周庭の警察署包囲事件について

 「民主の女神」と呼ばれる周庭であるが、その呼び名の通りただ民主化を訴えていただけなのに逮捕されたのだろうか。多くの人は香港警察や中国の弾圧というが、弾圧というのであれば周庭が訴えられた罪状が有って、それが事実ではないことを証明する必要が有るが、いまだに周庭ちゃんかわいそうという人だけで、事実を示してくれる人がいないので調べてみた。


1. 裁判結果

 周庭が逮捕され服役したことを知っている人は多いと思うが、多くの人はなぜと考えることを放棄して中国の弾圧と勝手に納得しているのではないだろうか。それはあまりに事実を軽視し過ぎであって、当然裁判の判決を見て批判すべきである。ただ、裁判の判決文を入手するのは困難であり、これまでは現地メディアの情報を基にしていたが、今回やっと判決文を入手できた[1]。

判決文

 この判決は保釈を求めた裁判の判決であるが、周庭の罪状と警察署包囲事件の状況が書かれている。周庭の罪状自体は違法なデモの扇動や参加であり、破壊行為で罰せられている訳ではない。ただ、この判決文に書かれている行為が民主化を求めるデモにふさわしいとはとても思えず、単純に犯罪だろうと思う。以下にその行為を詳細に説明していく。

判決文

 また、弾圧と言うならばこれらの判決が事実ではない事を示す必要が有る訳だが、Youtubeにはこれらの行為を映した動画が有って、克明にこれらの行為を記録している。即ち、判決は間違っていないという事であり、では周庭はただ民主化を訴えていたという人は、何をもって法を犯していないと言っているのだろうか。

2. 道路封鎖

 判決には「Harcourt通りに飛び出し、バリケード、コーン、ゴミ箱、その他の瓦礫で上り下りの車線を封鎖し、深刻な交通混乱を引き起こした」とある。さすがに許可も無く道路封鎖はまずいよなと思う。しかし、その動画を見るとより深刻な状況だと分かる。

 まず目につくの大量のバリケードや三角コーンである。他の道路も封鎖したという事であり、この大量の資材を準備する資金はどこから出ているのだろうか。また、何の躊躇いもなく三角コーンを投げて車を止める様子はプロかと思うほどである。この大人数を組織する能力と言い、彼らは一体何者なのだろうか?それと不思議なのは、三角コーンにPOLICEと書かれていることで、これは盗品なのだろうか?

 動画の15:50頃にマイクで扇動する黄之鋒と共に周庭が映っている。このデモを扇動していると思える行動であるが、当初罪を否認していた黄之鋒は動画を見せられて観念したという。この動画見れば納得である。

 尚、この動画の出所がいまいち明確ではないのだが、動画にもある通り多くのメディアが取材しており、他の動画も似たような光景を映していることから採用している。

3. 体調不調者

 判決によると、警察署が包囲され職員が外に出ることが出来なくなった為に体調不調者が出たという事である。自分たちの主張の為には他者がどうなっても良いのだろうか。体調不調者には高齢者や妊婦もいたそうである。

 
 この動画には運び出される職員の様子が映し出されている。担架で運ばれかなり辛い状況の様に見える。また、これだけの若者が警察を包囲し、大きな声で叫び、卵などを投げつける中でどれだけの恐怖を味わったのだろうかと思う。

4. 落書き、監視カメラの破壊

 デモ参加者は警察署の壁などに落書きをし、卵を投げつけ、監視カメラを壊したという事である。この様な破壊行為があった事を、ただ民主化を訴えただけという人々はどう思うのだろうか。

 デモの翌日の動画には、警察職員がバリケードやそれらを繋ぐための紐を外したり、傘を捨て、落書きや卵の跡を洗い流し、卵の殻を掃除している様子が映っている。言葉で想像する以上の行為である。

5. その後の香港民主化デモ

 判決の後半は量刑について記載されている。自ら罪を認めた事で減刑されているが、一方で公共の秩序と安全を混乱させる行為には抑止力の有る刑を科す必要が有るとして重い刑となっている。

 しかし、そのような判決の意味を理解する事もなく、周庭はその後も活動を続けていた訳だが、直接的な因果関係は分からないにせよ、活動家に煽られた若者がデモに参加し、結果として1500人もの若者が有罪判決を受ける事になった[2]。有罪の理由は火炎瓶を投げるとか、ブロックを投げる、刃物で警官を刺すなどの暴力行為であり有罪判決は仕方ないが、それでも彼らを煽った活動家の責任はどうなのかと思わざるを得ない。

6. 国安法違反

 周庭の行為の時系列を理解している人はどれだけいるのだろうか。主なものは以下である。
19年6月:警察署包囲事件
20年7月:裁判にて警察署包囲事件の罪を認める
20年8月:国安法違反で逮捕
20年12月~21年6月:警察署包囲事件の件で服役
23年12月:カナダへ事実上の亡命

6月に違法集会を扇動した罪を認めておきながら、その1ヶ月後には何の反省もなく活動を続けていた訳であり、また国安法違反で逮捕された際はメディアに大量に露出したが、自ら上記の様な違法行為を行ったことなど一言も発せず、メディアも一切報道しないから「民主の女神」と言った誤ったイメージが構築されてしまったのだろう。

 さて、国安法違反の件であるが、その理由は外国勢力との結託と言う事である。この罪については裁判はまだ行われておらず何とも言えないところである。上記の通り、香港では裁判が正しく行われている。また、国安法の裁判でも”光復”などの言葉の意味や、被告の警察官にバイクで突っ込む際の挙動について詳細に議論されていた。やましい事が無いならば、周庭は逃げずに捜査に協力すべきだったと思う。

 ところで、この18年12月の米国議員のマルコ・ルビオのツイッターだが、デモシストのネイサン・ローと周庭がルビオと会っている。ルビオは香港に関して中国から制裁を受けているが、新疆の件でも制裁を受けている、また、証拠を示せないから推定有罪の新疆製品の輸入禁止法案を提案したのも、このルビオ議員である。この会談と国安法は関連が有るのだろうか。

7. 国内メディアの報道

 では、国内のメディアはこの警察署包囲事件をどう報じたのだろうか。一つの事例は以下である。

 これまでのデモ参加者の行動を見てきた上でこの日本のニュースを見ると、本当に呆れてしまうだろう。論調としては市民が香港警察の暴挙に抗議するというものだが、現実は「市民」が道路を封鎖し破壊行為を行い、一方警察官はただ見守っているだけであり、また体調不調などの被害を出しているのである。これが日本のメディアである。

8. まとめ

 周庭をはじめとして香港民主化のデモは市民が平和的にデモを行い、香港警察や中国が弾圧を行っているというイメージが強く定着している、しかしながら、実際は周庭の裁判結果や1500人に及ぶデモ参加者の有罪判決は一切報道されない。このような報道の環境の中では、自ら情報を取りにいかないと簡単に騙されるだろう。

 また、香港の民主化については、中国からすれば統一の目標を簡単に譲れる訳はなく、また周辺地域の混乱は新疆などの分離主義者を勢い付かせ、テロなどが再発する可能性も有る。とすれば、あの様な暴力的なデモではなく、落ち着いた議論を重ね、理解をゆっくりを醸成させていき両者の解決点を探っていかなければ解決は無いと思う。しかし、カナダに逃亡し未だに混乱を煽る周庭が残念である。


引用:
[1]:案件編號:裁判法院上訴案件2020年第374號
[2]:Explained in data: What happened to Hong Kong’s protesters? ;Hong Kong Free Press ; 16 JULY 2022


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?