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ポジティブな飢え
添削仕事を終えて、コワーキングスペースで音楽を聴きながら村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』を読んでいると、突然ものすごい空腹感に襲われた。まだ16時半。朝ごはんを食べないのはよくあることだが、今日は昼食も小さなカップラーメンひとつだった。だから早くお腹が空いた。なぜカップラーメンだけだったかと言うと、いつも食べているようなお店のランチ(大抵はごはん大盛り)を我慢したからだ。札幌でたくさん食べた分、少しセーブしなきゃ、という気持ちもあったけれど、節約のため、という理由がより強い。
ぼくはここ最近、好きなことばかりしている。札幌へ行って、人と会い、おいしいものを食べ回っていた。そしてランニングをし、書きたいことを書いた。夜はぐっすり眠った。特段ストレスもない。
しかしもちろん、いつまでもそういう生活ができると約束されているわけではない。当然、お金は減っていく。旅をして文章を書いて、それだけで食べていけたら嬉しいけど、残念ながらまだそれは実現できていない。ただ、実現に向けての努力はしたいし、その努力のために味わう空腹感は、決して悪いものではないなと、リュックに入れていたグラノーラをポリポリと食べながらふと思った。どこか心地良さのある空腹感だった。それはぼくに初心を感じさせた。高校生や大学生の頃にも味わったことのある空腹感だった。サッカーがうまくなりたくて、暗くなるまでボールを蹴り続けていたときと同じポジテイブな飢えだった。
ぼくは、もう少し今の家に住みたい。ちゃんと掃除をして、快適に過ごしたい。家賃を払って、旅行をしたい。その代わり、しばらくサボっていた自炊を頑張ろうかな、という気持ちになってきた。家賃を削れないなら、目を向けるべきは食費だ。外食ばかりしていたわけだから、ここはもっと、努力次第で削れるはずだ。余計なものも買わない。旅行先ではおいしいお店で食べたい。そのためにも、都内にいる間は節約しよう。少しでも旅行にお金を回したい。
やりたいことのための節約はさほど苦ではない。少なくとも「やりたいことがある」というだけで幸せなことかもしれない。好きなことをやれて楽しいし、バイタリティーがあれば大抵のことはなんとかなる。
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