高松の旅(5)三豊・観音寺の絶景ドライブ
日曜日はレンタカーで香川県西部をドライブすることにした。ニコニコレンタカーでホンダの軽を借りる。1日2860円と破格だった。
高松を出て一般道を40分ほど走り、丸亀に着いた。駅前の地下駐車場に車を止め、「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」を訪ねた。ここでの詳細は前回のnoteに書いた。素晴らしい美術館だった。
美術館を出て、今度は三豊市へ向かう。ぼくには3箇所、訪ねてみたい場所があった。
きっかけは、4年前のある出来事だった。
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2018年1月、フリーランスライターとして2年目が始まった。この時期、ぼくは「これからの働き方」について悩んでいた(毎年このことで悩んでる)。ふと高松でユニークな働き方をしている方のことを思い出し、ご連絡してみると、「高松に来る用事があればぜひお会いしましょう」とおっしゃるので、すぐに飛行機を取って、4日間高松を訪れた。その小笠原さんという方が経営する古民家のゲストハウスに泊まらせていただいた。
ある日、2階の部屋で休んでいると、小笠原さんがやってきて、「今、香川県の観光課の方がいらっしゃっていて、宿泊者の方にアンケート協力をお願いしているそうなんですが、中村さんちょっと協力していただけませんか」と言われたので、フロントに降りていった。
その観光課の方は、「どうしたらもっと多くの外国人観光客を香川に呼び込めるか」という課題解決のために、外国人が訪れそうな宿を回ってアンケートを取っているとのことだった。
アンケートが終わると雑談になり、ぼくは地図を眺めながら、「まだ香川県の西部は行ったことがないのですが、知られざる観光スポットみたいな場所はありますか?」と聞いてみたら、「実は、すごい場所があるんですよ」と見せてくれたのが、父母ヶ浜(ちちぶがはま)の写真だった。
今でこそ絶景スポットとして全国に知れ渡ったが、当時はまださほど有名ではなかった。ぼくは前職で国内ツアーの企画にも携わっていたから、これは「掘り出し物だ」というアンテナがすぐに働いた。
「『日本のウユニ塩湖』と言っても過言ではない景色だ。これ、どうして香川県としてもっと押し出さないんですか? 観光客が来ないはずがないじゃないですか。わざわざウユニ塩湖を見に地球の反対側(ボリビア)まで行く人がたくさんいるんですから」
「いや~、そうですよね~(笑)。実は、父母ヶ浜以外にこういう場所もあるんですよ」
次に見せてくれたのは、瀬戸内海と桜の織りなす絶景だった。
「これもすごい」
「同じく三豊市の紫雲出山(しうでやま)です。瀬戸内海に突き出た荘内半島に位置しています」
四国随一の桜の名所として知られているが、東日本の多くの方にとっては馴染みの薄い場所だろう。桜の時期じゃなくても訪れる価値がありそうだった。
「もうひとつ、三豊市の近くにいいところがあります」
最後に教えてくれたのは、三豊市の隣、観音寺市にある「高屋神社」だった。標高407メートルの本宮からは観音寺市内と美しい瀬戸内海が一望でき、「天空の鳥居」と称されている。
「これだけ観光資源が豊富なら、香川県の西部エリアはこれから賑わうだろうな」と思ったが、その予感はまさに当たった。
ぼくもいつかこの3箇所を訪ねてみたいと思っていたから、今回ドライブで行くことにしたのだ。4年越しの念願を叶える日だった。
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昼過ぎでお腹が空いてきた(朝は「さか枝うどん」でかけうどんを食べた)ので、紫雲出山へ行く前に、まず景色の良さそうなカフェに寄ることにした。荘内半島の「CLASSICOセトウチ珈琲」はロケーション抜群のカフェだった。
穏やかな瀬戸内の海と島がすぐ目の前に広がる。パニーニとアイスカフェモカをいただいた。
その後、紫雲出山の展望台に向かう。展望台の駐車場に向かって10分ほど山道を登るのだが、運転に苦労する道だった。幅が狭く、ところどころ1台しか通れないため、対向車が来るたびに気を遣う。それでもなんとか登り切ると、今度は駐車場がいっぱい。少し待ってようやく停められた。桜の時期でなくてもすごい人気である。
紫陽花がこれでもかと咲く道を歩いていき、ついに展望台に到着。瀬戸内海の3方向が一度に見られて爽快な眺めだった。
そして、観音寺市に向かって南下する途中、右手に父母ヶ浜が広がりすごい人だかりが見えたので、一度車を止めて行ってみる。
まだ昼過ぎなので、美しい写真を撮るタイミングではなく、ただの砂浜。おもしろかったのは、観光客が増加したことで香川県の田舎とは思えないようなおしゃれなお店が立ち並んでいることである。その異質な光景は、ぼくにゴールドラッシュを思わせた。
その後、金運アップを祈りながら「寛永通宝」の砂絵を望む。
そして高屋神社。絶景の鳥居の近くまで車で楽に行けるルートもあるのだが、自力で登ろうと思ってあえて麓から行くことにした。しかし、この正面ルートでの参拝客はかなり少なかった。駐車場には「30〜50分の登山です」との看板が。
マジか。15分くらいで登れるのかなと安易に考えていた。実際は急勾配の山道で、本格的な登山だった。早歩きで進んだが、かなりキツかった。
30分かけてようやく登り切ったときにはTシャツが濡れ雑巾のようになっていた。そしてサンダルを履いた若い女の子が彼氏に向かって、小声で「正面から登ってくる人もいるんだね」とつぶやいているのを、ぼくは膝に手を突きながら聞いた。マジで、「あえて麓から」とか言ってないで、裏口から来れば良かった。そっちの駐車場からは3分登ればここに着くらしい。
でも、鳥居をくぐって振り返ったときの絶景には、思わず声が出てしまう。
下りはランニング。15分で駆け下りた。
それから、帰りにもう一度「父母ヶ浜」に寄ってみた。夕暮れ時で光が柔らかく、良い雰囲気になっていた。潮のタイミング的にベストな日ではないけど、映える写真を狙って傘を持っているカップルも多かった。こうやって撮っていたんだなと理解した。
地元のおじさんたちが写真係を務め、そこに大勢の若者が列を作っていたのは微笑ましい光景だった。ボランティアの方だろうか。
シャボン玉も綺麗だった。
実に満喫できた日帰りドライブだった。帰りは高速で1時間。高松に戻ってきた。
高屋神社でエネルギーを消耗したのでハンバーグと大盛りご飯を食べて、締めにホテルで小さなラーメンも食べた。
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