見出し画像

GPT(Generative Pre-trained Transformer)とTransformerは、こんなにも違うんだぞ


AIに関する話題になると、「GPT」と「Transformer」が飛び交うのをときどき耳にしますが、「どっちもトランスフォーマーって名前に入ってるし、似たようなもんでしょ?」なんて思ってるあなた、油断大敵です。実はこの2つ、AIの世界ではまったく異なる生き物なんです。「え、違うの?」と驚いた方、ここからは肩の力を抜いてください。
GPTとTransformerの違いについて、くだけた感じでお届けします。

同じ家族でも別行動!Transformer家の全員集合

まず、簡単に言えば、Transformerというのは一家の名前で、GPTはその中のちょっと変わり者の親戚って感じなんです。Transformer家は、エンコーダーデコーダーという兄弟が主役。ここでエンコーダーとデコーダーについて少し触れておきましょう。

  • エンコーダーは、入力シーケンス(つまり文章やデータ)を受け取り、それをコンパクトに「要約」して、次の工程に渡す役割を持つんです。例えば、翻訳タスクなら、原文を理解するのがエンコーダーの役目です。

  • デコーダーは、そのエンコーダーが作った要約(エンコードされた情報)を基に、目的の出力を生成します。翻訳の場合なら、エンコーダーが理解した原文をもとに、デコーダーが翻訳文を生成する、というわけです。

この二人は、お互いに密接に連携しながら作業を進める、まさに兄弟のような関係ですね。

エンコーダーとデコーダーの協力体制は、翻訳や要約など、入力から出力へと変換する作業で大活躍です。例えば、エンコーダーは「原文」を読み解き、デコーダーはその内容を元に「翻訳文」を生成する、といった具合にお互いを支え合います。

でもね、GPTはその兄弟たちとはちょっと違う道を選んだんです。なんと、デコーダーだけで独立しちゃったんですよ!

GPT、デコーダーだけで旅に出る

さあ、ここからがGPTの登場です。GPTは「Transformer一家のルールなんて気にしないぜ!」とばかりに、エンコーダーを放り投げて、デコーダー単独で旅に出ました。そして、旅先で彼が得たのは、「ひたすら次に来る単語を予測する」というスキル。これがGPTの特技なんです。

ここでのポイントは、GPTが自己回帰(Autoregressive)モデルというタイプだということです。自己回帰とは、過去に生成した単語やデータをもとに、次の単語を逐次予測していくスタイルのこと。文章を1単語ずつ生成していくたびに、既に作られた部分を参照して次の部分を作る、という流れです。例えるなら、作家が1行1行を書きながら、その場で物語を展開していくようなものです。

普通、AIが文章を作る時には、前後の文脈とかいろいろ気にしながら生成するんですが、GPTは「今までの文脈を参考に、次の単語はこれだ!」と、自信満々に予測し続けます。この自己回帰的なスタイルで、1単語ずつ、まるで作家が小説を書き進めるように、文章を生成していくんです。

GPTが「エンコーダーなんていらない!」って言い出したときは、Transformer家のみんながびっくりしたでしょうね。でも、これが実際には大成功。「次に来る言葉はこれだ!」と当てる力が強すぎて、今やGPTは生成AIのスター。チャットボット、文章生成、対話アシスタント、彼の活躍の場はどんどん広がっています。

Transformer家はバランス重視、GPTは自由重視

さて、Transformer家の基本的な生活スタイルは、「バランス重視」です。エンコーダーとデコーダーの両方をしっかり使って、入力と出力のバランスをとる。翻訳や要約といった、入力があって出力があるタスクでは、Transformerは無敵です。エンコーダーが文章をしっかり理解し、デコーダーがそれをもとに適切な返答を作る。家族の絆、これが彼らの強さです。

一方、GPTは自由を愛する旅人。彼のアプローチは「とにかく次の単語を当てる!」これだけ。入力がどうとかあまり気にしません。「デコーダーだけで何ができるか見てくれよ!」って感じですね。おかげで、彼は次から次へと自然な文章を生成する能力に磨きをかけてきました。特に大量のデータで事前学習したGPT-3やGPT-4は、もうすごいの一言。彼は全知全能に近い存在かもしれません(少なくともテキスト生成の分野では)。

注意機構?ここでも違いが!

さて、ちょっと技術的な話になりますが、TransformerとGPTの間にはもう一つ大きな違いがあります。それは**注意機構(Attention Mechanism)**の使い方です。注意機構とは、シーケンス内のどの単語が重要で、他の単語とどう関係しているかを評価するメカニズムです。これにより、モデルは文脈をうまく理解し、適切な情報に注意を払えるんです。

Transformerは、この注意機構を最大限に活用します。エンコーダー内では、全ての単語が他の単語に「どれくらい注意すべきか」を動的に決めて、重要な情報をピックアップします。そしてデコーダーは、エンコーダーが生み出した「重要度の地図」を参考に、正しい出力を生成します。つまり、エンコーダーとデコーダーがお互いに「注意」を払って協力し合っているんです。まさに共同作業ですね。

ところが、GPTは「いやいや、俺は一人でやるから」とばかりに、自己注意だけで進めていきます。これがマスクド自己注意と呼ばれる手法で、過去の単語だけを参照して、次に来る単語を予測するんです。未来の単語を見ることは禁止されているので、常に過去の情報に基づいて判断を下していく。これもまた、GPTの自由奔放な魅力の一つです。

スケーラビリティ?GPTはビッグドリーマー

そして何と言っても、GPTのもう一つの魅力は、そのスケーラビリティ。彼はパラメータを増やせば増やすほど強くなる「筋トレ大好き」なタイプです。GPT-3は1750億パラメータ、GPT-4に至ってはそれ以上。彼は大きくなればなるほど、文章の生成能力が飛躍的に向上します。

対して、Transformer家はちょっと慎重派。もちろんパラメータを増やして強くなることも可能ですが、彼らは「ちゃんとバランス取らないとね」と冷静な顔をしています。規模を大きくするのもいいけれど、エンコーダーとデコーダーの連携を最適化することに重きを置いているのです。

まとめ:異なる強み、異なる魅力

まとめると、TransformerGPTは、同じ「Transformer一家」の名前を冠していながら、実は全然違う道を歩んできたのです。Transformerは、入力と出力のバランスを取り、慎重にタスクを遂行する優等生。一方のGPTは、自由と生成を愛する冒険者。次々と単語を予測しながら、想像を超える

テキストを生み出すスター。

だからこそ、どちらが優れているかというのは一概には言えません。状況に応じて、彼らの力を引き出すことが大事なんです。翻訳や質問応答ならTransformer、創作やチャットボットならGPTと、使い分けるのがベストでしょう。

そう、GPTとTransformerはこんなにも違うんです!だからこそ、AIの世界の仕組みを知ることがんなに興味深いんです。

【重版出来】AIアプリをプログラミング不要で開発する書籍

ChatGPTでAIアプリを作って仕事で使いたい方と世界に公開したい方へ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?