個人的幕末3大イケメン 〜 高杉晋作 「おもしろきこともなき世をおもしろく」

幕末ナンバーワンのイケメンといえば、なんと言っても土方歳三だろう。有名な軍服姿の写真を見れば誰もが納得である。私も土方は大好きだが、ここでは個人的趣味で選んだイケメン達について語りたい。

まず長州の高杉晋作。彼は他の幕末に活躍した多くの志士達と少し違い、長州藩譜代の家柄に生まれ、若くから藩主毛利元徳の信頼も厚かったといういわばエリートだった。例えば坂本龍馬などが藩主にお目見えなんて考えられない身分だった中で(西郷どんはちょっと特殊だが)異色と言って良い。

有名な吉田松陰の松下村塾で久坂玄瑞らと学んだ後、江戸遊学を経て上海に洋行し、そこでアヘン戦争により欧米に牛耳られる清国の惨状をまざまざと見ることになる。帰国後、その欧米との下関戦争敗戦時に交渉係となった彼が、領土の租借要求を断固としてはねつけたのも、この実体験があったからだろう。そして賠償金の要求もちゃっかり幕府に肩代わりさせるという離れ業もやってのけた。高杉が奇兵隊という武士以外からなる部隊を作ったのは誰もが知るところだが、それも下関戦争の経験から、これからの戦いは刀ではなく火器であり、それなら必ずしも武士の出である必要はない、という武士らしからぬ革新的な考え方を持っていたからだろう。

その後長州藩が保守派に乗っ取られるとクーデターを起こして保守派を一掃、反幕府の姿勢を強固にする。幕府が軍艦4隻で長州に攻め入って来た時は、船一艘で夜中に奇襲をかけ、討ち払うシーン(司馬遼太郎著「世に棲む日日」より)は爽快で胸がすく思いがする。

それから程なく高杉は大政奉還を見ることなく、29歳の若さで結核で世を去ることになる。

有名な辞世の句が「おもしろきこともなき世をおもしろく住みなすものは心なりけり」だ。下の句は高杉自身ではなく、野村望東尼という尼僧が読んだという説が強いが、真偽は不明だ。だが確かに「住みなすものは心なりけり」と繋げると、よく出来た句ではあるが、高杉の破天荒なイメージにそぐわない気はする。彼の魅力は普通にしていれば藩で重用され、何不自由なく暮らせた身でありながら、自ら既成の事実をぶち壊し、最後には若くしてこの世を去る、という絵に描いたような波乱の生涯にある。まるで桜のように清々しいほど潔く散って行ったのだ。

彼の現存するざんぎり頭の写真はいわゆる美形ではないが、味がある顔をしている。そう、「おもしろきこともなき世をおもしろく」生きた男の顔である。

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