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司法試験予備試験の実施方針について(読んでみた)

法務省のウェブサイトで、司法試験予備試験の実施に関する司法試験委員会決定等というページがあります。

そこにあったPDFファイルのうち、「司法試験予備試験の実施方針について」を読んでみました。

文書の日付は、令和3(2021)年6月2日のもので、令和4(2022)年11月16日改正とあります。

令和6年度のページにあったので、大丈夫とは思いますが、令和5年12月15日の試験公告の確認も怠らないようにしたいものです。


短答式試験について

まず、

短答式試験は、憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法及び刑事訴訟法(以下「法律基本科目」という。)並びに一般教養科目について行うものとされている。

とあります。

そして、「法律基本科目」の方針として、

  • 幅広い分野から、基本的な事項に関する内容を多数出題するものとする。

  • 司法試験の短答式試験において、過度に複雑な形式による出題は行わないものとしていることにも留意する必要がある。

という二点が確認されていました。以前記事に書かせていただいたように、受験者の平均点が4割以下の行政法や商法があるにも関わらず、「基本的な事項に関する内容」と書かれているということは、逆に、これらの科目が受験生にとって対策が難しかったり、後回しにされていることの反映かもしれません。

ともあれ、問われていることは基本事項ということを念頭に置きつつ、過度にビビらないようにしようと思いました。

一方、「一般教養科目」の方針としては、

人文科学、社会科学、自然科学及び英語の分野から、特定の分野に偏ることのないようバランスに配慮しつつ、多数の問題を出題し、その中から、受験者が一定数の問題を選択して解答するものとする。
学校教育法に定める大学卒業程度の一般教養を基本とし、法科大学院において得られる法曹として必要な教養を有するかどうかを試すものとし、その出題に当たっては、幅広い分野から出題し、知識の有無を問う出題に偏することなく、思考力、分析力、理解力等を適切に試すことができるよう工夫するものとする。
また、法律科目の知識のみで容易に解答できるような出題とはならないよう工夫する必要がある。

とありました。「学校教育法に定める大学卒業程度の一般教養を基本とし」とあることから、時事問題や社会情勢といった内容を問うというよりは、大学のテキストに載るような内容を問うような試験になるということかなと思いました。

続いて、「法科大学院において得られる法曹として必要な教養を有するかどうかを試すものとし」ともあることから、基本的な論理学のような問題や、時事的な問題も、登場の余地はありそうです。

一度受ければ、わかることかもしれませんが。

ちなみに、前記記事で調べた一般教養科目の平均得点率は驚きの35.3%。

無対策がデフォルトと思われます。

論文式試験

まず、試験科目については、

司法試験法第5条第3項及び同法施行規則第1条第2項において、論文式試験は、法律基本科目のほか、倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)及び国際関係法(私法系)のうち受験者のあらかじめ選択する一科目(以下「選択科目」という。)並びに法律実務基礎科目について行うものとされている。

とのこと。

  • 法律基本科目

  • 選択科目

  • 法律実務基礎科目

の3つが挙げられ、それぞれについて、出題方針も書かれています。

「法律基本科目」の出題方針には、

各法分野における基本的な知識、理解及び基本的な法解釈・運用能力並びにそれらを適切に表現する能力を問うものとする。法律基本科目のほかに法律実務基礎科目があること、司法試験において、更に同様の法分野に関する能力判定がなされることを前提に、予備試験の法律基本科目においては、基本的な知識、理解等を問うものとする。

と書かれていました。司法試験においても同様の法分野が問われることから、「予備試験の法律基本科目においては、基本的な知識、理解等を問うものとする」とされており、司法試験の問題とは異なる配慮の下に問題が作成されていることが窺われます。

僕はまだ、論文式試験の過去問題をほとんど見れていないですが、各法分野における、

  • 基本的な知識、理解及び

  • 基本的な法解釈・運用能力並びに

  • それらを適切に表現する能力

の3つを問うということが、どのように実際の試験問題に反映されているか、注意して見ておこうと思いました。

選択科目についても同様のことが書かれていました。

最後に、法律実務基礎科目について。これについては、そのまま引用します。

5 法律実務基礎科目

⑴ 出題範囲
民事訴訟実務、刑事訴訟実務及び法曹倫理とする。

⑵ 出題方針
法科大学院における法律実務基礎科目の教育目的や内容を踏まえつつ、民事訴訟実務、刑事訴訟実務及び法曹倫理に関する基礎的素養が身に付いているかどうかを試す出題とする。
法律実務基礎科目の出題範囲と法律基本科目の出題範囲との間に重なりがあるが、法律実務基礎科目の出題に当たっては、試験科目となっている実定法の出題範囲と重複する知識や理解を問うことも十分考えられることから、相互の出題範囲を区別するものとはしない。
法律実務基礎科目においては、実定法の理解が前提となるが、法律基本科目とは別に法律実務基礎科目があることを踏まえて、それにふさわしい出題となるよう工夫するものとする。

⑶ 問題数
民事及び刑事につきそれぞれ1問とし、計2問とする。
法曹倫理は、民事及び刑事の各分野における出題に含まれるものとする。

⑷ 配点
民事及び刑事につきそれぞれ50点とし合計100点満点とする。

⑸ 試験時間
民事及び刑事につきそれぞれ1時間30分程度、あるいは、併せて3時間程度とする。

「法科大学院における法律実務基礎科目の教育目的や内容を踏まえつつ」というのが、個人的には気に留めておきたいところです。

あと、「法曹倫理」ってなんだろう。

口述試験について

これも、出題内容について気になるところだけ引用すると、

第4 口述試験について
1 試験科目
司法試験法第5条第4項において、口述試験は、法的な推論、分析及び構成に基づいて弁論をする能力を有するかどうかの判定に意を用い、法律実務基礎科目について行うものとされている。
・・
3 出題方針等
出題範囲は、論文式試験の法律実務基礎科目と同様とする。
民事及び刑事について実施し、法曹倫理は、民事及び刑事の各分野にお
ける出題に含まれるものとする。
配点は、民事及び刑事について同一とする。
・・

出題範囲は、論文式試験の法律実務基礎科目と同じなのですね。

判定において考慮することとして、

「法的な推論、分析及び構成に基づいて弁論をする能力を有するかどうかの判定に意を用い、」

とあります。論文式試験において問うと書かれていた、

  • 基本的な知識、理解及び

  • 基本的な法解釈・運用能力並びに

  • それらを適切に表現する能力

との違いは、どういったところに出て来るのでしょうか。答えを話して終わりではなく、対話的なやり取りがあることを踏まえた出題がされるということでしょうか。

まとめ

予備試験とは別ページにある、司法試験実施に関するページにある資料とも比較しつつ読んでみると、別の気づきがあるかもしれません。

あと、蛇足ですが、論文式試験も含めた採点方法が書かれた、似た名前の別ファイル、司法試験予備試験の方式・内容等についての内容も非常に興味深かったです。論文式試験の採点方法が書かれており、採点における絶対評価的な側面と同時に、相対評価的側面も色濃くあるのが窺え、興味深かったです。

司法試験について書かれたものもありますが、ほぼ同内容でした。

司法試験の方式・内容等について

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