新緑そよぐ青
年末年始にかけてジャズピアニストのキースジャレットのアルバム「ザ・ケルン・コンサート」を馴染みのバーのマスターからおすすめされたことをきっかけにずっと繰り返し聞いていました。1975年に収録された約半世紀前のライブコンサートの模様ですが、ジャズピアノというカテゴリーの枠を超えて今でも語り継がれている名作ということで聞き始めたのですが、美しい旋律はもちろんのことキースの即興的なパフォーマンスが伝わる作品です。
1975年のキースは当時20代でその頃から世界的に活躍しており各地に引っ張りだこだったと言います。欧州ツアーを巡って終盤あたりに差し掛かった場所はドイツのケルンでした。会場は1400人分が収容できる大きな器でしたが、ステージ上に用意されたピアノはいつものグランドピアノとは程遠く楽屋裏で練習するようなピアノがあったといいます。何かの手違いとのことですが本番までの時間もなくこのピアノで演奏することは無理だと諦めてキースは怒ってホテルへ帰る支度をはじめると「そこをなんとかお願いします」とコンサートの主催者である17歳の高校生の女の子が必死にお詫びとお願いをして引き留めたといいます。ジャズ好きが昂じてキースを地元に呼んじゃおうという10代の高校生の発想はなにかとエネルギーが必要だと思いますが、キースもその思いに踏みとどまった様です。
調律もままならない小さなピアノで1400人の観客に向けて会場の隅々まで普段の演奏より研ぎ澄まされた感性で届けたコンサートは言うまでもなく時を経ても、コンサートの背景が分からずとも名盤として人々の心に刻まれている作品です。
いつもの環境とは異なるけど、そこをバネのように反動で跳躍することは簡単ではありませんがキースは見事に跳ね返しました。
作品についての背景はバーのマスターは教えてくれませんでしたが、マスターに話すと「そうそう」とだけ言い放ち、いつもの優しい口調で別の話題に移りました。
動乱の時代と言われて久しく今日においても国外に目を向ければ、互いをにらみ合ったもの同士の争いがいくつも連鎖しています。国内では年始から自然災害が発生したり人災があったりと、心が落ち着かない日々が続いているのかもしれません。普段と変わりなく日常を送れることがどんなに尊いか改めて考えさせられますが、周りに惑わされず元気に生活することを心がけていきたいものです。
キース・ジャレットの「ザ・ケルン・コンサート」聴いてみて下さい。
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