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書評『相撲の力学 〜神技のカラクリ〜』、松田哲博 (著)、BABジャパン、2024年


筆者、乾坤一擲の書である。

相撲を物理学で説明しようという書である。筆者は、琉球大学理学部物理学卒の元力士、本書はその恩師に捧げられたものである。

結論から言おう、その目論見はまだ道半ばである。
出てくる物理学は、ニュートン力学から相対性理論まで、高校までの物理学が分かれば、戸惑うことなく本書は読める。

本書の題名どおり、「ニュートン力学までの解析で終わっておけば良かったのに」と私は思った。
電磁気学、量子力学、相対性理論で解析しているところは、無理に理論を振りかざしているようで、うまく落としどころを見つけれていない。
大変、危うく感じた。

ニュートン力学で、説明されているところは、大変興味深い。特に、第3部「技」で紹介されている、相撲の「決まり手」の「力学」は、「なるほど、その通りだな。」と腑に落ちた。相撲に興味がない方でも、筆者が力学を使って解析しているところは、読んでいて楽しいであろう。

私は、最近ほとんど相撲に関心がないのだが、日本好きのイタリア人の接待に一度、両国まで相撲を見に行ったことがある。
その時に、驚いたのが、力士と力士が立ち合いでぶつかり合う音である。

本書のように、物理学を使うと、「熱力学第1法則:エネルギー保存の法則」により、その音から衝突のエネルギーがいかに凄いか、分かる。

以上が、雑感であるが、考察の対象となっているのは全て、過去の「力士達」である。しかも、戦前の「力士」たちなので、よほど相撲に詳しくないととっつきにくいであろう。
私が知っていたのは「双葉山」だけであった。

筆者が行おうとしていることは、斬新で面白いのではあるが、物理学には「理論」と「実験」がつきものである。
物理学では、「実験」されない限りでは、「仮説」である。

筆者の「仮説」が我々の目で「実証」されることを強く望むむ。
その限りで、「現役力士達」編を書いていただければ幸いである。もっと多くの読者に筆者の力量が届くだろう。

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