クラブチームと代表チームの違いについて考えてみる
カタールW杯が終わりました。
今回の結果として面白いのは 戦術 > 選手 という戦い方よりも 選手 > 戦術 といった戦い方の国の方が結果が出ていたように見えたことです。
ここで「選手 > 戦術 の方が優れている」といった結論にいたるのも早い気がしたのでクラブチームとの前提の違いからどうしてこのような結果になったのかを考えてみます。
異なる前提
準備期間が短い
クラブではシーズン開幕前から1か月以上の期間をかけて準備し、シーズンを通して成熟させていきます。
場合によっては数年がかりでの浸透もあります。
このようにしてチーム内で連携を深めていきます。
対して代表ではそのような準備期間もなくW杯も1か月で終わってしまいます。戦術の浸透を妨げる一要因と考えられます。
例外として、2010年のスペイン代表はバルセロナ、2014年のドイツ代表はバイエルンミュンヘンと代表内で同クラブの選手が多く決勝のスタメンの半分が構成されてしました。
2010年スペイン代表決勝スタメン
バルセロナ所属選手
・ピケ
・プジョル
・ブスケッツ
・シャビ
・イニエスタ
・ペドロ
2014年ドイツ代表決勝スタメン
バイエルンミュンヘン所属選手
・ノイアー
・ラーム
・ボアテング
・シュバインシュタイガー
・クロース
・ミュラー
・(クローゼ)
多くの選手が同一クラブでプレーしています。
従ってすでに戦い方の骨組みがある程度準備されていると言っても過言ではありません。
選手補強ができない
クラブでは毎年2回の移籍市場の中で選手の獲得を行います。
その中で弱点を補ったり層を厚くしたりと戦略的な行動が可能です。
しかし代表では選手獲得という概念がありません。
強いて言えば帰化選手の起用がありますがクラブの補強に比べたら非常に高いハードルであることには変わりません。
このことから代表チームはクラブチームと比べて個々の選手の能力がデコボコに、層も薄くなりやすい傾向にあります。
短期決戦で初見の相手ばかりで負けたら終わり
クラブチームなら1年のリーグ戦で最低2回は同一チームとの対戦があります。
しかしW杯ではグループステージで対戦したチームと再度対戦するのは決勝戦または3位決定戦です。
さらにノックアウトステージなため今目の前の試合を勝つことがより重要になります。
奇襲のような選手起用が発生するのもこれが大きいのかもしれません。
代表チームにおける最適化とは?
クラブチームとは異なる前提条件
短い期間で準備した限られた戦力で短期決戦を勝ち続けるにはどうするべきかについて考えます。
わかっていても対策の難しいことをする
戦術○○やアンチフットボール的サッカーになります。
①絶対的なストライカーを活かすためそのストライカーに最適化したチーム作りを行う
②徹底的に守りを固めて足の速い選手でカウンターする
①は特別なストライカーを必要としますが②は快速の選手がいれば成り立ちます。
対策も①はそのストライカーにボールを供給させず孤立させるマネジメント、②は人数をかけられた守備を崩せる連携または理不尽なゴールのできるストライカーが必要で制約の中で実現は簡単ではありません。
相手の想定外を突く
奇襲です。
ある選手のよく起用される形とは別の起用をします。
普段の起用よりも最大値は低くても相手の対応が遅れることで優位に立つ形です。
もちろん失敗すれば選手の力も出せなくなり批判の的になりますが、それを恐れる監督はW杯で指揮を執らないのではないでしょうか。
今大会の決勝戦もディマリア左サイド起用という奇襲がありました。
自分たちにとっての制約は相手も同じであることを利用することがカギなのかもしれません。
さいごに
今回このように考えてみて思い出したことがあります。
野球の何かの本で「レギュラーシーズンと日本シリーズでは勝つための采配が変わる」といったことが書いてありました。
リーグ優勝のためなら複数の負け試合を作ることも許容できますが、短期決戦ではそうもいかない。W杯と構造が類似しているのかもしれません。
また、サッカーに様々な制約があるため「こうするのが正解でそれ以外は間違っている」といった考え方は避けたいところです。
「Aをするのに最適でないBを起用する」といった采配は見たくないところですが。
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