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パンピーが治安の悪い街でラッパーになった結果www 「パンピー、渋谷へ行く Vol.3」

ちょっとずつ慣れてきた渋谷

それから何度か渋谷に行くようになって、手の届かない場所だった街にもちょっとずつ慣れてきた。

チーマーがいるらしいという噂で足を踏み入れなかったセンター街も、何度か行くうちに「早い時間帯なら、たぶん大丈夫」という事が分かった。(と、いうか夜センター街を歩く勇気はさすがに無かった)


ちょっと話がそれるけど、当時センター街には「ジミー」という自称ラッパーのおじさんがいつもいた。(知ってる人いるよね?)

ジミーは遭遇すると、いつも女子高生に囲まれていた。色んな芸能人との2ショット写真を持っていて、それを見せびらかしていた。

本人曰く、芸能会の事情通。

なんだか嘘臭かったけど、「キングギドラ、復活するらしいよ」って97年くらいから言っていたから、おそらく本当の事情通なんだろう。(ちなみにギドラは96年に活動休止、02年に奇跡の復活を遂げた)

ジミーは僕たち中坊と分け隔てなく話してくれた。
彼、まだセンター街にいるのかな?

おっと、話を戻そう。

渋谷も慣れてくると勝手知ったる足取りで、部活が休みの日にちょこちょこ行くようになった。

もう、地図のコピーは必要ない。
お金を少しずつ貯めて、服やCDやレコードを買った。まだネットなんて普及していなかった当時、地元だと絶対手に入らない物がたくさん渋谷でゲットできた。

個人的には日本語ラップのインディーズのCDを買うのが楽しみだったな。タワレコの視聴コーナーには本当に何時間でも居れた。
お金が無いから厳選に厳選を重ねて…珠玉の3枚をお持ち帰り。
帰りの電車でカリカリってビニールを開けて、歌詞カードを読みふける。
家に着くとダッシュでラジカセに入れて、再生ボタンを押す瞬間は、世界で一番幸せな時間の一つだった。

あの時のCDは、まだ大切に実家にとってある。

パンピー、やっぱり渋谷でからまれる

しかし、やっぱりというかもちろんというか、渋谷で怖い目にあったこともある。

欲しいCDがあって、一人で買い物に行った時、道端で露店を開いていた

↑こんな感じの外人のアンちゃんに声をかけられた。(当時、この手のダークな露天商はそこら中にいた。)

「オニイサン、ミテッテクダサイ!」

煌びやかなアクセサリーが目に止まり、つい立ち止まってしまった。

「ドレキニナル?」
「えっとじゃあ…この指輪、ちょっとハメてみてもいいですか?」
「イイヨ!アー!ヨクニアウヨ!コレオカイアゲネ!」

どうみてもサイズが合ってない。大きすぎる。

「いや、ちょっと待って下さい。これサイズ違うので…」
「アーソウネ!サイズチガウ!ナラ、チョウセイデキルネ!」
「ええ?本当ですか?」

そのアンちゃん曰く、前の道を更に真っ直ぐ100メートルくらい行ったところに自分の露天商仲間がいるという。
仲間は鍛冶工でもあり、指輪のサイズを簡単に調整できるとのことだった。

「わかりました。この道を真っ直ぐですね?」
「ハイヨ、ジャアゴセンエンネ!アリガトイッテラッシャイ!」

指輪の代金を支払い、アンちゃんの仲間の鍛冶工の元へ向かう。
先に携帯電話で僕が来ることは話しておいてくれる、とのことだった。

しかし、歩けど歩けど誰もいない。

100メートル…200メートル…

300メートルくらい歩いたところで気付いた。
コレ、嘘だ!

「だ、誰もいねーじゃねえか〜!」

僕は見事に騙されてしまった。

急いで早歩きで元来た道を戻る。
あのアンちゃんは、まさかもう元の場所にいないのか?
店じまいして、どっかに消えてしまったのか?

戻ってみると、アンちゃんは同じ場所で拍子抜けするほど普通に接客していた。

「すいません!言ったとおり歩いて探したけど、誰もいなかったんですが!」

チラっとこっちを見た。
が、無視して接客を続ける。

「すいません!聞いてます?」

少し大きな声を出したが、それでもガン無視を続ける。

「もう!警察呼びますよ!」

ピクリ。

その一言でアンちゃんが動いた。

「テメー!フザケンナヨ!」

突然鬼の形相になったアンちゃんに、
胸ぐらをつかまれ持ち上げられた。

外人パワー。僕、そんなに体重軽い方でもないのに。

「は、離して!」
足をジタバタさせる。

「オイクソガキ、ハシタガネイラネーカラ、キエロ!ニドトツラミセンナ!」

さっき払った5000円を投げつけられる。
僕は走ってその場から逃げた。

それ以来、僕は道端の露天商で買い物をすることは二度と無かった。


キラキラしていて楽しくて、やっぱりちょっと僕にはエキサイティングだった渋谷。

次回はそんな渋谷編最終回。運命を変える出会いのお話。

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