ひとり問う 6 -夏の静かさ


夏はどんなイメージですか?

 僕の中では灼熱地獄、そして故人を最も想う余韻の季節。墓参りは基本夏ですしね。こんなに明るい時期なのに、やってることは暗い。だけど、どこか晴れ晴れした気持ちになるわけです。
 さて、そんな夏の作品のイメージとして僕の中に強いものがあります。
 勘の強い方はお気付きかと思います。
 そう……


機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-

スパロボVはめっちゃ泣いた

 機動戦艦ナデシコの劇場版の本作ですが、作風ががらりと変わり結構シリアスです。まあ、ナデシコのTV時代もコミカルな作風でやってることは激オモでしたが。
 晴れてユリカと結婚して、ルリを引き取り平和に生きるアキトでしたが持ち前のA級ジャンパーとしての能力のせいで木星の連中にユリカ共々拉致されて人体実験されます。
 ユリカは生体CPUにされて、アキトはなんとか逃げるものの脳の中いじられすぎて味覚を失った上に感情が昂ると光ります。マンガみたいだろ?
 アキトは劇場版本編始まる前にコックとしての自分と最愛の人を失ってるわけです。そんな木星連中に復讐するため堕ちたアキトが復讐を果たすのが本編です。
 ちなみに、ラストの戦闘シーンの一瞬の回想でアキトの思い出の中のユリカがとても美人な上にしっかりとアキトを見ている演出は気づいた瞬間に泣きました。

復讐は汚れている

 この作品のラストでアキトは復讐を果たして、最愛のユリカを生体CPUから人間に戻せたわけですが何も告げずにどこかへ消えます。ルリがそんなアキトを探し出すと宣言して終わります。
 続編はまだですか?
 
 
この作品、劇場版なので大した長さじゃないんですよ。なのに、圧倒的な量の想像を掻き立てられる作品だったりします。
 まず、TV版との落差がすごいんです。ナデシコってラブコメみたいな作品でもあるので、アキトとユリカがイチャイチャして気付けば丸く収まってたんですよね。ヒロインであるユリカの
「アキトは私が好き!」(私はアキトが好きではない)
 が最後の最後で回収されて、「愛ってすごいね」ってオチになるのも好きです。愛といえばイネスさんの正体が物語冒頭でアキトが救えなかったアイちゃんと言うのも衝撃でした。
 正直、イネスさんのイメージは現代ではガンダムWのパイロットたちになぜなにナデシコを提供してくれるおばさんです。
 
 話を戻して、暗い設定の中で明るくやってたTV本編と違って劇場版は本当にキツいんですよ。まず、ユリカとアキトは旅行中の事故で死んだことになってます。これも木星側が攫うための偽装なんですが。そのせいでルリはひとりぼっちになり、そんなルリよりも復讐を優先してアキトは人知れず鬼となっています。
 ブラック・サレナという機体が重装甲かつ高機動でゴツくてかっこいいんですが、実はこれもちゃんとした背景があります。
 アキトは復讐のため自らの機体(エステバリス)を駆るわけですが、木星の連中がやたらと強くて勝てないわけです。じゃあ武器積めばいいやと積んだら負けて、じゃあ撃たれてもいいように装甲厚くしよう、武器は体当たりにして当たるように速くしようと試行錯誤の果てにできた「復讐専用ブチギレマシーン」になってるわけです。
 山ちゃんも言ってます。
「たとえ鎧を纏おうと、心の弱さは守れないのだ」
 アキトは主人公ですが、ぶっちゃけ弱いです。なにせパイロットじゃなくてコックですので。じゃあ、なんでパイロットやってんの?と言うと、アキトはたまたまエステバリスを動かせるナノマシンを体内に埋め込み済みだっただけです。
 なので、作中の他のパイロット達と比べて本当に弱いです。正確にはふざけたお転婆娘達が常軌を逸して強いのですが。
 このブラックサレナが最後の最後に目から油を垂れ流して泣いてるように見えるシーンは名シーンとして有名です。
 愛する人との日常を破壊された男が、復讐の鬼と化し悲願を遂げるものの日常は戻らないことを嘆く涙です。


救済

 人気すごいんですよ、ナデシコ。スパロボ参戦すると大体救われます。特に僕の好きなのはスパロボVです。アキトが木星の連中に「決着つけるから決闘な、1人で来い」と言われて単独決闘するわけですが、木星側にそんなこと守るメリットなんてありません。当然罠です。
 ドヤ顔でアキトを囲む木星連中。そこに仲間たちが駆けつける。
「約束が違うぞ!」と怒る木星側。そしてアキトが返すのは
俺は愛する人に会うためならば、たとえ泥を啜ってでも生きてやる
 かっこよすぎます。ちなみに、このかっこよさに女性陣は惚れ惚れしちゃいます。
 そして、アキトのピンチに駆けつけるナデシコ。そのナデシコの艦長は……
あなたのお嫁さんのユリカだよ!
 めちゃくちゃ泣きました。
 アキトってユリカに引っ張ってもらい続けた男の子なんですよ。だから、この復讐の鬼となったアキトも引っ張って行こうとするユリカには涙が止まりませんでした。
 復讐、人を殺すために生きた男が、復讐を超えて愛する人のために生きようとする話でした。

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