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大阪〜博多600km徒歩の旅(28)福岡県北九州市〜宗像市

大阪から博多へ 山陽道600km徒歩の旅
第28ステージ
福岡県北九州市〜福岡県宗像市(25km)

窓にザーッと横殴りで打ちつける雨の音で目が覚めた。北九州には強風注意報が出ていた。おまけにこの大雨。今日ほど電車で移動したいと思った日はない。

喉の痛みもまだ治らないなかで、この雨のなか、傘も刺さずに6〜7時間も歩くというのは、本当に億劫だった。

しかし明日博多にゴールできるかどうかは、今日にかかっている。

「中村さんね、動いてると運が上がるんだよ。止まってたら運はマイナスになっちゃう」

昔、カナダのツアーに添乗したときのお客さんが何気なく言っていた言葉を、こういうときふと思い出す。

この逆境のなかでも、行けるところまで行ってみよう。ホテルでじっとしているよりも、動いていれば運が味方してくれる気がした。

ホテルの朝食(カレーがおいしかった)を取って、10時に黒崎駅を出発。25km先の宗像市を目指す。

まあ本当に雨が強いこと。レインウェアが最後まで持ってくれることを願う。水が染み込んできたら最悪。

5km歩いて、途中のマクドナルドでひと休み。そしたらテレビ局の方から電話がかかってきて、なんと明日、博多にゴールするまでを密着取材されることになった。なおさら頑張らねばならない。

その後もひたすら歩き、10km歩いたところの遠賀川駅近くのモスバーガーでランチ休憩。ひとまず、生きながらえた。やっぱり今日がこの旅でいちばんキツい。

食べ終わって、残り15km。モスバーガーから出ると、奇跡的に雨が上がっていた。1時間ばかりのボーナスタイムだった。音楽を聴きながら田舎道を気分良く歩いた。

海老津駅を通過し、峠道に進んでいく。また雨が降ってきた。

しばらく歩いて峠を越えると、「ここは絶対違うだろ」という広大な作業現場に着いてしまった。

「小西砕石工業所」と書いてあり、事務所みたいなところがある。

作業場だとしたら、道は行き止まり?

「今来た道を2km引き返さないといけないのか?」という最悪の思いがよぎったが、冷静に地図を確認すると、やっぱりここが「経路の途中」になっていた。

事務所にいた方に、「国道3号線に出たいんですが」と尋ねると、「ああ、そしたらこっちだよ」と抜け道を教えてくれた。やはり間違ってはいなかったのだ。

なんとか危機を回避し、峠を降り、国道3号線に復帰した。

その先のマクドナルドでまた小休憩。すると、またテレビ局の方から電話がかかってきた。「後ほどラジオ局からもご連絡があると思うので」とのことだった。なんだかすごい展開になってきた。

そこから残り6kmを歩き切り、ゴールの「チサンイン宗像」というホテルに到着した。キツかったけど、無事に乗り越えられて良かった。

そしてホテルまで会いに来てくださったのが、宗像市在住の松久保さんである。

ぼくは、この旅を計画するまで、宗像市のことすら知らなかった。だからまさか、知人はもちろん、ぼくの周囲に宗像市在住の方がいるとも思っていなかった。そしたら、いたのだ。

松久保さんとは4年ほど前に、一度Xでやりとりをしたことがあった。

ぼくと彼の共通点、それは「病気」である。ぼくは2019年に、「特発性後天性全身性無汗症」という、汗が出なくなる珍しい難病にかかった。治るまでに半年以上かかり、その頃は「もう二度と運動や旅行はできないかも」と覚悟したこともあったのだが、幸い回復し、今では普通に汗が出るし、このとおり過酷な徒歩旅行をしている。

闘病生活で苦しんでいたとき、自分の心を支えたのは、「この病気から治ったとき、発症から回復までのプロセスを記事にして、同じようにこの病気で苦しむ人たちの助けになろう」という想いだった。この病気の患者が少なく、ほとんどネットに患者視点の情報がなかったから、自分がそれを書こうと思ったのだ。そして実際にnoteに書いたところ、多くの方が読んでくれるようになり、また感謝のメッセージもたくさん届くようになった。

松久保さんもまた、ぼくと同じ病気で苦しんでいた最中、記事を読んでくれて、治療の参考にしてくれたのだという(現在では彼も完治)。その関係で4年前に少しやりとりをしたのだが、彼が奇遇にも宗像市に住んでいて、「宗像にいらしたら食事と温泉にお連れしたい」と突然連絡をくださったのだ。

それで、ありがたく連れていっていただくことにして、ホテルにチェックインして荷物を置いて、すぐに彼の車で「やまつばさ」という温泉施設に行った。

先に施設内のレストランで夕食を取りながら、いろいろとお話を伺った。彼はかつてカリフォルニア州サンタバーバラの大学に留学していたことがあるそうだ。ぼくはアメリカ縦断自転車旅の際にサンタバーバラを通ったので、街の景色を思い出しながら懐かしくなった。

そして源泉かけ流しの温泉も素晴らしかった。露天風呂やサウナは広々としていて、サウナ後の水風呂と外気浴が心地良かった。

こんな場所でぼくを知る方とお会いできたのが嬉しかった。別れ際には、交通安全に効果バツグンという「宗像大社」の御守りもいただいた。松久保さん、おもてなししていただきありがとうございました!

少し寂しいが、この旅も明日で終わってしまう。16時半~17時頃の博多駅(博多口)到着を目指し、最後の30kmを楽しみたい。

<今日の費用>
水 105円
マック 240円
ドリンク 179円
ランチ 870円
水 116円
ホテル 5737円

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