お金2.0 ~新しい経済のルールと生き方~(佐藤航陽 著)

いわゆるTech系や未来系の話については、色んな方が色んな事を言う。情報収集にはキリが無い(心理的安定剤になるだけ)し、後者については神のみぞ知る事。かといって自分は専門家でも無いので、この分野については誰か信頼出来る人を見つけて、その方の話を参考にしながら自分の思考を巡らすようにしている。

メタップス社創業者でもある佐藤氏は、以前セミナーでも直接話を聞いたことがあるけど、「考える・整理する」ということについては、半端ではない程の時間と労力を費やしている方。昨年、佐藤氏の「未来に先回りする思考法」という本を読ませてもらってから、その思考法には大変刺激を受けた。歴史を学び、過去→現在→未来を点で繋ぎながら、自らビジネスを通じて仮説の実験・検証を繰り返していることで本質を見出そうとしている方だからこそ、彼が発する思考の整理には価値があると思っている。

実際、この本はその期待通りだった。著書のタイトル通り、「自分の生き方」を考える上で特に20-30代の方には必読なのではないかと思っている。

「長いものに巻かれず、自分が本当に価値あると信じることは何か?」を問い続け、行動を通じて追求し続けることが大事だと強く思った。メモ的に長くなってしまったけど、参考になった箇所や気付きを整理してみた。

1.同氏の原動力や思想には、「お金をたくさん持つ家に生まれた子供はたくさんの機会が与えられ、そうでない家庭に生まれた子供には選べる道が少ない。人生って平等じゃないんだな」という疑問を抱かせた子供時代の原体験があるということ。SBの孫さんや五条の慎さんなど、強烈な推進力がある人に共通する要素だと思う。

2.多くの人の人生の悩みには①人間関係 ②健康 ③お金 の3つがあるということ。また、世の中は複雑で無数の要素で方向性が定まるが、特に大きいのが ①お金 ②感情 ③テクノロジーである ということ。更には、経済とは「欲望のネットワーク」であり、人間を動かしているのは①本能的欲求(衣食住・性的なもの・愛情)②金銭欲求 ③承認欲求 に大別されるということ。

3.自然の中に社会があり、社会の中に企業があり、企業の中に部署があり、部署の中に人間がいて、人間の中に器官があり、器官の中に細胞がある。それぞれ名前が違うだけで構造的には同じものとして捉えることが出来る。つまり、自然の構造に近いルールほど社会に普及しやすく、かけ離れた仕組みほど悲劇を生みやすい。(ex. 社会主義は私利私欲・競争を否定し、政府が経済をコントロールした(自然の摂理と正反対の仕組み)、日本や韓国を見ると資本や人材の流動性が高くなく、循環が止まっているがゆえにうまくいっていない)自然の摂理を理解することで応用可能なシステムが見えてくるのだろう。

4.今の「資本主義」「中央集権的管理体制(ex. 中央銀行が通貨を発行し国が経済をコントロールする仕組み。世界では1833年にイングランド銀行が発行する銀行券を法定通貨と定めた。)」等といった社会の仕組みは、(国によって異なるが)100-200年程度の歴史しかない訳で、最近出てきた仮想通貨などの新しい仕組みが100年後に標準になっていたとしてもおかしな話ではないということ。

5.お金や経済において最もインパクトある現象は「分散化」の流れ。多くの人がスマホを持ち、リアルタイムで人・モノが常時繋がっていることで、情報の非対称を前提に作られていた中央集権体制(中心にいる管理者に情報と権力を集中させ何か問題が起きた時にすぐに対応出来る体制)が崩れ始めている。分散化の流れ中で、力をつけていく個人をサポートする側に回ることで自らも力をつけていける。既存の社会インフラが整備されていない国々では既存システム(法律とか)との摩擦が無い為、新しいサービスが出てくると物凄い勢いで一気に浸透させることが出来る。シェアリングエコノミーは、支払やレビューのような最低限の機能だけを代理人として提供する「代理人型社会」と、これからの「ネットワーク型社会」をハイブリッドしたモデルだが、それを更に推し進めたのがトークンエコノミー。ビットコインはほぼ完全に分散化が進んだ経済システムとして機能し始めており、まるで自然界の生態系のように有機的であり柔軟なネットワークになりつつある。自動化と分散化が混ざった時に起こる「自律分散」というコンセプトが今後多くの産業のビジネスモデルを覆すことになる。

6.つまり、経済は住む対象ではなく、「自ら作る」対象に変わりつつあるということ。今はスマホやブロックチェーンなどを使えば個人や企業が簡単に通貨を発行し、自分なりの経済を作れてしまう「経済の民主化」が起き始めている。15世紀にグーテンベルクが活版印刷技術を発明し、書物を安価に大量生産できるようになったことで「知識の民主化」が起き、社会が劇的に変わった。人類は知識を共有出来るようになり、文明が発達していった。その後産業革命が起こり、王様や聖職者が消え、商人・知識人・軍人が主役に。その後インターネットが誕生し、知識がコモディティ化したことで物知りの価値が低下した。「経済の民主化」はお金そのものの価値を低下させ、どのように経済圏を作って回していくかが重要になっていく。

7.資本主義の発達でお金の影響力がどんどん強くなり、世の中の人が感じる価値とは関係ないところでお金だけが増えるようになった。資本主義が考える価値と世の中の人が考える価値あるものに大きな溝が出来ており、それが多く人に違和感を持たせている。今起きていることは、お金が価値を媒介する唯一の手段であったという独占が終わりつつあるということ。企業が発行するポイント、仮想通貨など媒介手段の多様化により人々が注目するポイントが「お金」から「価値」に変わることが予想される。(例えば、YoutuberやTwitterにてフォロワーが多い人は、”他者からの注目”という貨幣換算が難しい価値を好きなタイミングで人脈・金・情報という別の価値に転換できる。1億円の貯金があることと、100万人のフォロワーいることどちらが良いかは人それぞれだが、自分の価値をどんな方法で保存するか選べるようになってきている。もはや財務諸表では企業や事業の価値を正しく評価出来なくなっている。例えば、「データ」や「人材」。テクノロジーの発達によりデータが価値として認識出来るようになり、お金では計上出来ない「価値」を中心に回している会社が成長しているのは、今の金融の仕組みが限界に来ていることを物語っている。恐らく、我々はお金に特別な意味を感じていた最後の世代になる。

8. これからは「価値主義」の時代。資本主義で大事なことは資本を最大化すること(お金を増やすこと)だったが、価値主義は①有用的なもの ②内面的なもの(興奮・共感・好意・信頼・注目など) ③持続性を高める社会的なもの を最大化しておけばいつでもお金やお金以外と交換出来る。②③は物質ではなく曖昧であるが為に、テクノロジーを活用してこそ認識出来るようになったもの。但し、②において注目や関心を集める為に共感や好意・倫理観や治安を犠牲にするような行為が目立つようになると、資本主義が実用性を優先しすぎてブレーキがかかったことと同様なことが起きやすくなる。これからはソーシャルキャピタルを増やすことに長けた人も大きな力をもつようになる。反対に「楽に儲かる」という動機で始められるビジネスの多くは、情報がオープンである世界では過剰な競争を発生させ最終的に満足な収益が出にくくなっている。さらに、ベーシックインカムが広がったら、お金の相対的価値は下がる。我々は、何に価値を感じて、どんな資産を蓄え、どんな経済システムで生きていくのかも自分で決められるようになっていく。選択肢が出来ることで、失敗しても再度別の経済圏でチャレンジすれば良いだけで多くの人が積極的に活動出来るようになる。トークンネイティブの世代にとっては当たり前なことになる。価値主義のポイントは、「お金や経済の民主化」「資本主義にならない価値で回る経済の実現」。自分なりの独自の枠組みを作れるかどうかの競争になる。枠組みの中の競争ではなく、枠組みを作る競争。その為に自分の興味や情熱と向き合い、自らの価値に気づき、それを育てていくことが大事。

9. 今後国家は3つの方向に変化すると読む。1つはエストニアのような先進的国家が米中とは全く異なる形で別のグローバルスタンダードを作る未来。2つ目はグローバル巨大IT企業が国家のような役割を担う未来。3つ目は全く無名の共同体がバーチャル国家として新しいモデルを作る未来。

最近思うのは、同じ本でもその時々置かれた状況・環境によって、自分に刺さるポイントや感じ方が異なるということ。この本は年内に何度か(時代は早く進化してしまうので1-2年してしまうと劣化してしまうかもしれないが)読み直して自分の今後の生き方を考え直すツールとして使いたいと思う。自分を進化・変革させ続けることをケツ叩きしてくれる当書籍、オススメです。Newspicksのインタビュー記事にも掲載あり。

https://newspicks.com/news/2732641/body/

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