内向的な帰国子女が自力で英語習得できた理由
ぼくは中学時代をサイパンで過ごした帰国子女なのですが、「海外で3年間暮らした=ネイティブの出来上がり!」というふうにスムーズに英語を取得できたわけではなく、むしろ日本帰国後に英語力が上がっています。
「帰国子女=誰でもネイティブ化」というイメージ
3年半の社会人生活のうち、2年間は語学ソフトを店頭販売する仕事をしていました。その時、特に日々感じていたのは、接客中にぼくが帰国子女だという話を出すと、「じゃあ、喋れるよね」と心の中でお客さんが言っているような気がしてならなかったんです。
もちろん、当時はそれをなんとか自分なりに良い方向に持っていっていましたが、帰国子女と聞くと、ネイティブと非ネイティブみたいに、心理的に距離が生まれるのではないかと悩んでました。
そこで、今回は3つの理由を踏まえて、「いやいや、帰国子女のぼくだってそれなりに苦労して習得したんですよ」というのを伝えればと思います。
理由 1.) 性格が内向的だった
まず、語学力を鍛える上で大事なのは、実践(=喋る環境)です。でもぼくは性格が内向的なので、現地の学校ではあまり喋りませんでした。あまりに静かなので、先生が親に「Yoshiは大丈夫か?」と相談したそうで、それくらい喋りませんでした。
世の中には、1年間の留学をしてしっかり英語力を身につけて帰ってくる人と、そうでない人がいますが、ぼくは明らかに後者の人間です。サイパン生活に慣れるのに、まず1年かかったほど。3年間住んだ帰国直前のときでも、友達にRとLの発音を指摘されていました。(rice[米]とlice[シラミ]など)
理由 2.) そもそも英語に興味がなかった
語学力を鍛える上でもっと大事なのが、自分のやる気。たとえ目の前に、最高の環境があったとしても、やる気がないと”宝の持ち腐れ”です。
留学と違い、帰国子女の場合は多くのケースが自分の意志よりも、外的要因(親の転勤など)によって海外に飛び出す場合が多いので、自分のやる気が伴わない状態で海外暮らしをすることもあります。この、"環境"と"やる気"がうまくマッチングしないと、なかなか上達しません。
理由 3.) スケボーに熱中しすぎた
サイパンでは、スケボーにどっぷりハマっていました。ほんとにスケボーしかやってませんでした。平日は学校から帰ったら、1、2時間家の前でスケボーの練習。テレビはほとんど観ず、スケボーのビデオを観るときにテレビを使うのみ。技がうまくいかなかったら、ビデオをスーロー再生して研究。週末は友達と1日中スケボー。ほんとハマってました。スケボーバカでした。
サイパンで一番英語を喋っていた相手がスケボー仲間だったので、そう考えると、少なからず英語の上達にはなっていたかもしれません。でも、逆にスケボーばっかりになることで、機会損失も生まれていたかもしれません。
この3つの理由が、帰国子女のぼくでもスムーズに英語が習得できなかった理由です。
・性格が内向的だった
・そもそも英語に興味がなかった
・スケボーに熱中しすぎた
でも今は、日常会話はほとんど問題ないくらいに喋れます。日本語で言えることは、英語でもほぼ表現できます。
帰国後の英語力が上がった理由
簡単にいうと英語を心から好きになったからです。この「好き」という解釈は色々あると思うのですが、極端な例を出すと、もし日本語か英語どちらかが明日から喋れなくなる状況に出くわしたら、ぼくは迷わず日本語を捨てます。英語が喋りたい、ではなく、必要なんです。
これが心からしっかり思えるようになると、 「やらなきゃ」とか「勉強」という意識が吹っ飛び、一生学び続ける姿勢ができあがるので、勝手に語学力は上がっていきます。死ぬまで一生。
前半の理由2「そもそも英語に興味がなかった」で、語学力アップにおける"環境"と"やる気"について触れましたが、 ぼくの場合は、サイパンでは"やる気"が欠けていました。
でも、日本に帰国した途端、「せっかく英語を少しは身につけたんだからキープしないともったいない」という意識が生まれ、"やる気"がやっとでてきました。
しかし、そこはもう日本。"環境"はなくなっていました。日本に帰国してからは高校生になったので、お金に余裕はなく、教室に通う選択肢も当然なかったので、洋楽や洋画など、身近なトピックから英語に触れていきました。
例えば、洋楽なら大好きな歌手の曲を、歌詞を覚えて発音をマネしていました。実家から駅までの10分の自転車通学時間に、よく曲を口ずさんでました。
習得のお世話になった美発音女性アーティスト3人
個人的に、発音が綺麗で聴き取りやすい(もちろん曲も好きです)アーティストは、アヴリル・ラヴィーン、ミシェル・ブランチ、テイラー・スウィフトの3人です。
発音の綺麗さはアヴリル・ラヴィーンとテイラー・スウィフトが断トツですが、ミシェル・ブランチの場合は、Rの発音がほんとにキレイです。
例えば、Goodbye to You という曲の「feels like I'm starting all over again.」という歌詞の over again(オーヴァーアゲイン)がほぼ合体して overagain(オーヴァーラゲイン)と聞こえるくらいRをしっかりと発音します。
また、アヴリル・ラヴィーンは、元々音楽に興味が全くなかったぼくを「Sk8er Boi」という曲で音楽の世界に引き込んでくれた貴重な存在でもあります(スケボーバカだったので)。
3人とも歌詞の内容は日常的な表現なので、 そのまま会話に活用できそうなものがたくさんあります。(アヴリル・ラヴィーンはたまに歌詞に damn や shit などのスラングを入れるので注意)
あと、これはかなり後になってから(帰国してから3〜4年後)ですが、好きなアーティストが出演しているTV番組などをみて、そこからフレーズを覚えていったりもしています。
大好きな洋画のセリフをとことんマネする
そして、洋画について。とにかく自分の大好きな洋画を選びました。"やる気"が大事なので、何度も観ていて好きすぎるくらいの映画です。
最初は好きな人物のセリフを覚えてみました。全編を繰り返し観るのではなく、好きなシーンを何度も繰り返して観てはマネをしていました。
Photo credit: Greenleaf Designs
あとは、英語音声、英語字幕で観る機会を増やしました(これは慣れてきてからがいいです)。ただ、あくまで流れや雰囲気をつかむことが大事なので、知らない単語がでてきてもすぐに調べず、何度も何度もセリフで出てきてどうしても気になった単語だけ調べて覚えていました。1つのシーン(もしくは映画)で、1つ新しい単語(フレーズ)を覚えるくらいのペースです。
個人的に大好きな俳優は、ブラッド・ピットです。洋楽で紹介した3人のアーティストの発音の聴き取りやすさに共通するのですが、ブラッド・ピットの発音はほんと心地いいです。
『ファイト・クラブ』『イングロリアス・バスターズ』などでは強めの命令口調、『ジョーブラックをよろしく』『ベンジャミンバトン 数奇な人生』ではゆるやかな優しい口調で、どんなテンションでも聴いていて心地いいです。
(イングロリアス・バスターズでの発音は、めちゃくちゃ訛っているので未だに全部は聴き取れないですが)
『ダークナイト』も大好きで(アクション映画で断トツで好き)、故ヒース・レジャー演じるジョーカーのあまりのかっこよさに惚れてしまい、セリフを何度も覚えていました。
映画で英語を覚えるもうひとつのメリットは、その単語(フレーズ)がすでに会話で活用されているので、活きがいいです。辞書で調べて覚えることと、会話でそれが使えるようになることの間には、すごい差があります。映画だとここのショートカットがしやすいです。
もし音楽や映画から英語に入るのであれば、ぼくがいま好きな人物を紹介したように、自分なりのお気に入りの人や作品を見つけてみるといいです。
音読、独り言の重要性
あともうひとつ大事だと感じたのが、話し相手がいなくても、自分で喋って練習する気持ちです。話相手がいればもちろんベストですが、いたとしても毎日会える環境にはなりずらいので、自分自身で口に出すことが重要です。
練習しているフレーズをブツブツ1人のときに練習したり、あと慣れてきたら記事や洋書の音読をすることも大事です。強制的にやるようではいけないので、時間をかけて温度を上げていき、「やってみようかな」と興味が出てきたくらいでやるとよいですが、話相手がいなくても英語を口に出す環境を作ることは、振り返ってみると想像以上に大事でした。
自分の好きなトピックから英語に出会う
もし、洋画や洋楽が好きでなくても、自分の好きなものから英語に繋げることはいくらでもできると思います。
スポーツ観戦が大好きなら、選手名やチーム名のスペルを覚えてみる。観戦中に英語で応援してみる(自分の部屋のテレビの前で)。関連ニュースを読んだり、聴いたりしてみる。
スイーツ作りや料理が大好きなら、英語で材料名やレシピを覚えてみる。作っているときに「次のステップは...」と英語で独り言を言ってみる。外国人に英語でレシピを説明できるようになったらたいしたものです。
(上の動画はイギリス英語です。人によってはこちらのほうが聴き取りやすいこともあるので、あえてイギリス英語を選ぶのもいいかも)
目立って好きなものはないけど散歩は大好き、という方。じゃあ、散歩で出会う街の様々なもの、色や建物、動物、植物などを英語で考える癖をつけてみてください。慣れてきたら「あ、朝顔、今日も咲いてる」といったことを独り言で言ってみたり。(変な人に思われないよう、小声もしくは心の中でもいいです)
未来のシチュエーションの予行練習をする
ある程度口に出せるフレーズがたまってくると、なんとなく会話もできるような感覚になってきます。そうしたら、自分でシチュエーションを妄想して(笑)、それを何度も練習すると少しずつ自信もつきます。
例えば、最初は自己紹介のシーンが多いでしょうから、簡単な紹介と、1つ大好きなトピックについて語る。そんな想定で何度も練習してみます。自信がついてきて喋り相手が欲しくなってきたら、実際に人と会って喋ってみると楽しいですよね。
LIKE を LOVE にするまでの流れ
1. 自分の大好きなトピックを選ぶ
(この選定は意外と大事なので、時間をかけてもいいくらい)
2. そのトピックを通して英語の単語やフレーズを覚える
3. 英語がだんだん好きに、楽しくなってくる
(この段階では、まだ"心から好き"の一歩手前。好きな理由を言えるということは、まだ好きになれる証拠です)
4. そのまま継続
5. 英語がどんどん好きになって、もう理由がなくなる。よくわからないけど英語が好きな状態に = 心から好きな状態
6. 一生英語を学び続ける
まずは、英語を好きになることから
英語を心から好きになれば、「やらなきゃ」が「やりたい」に変わります。ぼくはこれがスムーズにできたからこそ、帰国後に英語力を上げることができたんだと思っています。
『中学英語を3週間で総復習』みたいな本を買うくらいなら、まず「どうやったら英語を心から好きになれるか」という視点で向かい合ってみると変わるかも。
教材は本当に溢れかえっているので、体系的に学ぶことはいつでもできます。ちょっと好きではなく、心から好きになる方法を考えることが一番の近道のはず。
売っている教材が自分のためだけにつくられたものならいいと思いますが、そうではないので、「自分が英語を心から好きになれる教材」は、自分でしか作れないと思います。
そのきっかけとして、ぼくの習得方法が少しでも参考になればうれしいです。
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