?
下に貼った画像を見れば、何となく記憶が蘇るんじゃないでしょうか。この実験は炭酸水素ナトリウムという物質を熱によって分解したら、何ができるかな?的な実験です。
今回はその内容はメインではないので省きますね。

注目してもらいたいのは、その内容ではなく注意①です。

注意①「試験管の口を下げてから、加熱する」

とありますね。なぜ下げなければいけないのか
ここに今回の主旨があります。

 実は炭酸水素ナトリウムが熱分解されると炭酸ナトリウムと二酸化炭素、そして水に分かれます。水は熱分解された直後は、熱されているので気体の状態で存在しますが、入り口付近まできて冷やされると液体になります。そのため、水が試験管の入り口に溜まり始めます。

この説明でピンと来なかった人は、

「この実験をすると水が試験管の入り口に溜まる」

ということだけ覚えてください。

 もし試験管を傾けていないと、この水が試験管の加熱部分に流れ込みます。すると試験管が割れてしまうんですね。だから傾けないといけないというわけです。

この現象を順を追って説明しましょう。
まず、試験管がめちゃ熱くなっているところに、冷たい水が流れ込むため試験管のガラスが急激に冷やされます。

ここで科学の知識なのですが、
基本的に物質は熱されると膨張し、冷やされると縮みます。
ジャムの蓋が開かない時に熱湯につけると開きやすくなるのは、金属の蓋が大きくなって締まりが緩くなるからです。それと同じことがあらゆる物質で成り立つと思ってください。試験管のガラスでも同じことが起きます。

図:冷やされたガラスくんの図

熱されたガラスは少しずつ膨張します。いきなり熱くなったりはしませんからね。
しかし、そこに水が流れ込んできたらどうでしょうか。
これまでの温度変化とは異なり急激に冷やされます。焚き火に水をかけたらジュって消えるイメージです。温度変化が急であるほど、縮む力も強くなりその力に耐えられずにガラスが割れてしまうというわけですね(図)。

これは逆でも然りです。急激に熱せられた場合、膨張が急速に進むため同様の現象が起きます。これは耐熱性のないガラスのコップにいきなり熱湯を注ぐと割れる現象で確認できます(絶対やらないでね!)。


 とまあ、この現象で何が言いたいかっていうと

急激な変化は何かしらのエラーをもたらしうる

ってことです。
さっきのワンナイトを思い出してみてください。

本来適切な手順を踏んでから行うことを、デートとか色々すっとばしてやっちゃってるわけです。
これも人間関係における急激な変化とも言えますね。その結果、相手を好きになっても恋愛が成就しにくい。
すなわち、行き着く先は一緒だったのにエラーが生じているわけです。

ほら、ちょっと似てませんか。
他にも、例はたくさんあります。

一夜づけで勉強した結果、あんまり覚えてない上、コンディションが芳しくなく、結果が良くなかったとか。
早稲田大学の研究では、短期間で猛烈な筋トレ(週 130~140分以上)をすると総死亡・心血管疾患・がんのリスクが高くなることがわかっています。

もちろん個人レベルだけでなく、社会レベルでも言えそうです。

日本が戦後急速な経済成長を遂げたことはご存じの方も多いと思います(「もはや戦後ではない」は有名ですね)。
しかし、その代償として数々の環境問題や公害が発生しました。
今すぐ気候変動の原因となるCO2を減らさなければいけないからと、CO2の削減目標を46%にしましたが、「それでは経済が停滞する」「不可能だ」などの声があがりました。CO2の急速な削減は経済にとっては破壊的ダメージがあることが窺えます。革命も、多くの命の犠牲があって急激な国家の方針転換をするものですから、この好例と言えるでしょう。

 このように、さまざまな規模感、分野、出来事からこの法則が言えそうな気がしています。ね、結構すごくない?笑 

ですから、僕は急速な変化が起きる時にはどのような問題が生じうるか、もう既に生じてしまったのかを注視しています。
だから、急速に何かを変革しようとする社会変革や法改正などには基本的には賛同しかねています。緊急性のある課題も多いので、一概にダメなわけではないのですが、注意が必要だとは思います。

人間、自分が取り組んでいる課題の緊急性を説明したくなるものですが、一旦その変革の裏に潜んでいるリスクについて考えてもいいかもしれません。

執筆 メンター:あおた
編集 メンター:仁珠

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