見出し画像

#TREK くじゅう連山へ Part3 -連山周遊


雨の終わりとともに

間断なく降り続く天の恵み。耳栓を持ってこなかったことを後悔する。持ってきたところで少しも邪魔にならない便利な小物をついつい省いてしまう傾向があって現地で後悔するということがある。枕もその1つで空気を抜いた状態なら全くかさばらないのになくてもいいよね、服とか折りたたんで頭の下に挟んじゃえばいいよね という精神で今まできたが今夜はまだ疲労感もないせいか家でぬくぬく寝る環境を体が欲しがる。頭の預け場所(ベスポジ)が定まらず浅い眠りの中をうっつらうっつらしている。そこに叩きつける雨音。睡眠コンディションは決してよいとは言えない。
夜啼鳥が雨にも頓着せずよく鳴いた。

ホッホホホホホ
トットトトトト
チッチチチチチ
チューインチュイン

それでも22時30分、シトシト降る雨はようやく止んだようだ。19時ごろから小便を我慢していたのですかさず用を足しに外へ出た。そして3時過ぎ。テントのゲートを開けて外を眺める。しばらく雨は降らなさそうだ。ガスコンロに点火し朝食をとる。尾西の山菜おこわと茄子の味噌汁。ドリップコーヒーで気合を投入。
4時30分 テント場を出発。山荘の敷地を抜け中宮跡・北千里浜へと登っていく。

北千里浜

登り始めて30分もしないうちにヘッドライトなしでまわりが見えるようになってきた。とはいえこの霧は晴れることなく薄らぼんやりした風景の中を進んでいく。
平日ということもあり周りに人の気配はとんとあらない。時々可愛らしい鳴き声を聞かせてくれる鳥たちの存在があるばかり。姿は見えない。

”あの世”感が漂うも恐怖は感じない
おっさんセルフィー

6時36分 久住山山頂に到着。山頂までの道程はガスのため視界は悪く麓から吹き上げる風は冷たく、そして雨がまたひとしきり降り続いていた。Hoodyを頭に被って首元のゴムを絞り雨の侵入を防いでいるが隙間風でフードがバタバタ暴れる。風と雨によって手がかじかむように冷たく感じた。山荘で軍手を買っておいて正解だった。本当は持ってくるつもりがチェックリストを作っていなかったせいで案の定忘れた。やはり小物だ。軍手は少し冷たく感じるものの、レインウェアの袖の中に手を収めることで多少の暖かさを確保できた。そんな風に登っていると久住山の頂上標が見えた。

久住山 1,786.5m

この調子だとガスが抜けるまでしばらく時間がかかると判断しすぐに移動。近くの避難小屋へ移動しそこで雨がおさまるまで休憩することにした。

窓のない頑丈な小屋

寒さの中でいただく温かいコーヒーのそのありがたさよ。

避難小屋で休憩し雨がおさまりつつあるのを確認。風はあるが中岳を目指す。標識はほどなくして見えた。

九州最高地点となる中岳 1,791m
もののけ姫が立ってそうな岩場
山よ晴れたまへ の儀


山頂付近でガスが抜けるのを待つもそんな気配はなく周りの景色はほとんど確認できない。しかし天気予報によればもう少しで天気が回復していく見込みであったので15分ほど待機。ほどなくして初めて他の登山客と合流。50歳くらいの男性で当日の深夜1時に宮崎県を出発し6時頃から登り始めたそうだ。待機している間、終始気になっていたある存在について話をした。それはみんなが満開を待ち望んでいるミヤマキリシマに取り付く夥しい数のシャクトリムシだ。

※閲覧注意※ 白っぽいのと黄色いのがいる


それはまるで「もののけ姫」に出てくるこだまのようにそこら中にいる。今まで何度もこの時期に登りに来ているがこんなにシャクトリムシがでた事はないと仰っていた。この現象が今年だけのものなのか今後も続いていくものなのか。原因はなにか。温暖化の影響か。よくわかっていないらしい。これがもし5cmほどの毛虫でそこら中にうじゃうじゃいるような状況だとゾッとするがシャクトリムシなら私にとってはそれほど気持ち悪いものではない。しかし山ガール達はこれを許容できるのだろうか。。 と虫の話をしているうちにガスが抜けはじめた。男性と別れの挨拶をして白口山しらくちだけを目指すことにした。

NGS

地図上で破線 --- になっているコースを進んだようで細い道を両サイドから笹の枝が伸び放題のところを進んでいく。一度もガイドらしきペンキやピンクテープがなかったのでルートを外れていないか不安になる。不安にさせた要素はそれだけではない。もう1つの要素がその細く危うい山道を進み始めてほどなく道のど真ん中に鎮座していた巨大なNGS(野糞)の存在だった。私はNGSを目視する直前に白い物体も捕捉していた。きっと心無いKSY(クソ野郎)がNGSでもしてその辺に捨てたものだろう、うっかりNGSを踏まないようにしなければと注意を開始した矢先。そのあまりにも堂々たるNGSは隘路を塞ぐように威風堂々鎮座していた。まるで通行人を検問する関所のように。わたしは愕然とした。待てよ、もしかするとここは寄り道であって正規ルートではないのかもしれない。然るに「だれも通らないっしょ!」という見立ての下でその不届き者はNGSを実行したのかもしれない。だとしたらこのルートは道迷いまっしぐらなのか!? 『いや待て。』もう一人の自分が諭す。『お前は忘れたのか。鹿島槍ヶ岳から爺ヶ岳へ続く一本道のど真ん中にも同じクラスのNGSがあったことを。』
…私の考えではNGSは緊急手段である。寒中行動による突発性腹下しとっぱつせいはらくだしからくる軟便排出欲求を満たす行為だ。それゆえやむを得ず緊急的に人気ひとけのない茂みへコソコソ移動した後に致すものと認識していた。つまり、人が通らない場所+軟便であるはずだった。しかし爺が岳で発見したものも今日発見したものもどちらも立派なバナナ形のお手本のような健全なNGSだった。「人が通る道+バナナ便ってどういう心境でやっとるんだー! 」と憤怒の念を抱きつつそれをけて通過した。ガイドのない道を30分程度歩いただろうか。その先に白口岳の標識が見えてきた。コースは間違っていなかったのだ。

って NGSごときでなんでこんなに文章書いているんだー くっそー

白口岳

9時10分 白口岳到着。まだ昼飯を食べるには早い時間だったものの温かいものを摂取したいのとガスが抜けるまで時間があったのとで小屋で購入しておいたカップ麺を食べてしばし休憩。ここで食べた「ごっつ盛り ワンタン醤油ラーメン」がまことに美味かった。食べているとみるみるガスが抜けていった。
おっさんは嬉々としてカメラを取り出しその瞬間を逃さないようシャッターを切った。

晴れ間から一望するくじゅうの大地

腹が満たされた満足おじさんは周りを一望、北東の眼下にミヤマキリシマの群生しているのが見えた。全体を見渡してもここが最も鮮やかなピンク色に染まっていたのでそこへむかうことにした。一旦鉾立峠ほこたてとうげへ下り、立中山たっちゅうざん に向かってしばらく登る。木道を進んでいくと開けた場所に到着。

立中山

空はまだ晴れを保っていた。大船山を背景にして外付けフラッシュを装着しミヤマキリシマを撮影。街中の道路脇によく植えられているツツジの仲間で近づくとその形状が似ていることがわかる。

部分的に見頃を迎えたミヤマキリシマ

吹き渡る風が気持ちよい。汗で濡れたベースレイヤーを乾かすのに丁度良く、昼寝にもってこいの場所だったので荷物を投げ出ししばらくごろ寝。これはなかなか贅沢な時間だった。
ミヤマキリシマの満開シーズン前、それにシャクトリムシが発生していて花の芽をモシャモシャ食べていることもあって、連山を構成する他の山頂を目指す気持ちはすでに失せていた。立中山から30分ほどかけて法華院温泉山荘へ戻った。荷物をおろし、お気に入りのかぼすハイボール2本と炭火焼きの鶏肉を頬張りながら今回の山行を振り返る。

堂々たる山荘の入り口
セルフィーにもってこいの場所
休憩スペースはテント場利用者も使用できる
お気に入りのかぼすチューハイ めちゃうまい

明日は早朝から来た道を戻って 九重'夢'大吊橋に行こうと計画している。レンタカーの返却時間は16時に設定しているので朝出発すれば時間には余裕があるはずだ。

初日は雨のため星空は拝むことができなかったが今夜はきれいな星が見えそうだ。
かぼすハイボールでほろ酔いになりテント場で携帯食を食べて寝た。
ふと鳥の鳴き声で目が覚め外を覗く。天空には見事な天の川が広がっていた。

二泊目の夜は星空がきれいだった

RF14-35mm F4 USM でもきれいに撮ることができたが EF 50mm F1.2 USMにすると一層星の輝きを捉えることができた。

豆知識:
Star =恒星 =太陽
Planet=惑星=地球

「Starって星全般を指す言葉だと思ってたんですけど実は恒星を指す言葉なんですってよ奥さん」

美しい星空で胸いっぱいになったおっさんは自分も映り込みたい衝動にかられ、広角レンズとタイマー機能と使って何枚か撮影した。

ヘッドライトが天の川を照らす

次の日も晴れることを期待しつつ寝袋にくるまる。鳥たちのやさしい鳴き声は40代のおっさんをもメルヘンな眠りの森へと誘うてくれた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?