新型コロナウイルスに対する韓国の検査方針の経緯について

新型コロナウイルスに対する全数検査の是非が取り沙汰されているけれど、ここでは積極的に検査を行っている韓国の事例について調べた結果を記す。尚、全数検査と言う言葉は不正確で、韓国でも全数検査は新天地信徒関連だけで、他の国民に対しては4日の自宅待機で症状が解消しない人に検査を行っている。

韓国の新型コロナウイルスに関する経緯は以下。

・韓国では当初大邱・慶北地域で集団感染が発生
・韓国政府はこの地域で感染を抑えられれば、国内拡散は抑えられると考えた
・大邱の集団感染の大半は新天地と言う宗教団体によるもの
・この際の方針は以下
 - 基本的には熱が有る場合は4日間自宅待機
 - それでも症状が消えない時は積極的に検査
 - 感染者は全員入院して隔離、治療する
 - 新天地教徒については全数検査を行い、経路把握を目指す
・しかし、3/1時点で新天地関連で2,000人を超える感染者が発生
・入院できず自宅待機中に死亡する事例が数件発生


この様な状況において韓国政府は3/1に全員入院の方針を変更した。その理由は以下の3点。

・感染者の約80%程度が入院が不要な軽症者
・限られた医療リソースを考慮し、重症患者への治療に集中する
・軽症患者を病院に集中させることは、医療スタッフの感染の可能性と疲労をもたらす

そこで、入院中心のコロナ19治療システムを重症度に応じた治療体系に変更した。
下図がその体系である。具体的には、患者の基礎疾患の有無や健康状態などを考慮して4段階(軽症-中等度-重症-最重症)に分類し、中等度以上の患者は入院し、軽症患者は生活治療センターか自宅で隔離される。

(出典:ハンギョレ新聞)

また、併せて入院患者の退院基準も変更されており、入院可能な病床確保を図っている。この様な方針の為、検査も1日1万件以上のペースで実施され、現段階で検査総数は188,518件である。

尚、以前から軽症者全員を入院させると高リスクの高齢者や基礎疾患を持つ人に十分な治療が出来なくなると指摘していたのにどうなっているのかと言う記者の質問に、この様に症状別に対応を変える事は計画していたが、新天地の感染者数増加が早過ぎたというのが政府の回答。どちらが正しいか判断は難しいけれど、記者が厳しく追求するのは羨ましい。

韓国政府としては新天地等のクラスターの感染状況は管理できており、他の地域の爆発的な感染増加も無いことから基本的には感染を抑え込んでいるとの認識である。勿論、軽症者用の隔離施設やマスクが足りないなどの問題は起きているが、逐次状況を国民に説明し、政府も対応を進めている。

一方で日本政府はどうか。検査総数もまだ8,176件であり(既にフランスやドイツの方が感染者が多くなっているが、合理的な説明は出来るのだろうか)、検査や入院治療のスキームも全く見えない。韓国や中国の事例を参考に日本も対策を取らなければ手遅れになるのではないか、そんな不安を強く感じる。

参考資料:
中央災難安全対策本部の定例記者会見(3/1)
https://note.com/yota811/n/ne52bf0780a15

韓国保健当局、検診の優先順位を大邱新天地から高リスク群の市民に変更 hankyoreh japan
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/35914.html

感染者発見に追いつけない生活治療センター、自宅隔離と並行 hankyoreh japan
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/35905.html

新型コロナ、欧米で急拡大 感染者数は1週間で5~12倍  :日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56537110X00C20A3MM8000/

感染者もPCR検査も韓国は日本の17倍!韓国の感染者急増はPCR検査数の差?(辺真一) - 個人 - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/pyonjiniru/20200305-00166210/

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