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「地球星人」 村田沙耶香 著 新潮文庫

すごい小説でした。


主人公の奈月の住んでいる街には、蚕の繭のような人間の巣がぎっしりと並んでいます。人間は、オスもメスも、まずはエサを自分の巣に持って帰れるように訓練される。世界の道具になって、他の人間から貨幣をもらい、エサを買うのです。子供たちは、お勉強を頑張って、働く道具になること、あるいは、この街のための生殖器になることです。地球星人たちは、工場のパーツなのです。

普通の地球星人たちは、そうした世の中で幸せに暮らします。


ちゃんと洗脳されそびれた人は、「工場=「世界」から排除されないように演じ続けるしかないのです。


この小説には、凄惨な場面が出てきます。でも、それよりも、ちゃんと洗脳された人々の「幸せ」な生活の方が怖い。


子供の頃、現実の生活に現実感がなく、夢の世界が現実だと思おうとしていた自分を思い出しました。今でも、現実が嘘っぽく、作り物のように見えることがよくありますが・・・。



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