【百年ニュース】1920(大正9)10月11日(月) 飯野吉三郎が原敬首相を訪問。皇太子裕仁親王の欧州渡航問題について。貞明皇后は渡欧反対。皇后は華族女学校時代の校長だった下田歌子を深く信頼し,この問題も相談。下田は特別な関係にあった飯野を通じ原に渡欧中止を働きかける。
「飯野吉三郎が下田歌子に賜りたる皇后陛下の御内書を持来し、いろいろに内話せしことありしが、今回も皇太子殿下御洋行のことにつき(皇后)陛下は御心配のこと多く御渡欧を好ませられざるも、元老ら切に申し上ぐることにつき一概にお断りも難く相成り、色々御心配にて下田に意見を求められたる由、御内書持参にて内話せり。この如きことは飯野らの議すべき事柄にあらざること勿論なるが、下田が陛下御教育の旧関係より御下問を受くるものにて、これを飯野に内話するは下田の不注意なれども、すでにこの如きことにある以上は、誤る方向にお導きをなしてはかえって恐縮の次第なれば、余は陛下の御心配は聖上の御病気と皇太子殿下のご健康等に基づかせらるることと推察し、ごもっとものことと思えども、元老らの切言も国家の御為めを思うより出たることなれば、強いて御容認なきも如何のものにや、ゆえにかなり早く御渡航ありてかなり速やかにご帰国あることに御決定あらば御心配の点も幾分か除かれ、内外ご都合宜しからんと言いたるにより、飯野はこれを下田に内話すべしと言えり。この問題もなかなか面倒のことの様に思わる。」
『原敬日記』(1920年10月11日条)
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