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心を開くこと

先日の記事「向き合いたい自分の課題」で書いたように、ぼくにとって「心を開くこと」は最近の重要なテーマであった。

もっと心を開いて人と接するようにしないと、どんどん孤立してしまう。チャンスも逃してしまう。そんな恐怖心を抱き、「人からの誘いに、もう少し積極的に乗っかっていこう」と決意をしたのだった。

「洋太さん、久しぶりにランチでも行きませんか?」

前職の後輩からLINEが届いたのは、まさにそう決意した矢先のことだった。そんなに近い距離感で接していたわけでもない後輩からの突然の連絡だったので、直感で「怪しい」と思った。そもそもLINE友達ですらなかったので、まずメッセージを許可するところから始まったくらいの関係性である。「久しぶりに」どころか、一緒にご飯に行った記憶もない。保険か何かの営業でもされるんじゃないか。そう思っていると、彼が転職し、現在は保険会社で働いているらしいことがわかった。ますます雲行きが怪しくなってきた。

それでも誘いを断らなかったのは、上に書いたように、「心を開こう」と決めていたからだった。幸い、1対1ではなく、ぼくの親しい同期も来てくれることになった。そして今日、3人で日比谷でランチをした。

そしたら案の定、保険の営業だった。直感は当たる。「洋太さんは別に保険に入っていただかなくて大丈夫です。その代わり、早稲田や大手企業のお知り合いを紹介してほしいんです」という頼みだった。ぼくは、何かを営業・勧誘されることと、自分が気に入ってもいないサービスや商品のために大切な友人や知人を紹介することが、はっきり言って大嫌いである。相手が好きか嫌いかの問題ではない。たとえもっと親しい友人からであっても、営業や、営利目的に人を紹介することは嫌なのだ。後輩には申し訳ないけど。

だから辛かった。せっかく心を開いてやってきたのに! やっぱり最初から来なければ良かったんじゃないか。お店を出るまではそう思っていた。

でも、そこから状況は思わぬ展開を見せた。同期が何気なく、「せっかくだからちょっと会社に寄ってけよ」と誘ってくれたのだ。ぼくは退職以来、会社に遊びに行ったりはしなかったから、少し不安もあった。あまり良い顔をされなかったらどうしよう、と。でもここでも「心を開こう」を意識し、思い切って行ってみることにした。

そしたら思いがけず、編集部時代の元上司と再会した。退職以来、5年半ぶり。正直、嬉しかった。10分程度の立ち話だったが、積もる話があった。お世話になった方だったし、近況も知りたかったし、自分がフリーランスとしてなんとか元気に生きていることも伝えたかった。「仕事に困ったらいつでも連絡しろよ」と言っていただけたのも嬉しかった。

その後、さらに意外な展開があった。帰ってきてカフェで本を読んでいると、さっき再会した元上司から突然電話がかかってきた。すると、「明日こういう記者会見があるんだけど、もし空いてたら俺の代わりに行ってくれない?」という話だった。仕事ではないが、悪い話でもなかった。というか、こういう「思わぬ展開」から人生が開けてきたぼくにとって、それは懐かしい感覚だった。「なんだか面白いことになってきたぞ?」と思った。ある人とたまたま出会ったことによって、ぼくの明日の行動が変わるのだ。偶発的な人生。素敵じゃないか。

だけどここで、改めて考えてみると、ますます「心を開く」ことの難しさを感じる。だって、ぼくは心を開いてランチに出向いた結果、嫌な目にも遭ったし、良い展開にも恵まれたから。両方が同時にやってきた。できることなら、嫌な目には遭わずに、チャンスだけモノにしたかった。でも、そうおいしいことばかりでもないようだ。

ただ、少なくともひとつ言えることは、もし最初から心を閉ざしてランチの誘いを断っていたら、保険の営業をされることはなかったにしても、同時に元上司と再会を果たすことも、それがきっかけで明日の行動が変わることもなかったのだ。改めて、どちらの選択肢が良かったかと問われると、明日の行動が変わる方が素敵かもしれない。何も変わらない日常よりは、少しでも変化がついた方が未来に可能性が生まれる。それに、動いていた方が運も上がる気がする。

だから現時点での結論は、「勇気を出して心を開いても、嫌な目に遭うことはどうしてもある。でも、きっとそれを上回る良いこともあるから、一時の感情に負けるな!」である。明日もまた、心を開いていよう。

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