「スター・レッド」で描かれた愛の形
きみをひとりじめし
数千年の孤独をすべてうめたかった
(スター・レッド/萩尾望都/小学館文庫 P521)
拝啓 桜の蕾も膨らみはじめ、お花見の日が待ち遠しい時期となりましたが
先生はお元気にお過ごしでしょうか。
先日、先生の描かれた傑作、「ポーの一族」がドラマ化されたと聞き、
先生の漫画たちを読み返してみました。
おそらく先生の作品は9割がた、我が家に住んでいるのではないでしょうか。
私が好きなのは、「ポーの一」「11人いる!」「トーマの心臓」…傑作ばかりで悩ましいのですが、幾度となく読み返したのは「スター・レッド」です。
先生の漫画を私が評価するようなことを口にするなんて僭越すぎますが、
ストーリー性や独創性、芸術性、普遍的に読者を魅了する要素が詰まっていて、
私も囚われたひとりです。
「ポーの一族」はその世界観に時間も時代も忘れ入り込み、
「トーマの心臓」は読んでいるとまるで雨の静かな部屋の中にいるような静謐な気持ちに、
「11人いる!」はキャラクターのストーリーだけでなくキャラクターの可愛らしさも抜群。
「残酷な神が支配する」は漫画を読んで初めて、漫画の世界が夢に入り込んできて夜うなされました。
さて、冒頭で触れた一節が「スター・レッド」で最も好きな部分です。
エルグは消えてしまった星を追いかけて、惑星の共鳴に引き込まれてしまいました。
「ぼくは美しい星に住む美しい生命でありたかった」
「祝福され光と水の中にいつまでもいたかった」
美しい言葉たちですね。私は思うのです。
数千年の孤独を生きてきたエルグは、星と出会い別れ、孤独は癒されたのでしょうか。
己を開放することで、エルグは本当の己を取り戻したのでしょうか。
あの愛の形を私は羨ましいと思うのです。
先生、素晴らしい物語をありがとうございます。
スター・レッドは、SFとしても傑作です。火星人の超絶進化の過程や、目の見え方等、
SFの面白さを教えてもらったと思います。
これからもこの本や先生の描かれる漫画たちを読み続け、元気をもらいます。
先生も、お元気でご自愛なさってください。
これからも先生の創るものたちを楽しみにしていますね。
敬具
よしざね
※過去にブログで非公開で書いていた文章。なんと2016年のもの。書いたけど非公開の文章がいっぱいあった。なぜ。もう思い出せない。
好きな漫画家の書評があまりに少ないのではと思い、それならと自分が筆をとろうと思ってブログの開始を検討した。マイナーキャラの二次創作に渇望するオタクと同じだ。
過去にも似たようなことを考えてブログを作っていたことを思い出し、読み返したら全く考えが変わっていないことに絶望しつつ、noteに移管して公開してみようと思った次第。
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