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A day in Miyazaki.

宮崎に引っ越して2ヶ月がたった。

夏のど真ん中に来て、気づけば今は秋にさしかかり、柔らかい夜風が優しく部屋を通り抜ける。

当初はホステルの物件もほぼ決まりかけていて、事業計画書、収支計算書から部屋のレイアウトの資料作成に没頭していた。

役所、銀行や国政金融公庫、宮崎に移住して起業した人たちなど、あらゆるところで融資や創業の相談をしていた。
何もかもが初めてで、相談しに行く前は会話に詰まらないように専門用語をGoogleで調べて、少しでも不安と緊張に膜を張ってから行っていた。けどみんな、こんな若者の話を親身に、かつ興味深く聞いてくれて、少し嬉しかったのを覚えている。

さあ、資料を完璧に仕上げて、なんとか資金調達をして、施工に入ってと、このままトントン拍子で進んでいくのかと思っていた矢先、僕はその物件を見逃すことにした。

理由はいろいろあるが、流れに身をまかせることがコンセプトの宿なので、今回はその流れに逆らわないでおこうと決めた。

実際、その物件は駅から歩いて10分。海までは歩いてたったの10秒で行け、隣には大正時代に建てられた古民家を改装したヨガスタジオ兼サーフショップ。収容人数も考えていた数に近く、これらの条件なら理想に限りなく近いものだった。

当時の僕は「マーケットは待ってくれないし、とにかく1番に作らなきゃいけない。他にいい物件の情報も聞かないし、次に新しいのを見つけるのはいつになるか分からない。ここに決めなきゃ他の誰かが先にどこかで作ってしまうんじゃないか。」と、まだ何も始まっていないのに、姿もないものに対する不安と焦りがあった。

自分では気づいてなかったが、知らずのうちにあれだけ興味のなかった「競争」のゾーンに入っていたんだと思う。


結局その物件は見送りになり、またイチから物件探しが始まったとき、最初に宮崎に来た時にホステルの話を一番親身に聞いてくれた不動産屋さんに連絡した。

僕のステータスなど関係なしに、ひとりの人として接してくれる気持ちのいい方。
諸々の出来事を説明して、物件の調査をお願いした。
「なかなか物件がないからねぇ。難しいけどまた頑張ってみましょう。」と、なかなか先の見えない未来に焦りもあったが、今回はそれも楽しんでいこうと決めていた。


すると、「あっ。そういえば、ちょっと車じゃ入りづらいところだけど、今は全然使われていない物件があったような。住所教えてあげるから見に行ってみる?」


すぐに車を走らせ、夕暮れ時に見に行った。

ちょうど日が暮れかかったマジックアワーだったからかもしれないが、住所に記されていたその物件は、大きな庭があり、不思議な柔らかさと空気の大きさと生命力の気を感じた。

来て欲しい人たちが、一緒に働いているスタッフが笑っている姿が見えた。


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「田代さん、こんなことはあんまり前例にないけどやってみましょうか。私もあなたの推薦状を書きます。」

そこはまだ賃貸にも売りにも出されておらず、ただ家主さんが長年保有している建物。だから家主さんへお手紙を送り、もしお会いできることになったら直接交渉で決まる。不動産屋さんもやったことのない特殊なものだった。
見ず知らずの若者が突然「あなたの物件を使わせてください!」なんて聞いたことない。だけど、こういうのはドラマがあっていい。


「最初に言っておきますが、ほとんどのケースはお手紙の返事すらいただけません。けど、私は田代さんの可能性を感じている。一緒に頑張りましょう。」


Make a drama.
やったるで。

要するに何が言いたいかというと、僕は近所のおばあちゃんと毎週ランチデートしてるってことです。


サポートしていただけると大変嬉しいです! いただいたサポートはありがたく、キャンパー製作やサーフフォト撮影、家のセルフビルドなど僕の今後の活動に使わせていただきます。