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黒井ひとみ さん 10年目(周年作)レビュー(ちょいネタバレありかも。注意!)

黒井さんの2回目の演目がヤバかった。使われていた曲が沁みちゃって…なんというか、踊り子の悲喜交々が感じられて、とても刺さった。


ここからは、演目について僕の解釈。



踊り子という仕事を続けて10年。
楽しいこともつらいことも、大体経験してきた。
なんでここに居るんだろうと忘れかけてしまうこともしょっちゅうだけど、ここまでやってきたことには違いない。

悩みはいつだってある。
劇場に呼んでもらえなくなったり、新しい振りを覚えなければいけなかったり、振り起こしだって大体忘れている。自分よりダンスが上手い子、若くてかわいい子は次々入ってくるし、写真が売れなくて惨めな気持ちになったり、そもそもお客さんを呼べなかったり、情熱を持って踊っても、全然伝わっていなかったり、どうすればもっと伝わるんだろう。あと何年この仕事ができるかなんて見当もつかないし…そんな不安。潰されそうだ。

だけど自分の演技を見て、感動したと涙を流す人がいる。わざわざ手紙にしたためて応援してくれる人がいる。いつでもじゃないけど、写真に長蛇の列ができることもある。記念のイベントではみんなからおめでとうと祝福される。そして何より自分自身が、踊る事に最高の喜びを感じる瞬間がある。客席の皆んなと通じ合えたと思える、気持ちの高揚感がある。

そんなやりがいと不安の狭間で、それでも前を向くよっていうメッセージを届けたいんだ。



いつだって元気ってわけでもないし、だからって嘆いてばかりのペシミストで終わらないのが黒井さんらしいなあと思った。

でも改めて、今が楽しければ楽しいほど、いつか終わりの日が来て、寂しくなるなとも思った。

最近読んだ本の一節。

永遠の、限りないものに憧れる。でも、限りあるものほど、いとおしく思える。

いつだって満面の笑顔で見つめてくれる彼女。
いつ終わっても、何の悔いもないと言っていた彼女。
でも僕は、いとおしい人が踊る姿を、できればいつまでも見られますようにと思う。

限りあるいとおしいものを、いとおしいままにはできないんだ。



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