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パンピーが治安の悪い街でラッパーになった結果www 「治安の悪い街の普通の中学生 Vol.3」

Ghetto矢部駅前ロータリーに
たまり場のコンビニ
どっかに行ったらどっかに誰かいる
一人でも一人じゃない
YOSROMANTIC
「手紙」

うちの中学を卒業した先輩に、Oさんという先輩がいた。

在学中は剣道部の主将なのにヤンキーで、喧嘩が強いで有名だった。
中学を卒業後は自分で暴走族を作って活動しているらしく、よくバイクで町内を走ってる姿を見かけた。

Oさんにに会うと、俺たちはアウト。(韻踏んだ) 

夜道を自転車で走っていて
「コッコッ」
って舌を鳴らす音が聞こえて振り返るとOさんが立っていた。
Oさんはいつもこう言った。

「お前ら今日、いくら持ってる?」

チーン。終了。
かあちゃんにもらった500円とか1000円とかの少ない小遣いを、毎回全部持っていかれた。

意味もなく朝方まで連れまわされることもあった。(僕たちはこれを「ハマる」と呼んでいた)

お金を取られる…
朝まで連れまわされる…
どちらにしても、中学生にとってはかなりきつい。

Oさんに会うのが嫌すぎて
「ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な…」
なるべく遭遇しない道を神様に聞いて選ぶ。
確率は2分の1。つまり2日に1回。
結局、今日もまたOさんに遭遇するのであった。


棒を持つと強いかも

そんなある日、駅前のたまり場で誰かがポツリと言った。

「もうOに振り回されるのは限界だ!あいつ皆でぶっとばしちまおうぜ!」

湧くたまり場…!

「…そうだよな…そうだよ!俺らみたいな中坊から金取りやがって!」
「皆でやりゃー絶対勝てるよ!」
「ガツンとカマしてやろうぜ!」

決起集会よろしく、Oさんに復讐してやろう!そんな話が繰り返される。

しかし、その話題になると必ずと言っていいほど誰かがこう言った。

「でもよー…Oさん、剣道部の主将だったんだろ?棒を持ったらさ、喧嘩クソ強いんじゃね?」

鬼に金棒ではなく、Oに棒。
剣道部の主将の剣術…。

「だよなー」
「剣道部の主将だもんな…」
「モメたとき近くに棒があったらおしまいだよな…」

結局ビビる俺たちだった。

数日後。
Oさんにまたお金を取られたヤツがいて、いつもの話になった。

「あいつやっちまおうぜ!」

でも、また誰かがあの台詞を言う。

「Oさん、剣道部の主将だぜ?棒を持ったら…」

その時だった。
痺れをきらしたやぐっちゃんが、遮るように、大きな声でこう言った。

「お前らよー!いつも棒を持ったらって言うけどよ…。」

「棒を持ったらその辺の小学生でもまあまあ強いからな!」


……

シン…とした静寂を抜けて皆が我にかえる

「たしかに」
「たしかにそう」
「そりゃそうだわ」

剣道部の主将じゃなくても、棒を持ったらまあまあ強い。
そりゃそうだ。

満場一致で全員納得。

棒を持ったら、O先輩だろうが子供だろうが、
きっと俺たちは敵わない。

「ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な…」


結局、今日もなるべく遭遇しない道を占って歩くのであった。

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