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【百年ニュース】1921(大正10)11月24日(木) ニューヨーク市長ジョン・リンゼイ誕生。イェール大学ロースクール卒,弁護士,下院議員を経て市長に。ニューヨーク五番街で世界初の歩行者天国を実施。のち世界中に拡がった。1972民主党から大統領予備選に出馬するが敗れた。2000没,享年79。

のちのニューヨーク市長ジョン・リンゼイ(John Vliet Lindsay)がマンハッタンのウェスト・エンド・アベニューで誕生しました。父方の祖父はイギリス南東部のワイト島からの移民。父親のジョージ・ネルソン・リンゼイ(George Nelson Lindsay)は成功した弁護士で投資銀行家でもありました。比較的裕福な家庭で育ったと言えるでしょう。

ジョン・リンゼイはマンハッタンのアッパー・イースト・サイドにある私立小学校バックリー・スクール(Buckley School)、続いてニューハンプシャー州の名門私立学校セント・ポールズ・スクール(St. Paul’s School、SPS)、そしてイェール大学に進みます。大学内では名門のシークレット・ソサエティである「Scroll and Key」に加入し人脈を拡げました。

ジョン・リンゼイは第二次世界大戦では砲術士官として米国海軍に入隊し、中尉として欧州戦線のシチリア島攻略作戦に従軍し、のち太平洋戦線で日本軍とも戦いました。戦後イェール大学に戻るとロースクールに進み、1949年弁護士となって、ウェブスター法律事務所、シェフィールド法律事務所、フライシュマン法律事務所、ヒッチコック&クリスティー法律事務所などで活躍しました。

またジョン・リンゼイが弁護士となった1949年にはメアリー・アン・ハリソン(Mary Anne Harrison)と結婚しました。この二人の出会いは第41代アメリカ合衆国大統領ジョージ・H・W・ブッシュ(父親のほうのブッシュ大統領)の妹、ナンシー・ウォーカー・ブッシュの結婚式でありました。ジョンとメアリーの夫婦には三人の娘と一人の息子がいました。

1955年ジョン・リンゼイはアメリカの司法省に入省し、ハーバート・ブラウネル司法長官の補佐官となりました。1957年の公民権法案の起草にも関係し、共和党員でありながらリベラルな考え方を持つようになったと言われています。のち1959年から1965年までニューヨーク選出の共和党下院議員として活動しますが、必ずしも共和党の政策に賛成せず、一匹狼とも呼ばれました。

1965年ニューヨーク市長選挙に勝利し、1973年まで市長を務めます。この間公民権運動の高まりによりニューヨークでも人種間の緊張が高まり、ストライキが頻発したり、ベトナム反戦運動が高まったほか、市の財政がひっ迫するなど苦労の多い市政運営を余儀なくされました。再選された1969年の市長選のテレビCMでは「ニューヨーク市長の職務は米国大統領に次いで、米国で二番目にきつい仕事です」と言いましたが、事実その通りでした。

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ジョン・リンゼイのニューヨーク市政はそれほど評判が良いものではありませんでしたが、1970年7月11日にニューヨーク五番街で実施された世界初の歩行者天国の試みは、のちに日本を含む全世界に拡がり、重要なレガシーになっています。朝10時から夕方5時まで五番街でも最も高級なエリアの南北1.2㎞の車道が歩行者に開放されました。ティファニー宝石店がある57丁目の角から42丁目のニューヨーク公共図書館本館まで、多くのニューヨーカーが五番街の散歩を楽しむようになりました。

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1971年アメリカ大統領選挙の予備選が始まると、ジョン・リンゼイは共和党から民主党に鞍替えし出馬を表明しました。当初はメディアの注目を集め、資金集めにも成功しました。アリゾナ州やメイン州で2位につけるなど緒戦は健闘しますが、徐々に脱落し撤退しました。このときの大統領選挙の民主党候補はジョージ・マクガバンになりますが、1972年の本選では共和党の現職大統領リチャード・ニクソンがマクガバンを破り再選されます。またこのときの選挙で民主党本部に侵入し盗聴器をしかけたのが有名なウォーターゲート事件で、これにより1974年にニクソン大統領は辞任することとなります。

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さて民主党の大統領予備選に敗れたニューヨーク市長ジョン・リンゼイは1973年12月に市長の任期を全うすると、弁護士に復帰しました。またABC放送の「グッドモーニング・アメリカ」 のコメンテーター兼レギュラーゲストとしてテレビ出演し、その後も全米での知名度を保ち続けました。

1980年に政界復帰を目指してニューヨーク州選出の民主党上院議員候補に出馬するも、3位に終わり政界を完全に引退しました。2000年12月19日に肺炎とパーキンソン病の合併症を併発し死去、享年は79歳でした。

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