高1公共の学年末テストでChatGPTを用いた問題を出題した件
昨今、教育現場ではOpenAIが開発したChatGPTなどのGenerative AIとどう付き合っていくのかが話題に上がっていますが、私の担当する高校1年生の公共の学年末テストで、ChatGPTについての問題を出しました。
元々、ChatGPTが正式にリリースされてから、どのように教育に取り込んでいこうか、私自身色々と考えていました。試験に出すにあたっても、単にChatGPTという流行り、単語そのものを書かせても面白くない。また、ChatGPTについてどう思うか?など、生徒の価値判断を問う問題も面白いとは思いましたが、ChatGPTの使用有無やAIについて持っている前提知識によって差が出てしまう懸念もあり、それは別の機会にしたいと思います。学校教育においてAIをどのように活用すべきか、生徒自身がどのように考えているのかはぜひ聞いてみたいですね。
ちなみに、授業中にChatGPTについてちらっと話した際の反応では、クラスの中にもChatGPTを自分自身で実際に触って、色々と試している生徒もちらほら。さすが、最近の中高生の情報感度と行動力は素晴らしいです。ただ、全員が同じレベルではなく、学校支給のパソコンではアクセスが限定されていることもあり、授業中にクラス全体でどう使っていくのかは今後の課題だと思います。
出題方法を色々と考えましたが、方向性としては、ChatGPTの回答内容をそのまま使い、それを題材に考えさせる問題を作ることにしました。でも、チャットボット型AIにどのような質問をして、どのような回答を問題に仕立て上げようか?これを考えるにあたって教員側が認識しておくべき点は、よくChatGPTをはじめチャットボット型AIの返答内容には間違いがある可能性です。GoogleによるBardのデモの際に、宇宙望遠鏡についての回答に誤りがあると指摘を受けたのがその一例です。この間違った回答があることを逆手に取って、試験においてもChatGPTの回答における間違いを指摘して、正しく記述せよ、という出題も考えられます。
でも、この形式はやめました。それは、「やっぱりAIはダメだね」と安易に結論づけるような流れにもしたくないからです。新しいテクノロジーを、保守的な立場から叩くのは簡単ですが、新しい可能性の芽をつぶしてしまうのは、対象がなんであれ望ましい傾向ではないと思っています。そこで、最終的には、ChatGPTの回答は確かに正しいのだけれど、それ以外にもあるはずだ、ということを記述する試験内容にしました。
このようにすることで、ChatGPTからの返事を批判的に考察して、別の視点から建設的に議論を補完する、という考え方ができるようになります。これこそが近い将来におけるAIの活用方法のひとつなのではと思っています。
加えて、今回の出題内ではChatGPTの回答から抜けて落ちているものはひとつに限らず、複数指摘できます。そのため、生徒には選択肢と回答の幅があります。その分採点には手間がかかるのですが、このような答えがひとつではなく複数ある問題は私の好みです。
さて、実際に出題した問題文はこちらです。画面上ではやや読みづらいですが、生徒はこのスクリーンショットが貼り付けられたB4サイズの問題用紙を読んで試験に取り組みました。
私の勤務校のうちの一つでは、公民科を英語で教えているので、試験問題もすべて英文なのですが、日本語にすると次のような問題文になります。
生徒も、さすがに試験問題の文中にChatGPTの回答がそのまま載った問題が出るとは思ってはいなかったと思います。問題の内容自体は学んだ内容なので回答できるのですが、こういった形式で出題するとは事前に伝えていません。そのため、「あの先生、やりやがった」「出たよ、変な問題」と軽く殺意を覚えた生徒もいると予想します。それでも、生徒の解答用紙を採点すると、「ChatGPTもまだまだですね。かわいいベイビーみたいなものですね(※筆者注:元の回答言語は英語)」という微笑ましい内容もあり、生徒もそれなりに楽しんで書いてくれたのかもしれません。
ところで、このリーマン・ショックとモラルハザードの関係。このnote記事では、問題の内容そのものには触れませんが、この3学期に生徒たちと金融危機について、関連するハリウッド映画のいくつかの場面を鑑賞しつつ時間をかけて学びました。このリーマンショックの授業内容については、次のnote記事で紹介したいと思います。