大阪〜博多600km徒歩の旅(3)兵庫県明石市〜姫路市
大阪から博多へ 山陽道600km徒歩の旅
第3ステージ
兵庫県明石市〜兵庫県姫路市(31km)
昨夜も1時に寝て、6時45分に起きた。睡眠時間は短いけど、身体は割と元気だった。好きなことをしていると、タフでいられるようだ。
ゆっくり支度をする。スタバのリサさんにいただいたガトーフェスタハラダのホワイトチョコのラスクを食べ(これメッチャおいしい)、コーヒーを淹れる。白湯を水筒に入れる。
8時に宿を出て、コンビニで買ったおにぎりを食べる。そして明石駅から山陽電車に乗り、昨日のゴール地点である江井ヶ島駅へ。8時20分、江井ヶ島駅から徒歩の旅をスタート。今日は姫路まで歩く。
しばらくオーディブルで村上春樹『職業としての小説家』を聴いていた。村上春樹のエッセイの音声コンテンツは、「極めてクオリティの高いラジオ」を聴いている感じでとても良い。
歩いていると、お店や看板が気になったり、ふとまったく関係ないことを思い出したりして、オーディブルへの集中が途切れることがある。そんなとき、小説だと話の流れがわからなくなってしまったり、「今聴き逃した部分に重要な要素があったりしないよな」と不安になったりしそうだが、エッセイであれば、多少聴き逃しても「まあいいか」と気楽に構えられる。
村上春樹が29歳で初めて小説を書いたとき、彼は「自分が自由であるナチュラルな感覚があった」そうだ。「あらゆる表現作業の根幹には、常に豊かで、自発的な喜びがなくてはなりません」とも言っていた。「そうだ」と思いながらぼくは歩く。
自発性なしに、大阪から博多まで歩く人間はいない。仮にこんな行為を他人から強制されたら、ほとんどの人にとって拷問のように感じられるだろう。「毎日30km歩け」「日々の出来事はその日のうちに文章化しろ」「最低2000字は書け」「それが終わるまでは寝るな」
それから、「イマジネーションとは、脈絡を欠いた、断片的な記憶のコンビネーションである」という言葉も印象に残った。だとすれば、この徒歩の旅も、イマジネーションの源泉になるはずだ。ぼくは各地で様々な経験をし、その記憶を蓄積していっている。兵庫県でのある出来事が、どのタイミングで何につながるかわからない。
今日は、ぼくがなぜ長期の徒歩旅行や自転車旅が好きなのかについても考えていた。理由のひとつは、「やるべきことに集中できるから」かもしれない。ぼくは普段、一日のうち結構長い時間をSNSに費やしてしまい、そのことに対して嫌気が指したり、自己嫌悪になったりすることがある。
たとえば夕食のあと、寝るまでにはまだ3時間はある。集中して本を読めば、有意義な時間になるはずだ。頭ではそうしたいと思っている。でも、ダラダラとSNSを眺めてしまい、気がつけば「そろそろ寝なきゃ」という時間になっていたりする。そういう日が続くと、自分が情けなくなってくる。
なんでもいいから、自分の活動に集中していたい。真剣に生きる時間を1分、1秒でも増やしたい。その点で、今回の旅はいささかハードではあるものの、概ねうまくいっている。朝起きたら、夕方までとにかく歩く。「今日はここまで行く」と決めて、自分との約束を守る。そこにのんびりとSNSを眺めている余裕はない。歩いていれば、発信したいことが山ほど出てくるから。道中で何かを見て、何かを感じる。それをどんどん伝えていきたい。
夜も集中して文章を書く。気付けば深夜になっている。そして更新を終えたら、もう疲れ切っていて、あっという間に深い眠りについてしまう。そのサイクルが、とても心地良い。他人に気を取られている暇がない。
端的に言えば、「自分に与えられた24時間を、しっかりと無駄なく活かし切れている」という感覚を得られている。そしてその感覚が、幸福感につながっている。
*****
「中村洋太さん、はじめまして。
西日本横断の旅の途中に失礼します。
“歩くパワースポット“ と名高い中村さんにお声がけさせていただきたく、急ではあるのですがDMしました」
歩いていると、姫路を拠点にご活躍されているライターの野内菜々さんから連絡があった。それから2時間後、彼女は明石での取材を終えて車で姫路に戻る途中で、ぼくに会いに来てくださった。
ぼくはちょうどお昼ごはんを食べるため、高砂市の「お食事処ごはんや」に入ったところだった。それから5分もしないうちに、野内さんがやってきた。
名物のボリュームたっぷりなランチを食べながら、1時間ほどライター談義に花が咲いた。やりとりしたのは初めてだったけど、ぼくがコンサルしてきた複数のライターさんと交流のある方だったから、共通の話題が多かった。ただ歩いているだけなのに、こうして会いに来てくださる方がいてとても嬉しい。
ご馳走してくださり、ありがとうございました!
さらに、野内さんと別れて4km歩いた先のJR神戸線「曽根駅」でも、思わぬ再会があった。親友なんちゃんのいとこの紗智子ちゃんと会えたのだ。
今朝、「近くにいます」と連絡をもらって本当にビックリした。昨年の3月と5月に、なんちゃんのご家族と食事をしたとき以来の再会だった。
周囲に何もない駅だったので、駅のベンチで次の電車が来るまでの約20分間、雑談して近況を聞いた。プレゼントに脚の疲労回復シートをいただいた。ありがとうございました!
短い間だったけど会えて良かった。遠く離れた場所で知り合いに会えると元気が出る。
やがて30kmを歩き切り、16時過ぎ、ついに姫路城に着いた。
大阪出発からこの3日で、100kmを歩いた。まだまだ旅の序盤ではあるけど、予定通りのペースで歩けて、すごく自信になった。
姫路城は、日本で最初に登録された世界遺産。見学は16時までだから天守閣には上がれなかったけど、三の丸広場までは入れた。ここで記念写真を撮ろうと、近くにいた方にお願いしたら、偶然にもプロのカメラマンさんで、完璧な画角で撮ってくれた。ラッキーだ。
姫路駅前の「ホテルモントレ姫路」にチェックインすると、
「お車でお越しですか?」
「いえ、歩きです」
という会話があった。大阪から、とは言わなかったけど。
このホテル、6200円と比較的安かった割に、とても良い。たまたまかもしれないけど、部屋はツインルームで広々しているし、サウナ付きの大浴場や、ラウンジでのコーヒーサービスも付いている。
姫路駅のスタバからは、ライトアップされた姫路城がハッキリと見えた。姫路城は、400年前からこの美しい姿を留めている。
原稿を書いていると、大阪の友人から、こんな連絡があった。
感動した。ぼくの歩き旅が、こんな形で誰かの役に立ったなんて。嬉しい。
夕食は、大衆食堂の「福十」にて。姫路名物のおでんも食べられて最高だった。
カウンターで隣に座っていたひとり客の男性は、マスターと気さくに話し、明らかに常連と思われるのに、何を食べても、まるで初めて食べるかのように「うわ、うまあ」「うめえなあ」とため息を漏らす。きっとこの人は、ここに来るたびこうしておいしさをしっかりと噛み締めているのだろう。幸せそうだった。村上春樹が言っていたように、「姫路の大衆食堂で見かけた、何を食べても幸せそうにため息を漏らす常連客」という断片的な情報が、いつかどこかで脈絡なく生きるかもしれない。
また、何年も音沙汰のなかった友人から突然連絡があり、「ひっそりこっそり応援してます」とスタバの10枚綴りのギフト券をくれた。これも嬉しかった。ただ歩いているだけだけど、誰かに何かを届けられているみたいだ。
今日も生きたね。明日も頑張ろう。
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