二話目:渡 航海

飲み物を一口。

何となく静まり返った室内、外を下校中の小学生達が騒ぎながら歩いていくのが聞こえた。

ゴン、とまだ重いグラスが机を叩く音と共に一人が口を開く。


「それじゃ俺の体験談でも話すとしましょうかね」



二話目・渡航海:盗難事件の犯人


あれはさ、俺がまだ学生の時アルバイトしてた頃の話なんだけど。

これ言っておくけどまぁまぁ短い話だし、全然お化けとか出ないんで、ただおっかね~とは思ったね。

で、その時やってたのが大して売れない雑貨屋の店番。お給金が良かったんでね、苦学生だったぼかぁそこで短い間雇ってもらってたんですよ。

雇われてんのもおばちゃんとかばっかで、若い男なんて俺くらいよ。まぁ店長もそこそこ若かったかな、当時で三十代だったんじゃない?

熱血っぽい、若干暑苦しい感じのおじさん一歩手前みたいな。

そこそこ上手くやってたけど、他で掛け持ちしてたバイトの方が忙しくなってきてそろそろ辞めるか、なんて思ってた矢先にその店長から急に呼び出された。しかも夜中に。

かなり深刻そうに「聞いてほしいことがある」ってさ。

「明日じゃダメすかね」

って聞いてみたけど、どうしても急ぎ話したいから。って駅前のファーストフード店まで行った訳ですよ。これ告白されたらどう断ろう、とか内心思ってた。いや、別にそういうこたぁなかったんだけど。それでまぁ、人でも殺した?って具合に深刻そうな顔で俺にこういうのよ店長は。


「最近店のお金が合わない。誰かが盗んでいるみたいで・・・」

「いや、俺じゃないですよ」


第一声で否定したね。いや、本当に俺じゃないから。店長も俺に疑いを持ってるわけじゃなくて、って慌ててフォローしてたけど。他のバイトとかパートってもおばちゃんばっかりだから男である俺に相談したらしい。まぁ年の割にしっかりしてますからね~頼りたくなる気持ちもわかるよ。

それで店長っていうのが、さっきも言ったけどやや熱血漢ていうか、正義感に溢れてんのかな。熱く語りながら泣き出しちゃって。「こんなことが起きて悔しい」とか「身内からそういうことをされるなんて」なんてこと言ってたかな。周りの客がじろじろ見てくるぐらいには熱弁して泣くもんだから俺も参ったよ。とりあえず、内情知った訳だから辞める前にひと肌脱いでやりますか、と思ったね。


まぁ結局俺は大して何もせず終わったんだけどさ。

その店の金に手つけてたの、結局俺に相談してた店長本人だったんだよね。


意味わからな過ぎて、流石にゾっとした。



俺の話はこれくらい。


どこかで聞いたようなこわいはなし、都市伝説を創作キャラに語らせるだけのノートです。自己満。