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【聞いた】飲食店の人材不足を解決する一手に スポットワーカーが活躍する「THE 赤提灯」


「よしだけいすけの飲食店最前線巡り」シリーズ21回目は、2023年5月に新橋にオープンした居酒屋「THE 赤提灯」。ニュースでも話題になりましたが、アルバイトスタッフが全員スポットワーカーという特殊な運営をコンセプトにしています。多くの飲食店が人材不足の一方で、その日初めて来たスタッフだけでの運営は現実的なのか、お店におじゃましつつ、株式会社タイミーの方にお話をうかがいました。※本記事はグルメメディア「Food Clip」に2023年6月から掲載していたものを再編集したものです。

お話をうかがった方

株式会社タイミー
BX部 PRチーム
松本 知世 氏
(2023年6月の取材時点)

まずは実体験!
新しくて懐かしい赤提灯の世界

新橋駅の近くにある居酒屋「THE 赤提灯」は、スキマバイトサービスでお馴染みの「タイミー」を提供する株式会社タイミーと、飲食店経営を展開する株式会社ミナデインが協業して立ち上げたお店。それぞれの強みが掛け合わせられていて、ニュースを読んだ時に「この事例が成功すれば、人手不足の飲食業界において強いモデルケースになる!」と感じました。

THE 赤提灯は、1階はカウンターのみの立ち飲みスペースで、2階は上の画像のようにカウンターやテーブル席があります。「赤提灯」と聞くと昭和レトロで、おでんと日本酒が並ぶようなイメージですが、お店のターゲットは若者たち。最高の一杯目で本当に美味しいお酒を知ることとスキマバイトをすることの、2つの「はじめて」体験をコンセプトにしていて、店内はいわゆる赤提灯のレトロさを醸しながら、赤いライトに照らされていておしゃれな空間でした。

「スキマバイト」で人材不足解消
機械化に頼らない接客スタイル

平日の19時頃に入店しましたが、店内の7割くらいがすでに埋まっていました。2階席には厨房に3人、客席に2人のスタッフがいました。席数は40席くらいでしょうか。キッチン、客席、階段スペースに遮蔽物がなく、どこからでも見渡せて、お客さまがスタッフを呼ぶ声や、スタッフ同士の目配せもしやすいレイアウトでした。

スタッフさんに声をかけると、2階席で営業に当たる5人の内2人が正社員、3人がスキマバイトとのこと。見る限りはみなさん落ち着いていて、ドタバタ感は全くありません。胸にバッジを付けていて、おすすめメニューや趣味が書かれています。スタッフとお客さまの会話を作る工夫がされていて、働く側も淡泊に事務的にこなすよりも、お客さまと会話をしたり一緒に楽しむ時間を作ることが推奨されている印象を受けました。デジタル化の便利さの一方で失われつつある会話が大事にされていると感じます。

スタッフさんにおすすめを聞くと「もつ煮込み」とのことでオーダーしました。おすすめの理由も丁寧に教えてくれて、働く前にお店や商品の特徴はしっかり身につけていらっしゃることがわかります。

スポットワーカー主体の居酒屋と聞いて、お店に来るまでは、モバイル端末からお客さま自身が注文したり、セルフレジで会計したりなど、できるだけ省人化、デジタル化した環境かと想像していましたが、むしろその逆。注文も料理提供も会計もスタッフさんによる対応で、会話をしたり、接客に時間をかける姿勢に驚きました。

店名に「赤提灯」を入れている理由にも納得です。お店の狙いなどをこの後詳しくインタビューします。

タイミー広報の方に聞いた
このお店を始めた理由

ーー コロナ状況が終わり、飲食業界やサービス業も従前の売り上げや客数が少し戻ってきていると聞きます。一方で業界の人材不足は大きな課題です。その中でタイミーさんのサービスはそういった飲食店などの大きな支援になると感じますが、利用するお店はやはり増加傾向ですか?

非常に増えています。2019年比でタイミーに掲載された募集人数は46倍です。店舗など事業所数ベースでは13倍の11万拠点で導入いただいています。人流回復にともない賑わいを取り戻した飲食業界の伸びは特に著しく、直近4月は、飲食店の最繁忙期である12月の募集人数を上回りました。

ーー雇用主側のメリットだけでなく、働く方々にとってもメリットがありそうですね。
そうですね。興味がある業種を選びながら、好きな時に好きな場所で働けるメリットがあるとお声をいただいています。

ーーミナデインさんと協業して、タイミーから申し込んだスポットワーカーだけで運営するTHE 赤提灯を始めたきっかけと目的は何ですか?

飲食業を営むミナデイン社も、業界の人手不足に課題を感じていました。飲食店で働くことの魅力をもっと多くの人に知ってもらいたいこともあり、今回の協業にたどり着きました。ミナデイン社の飲食業界における人材育成の豊富な知見と、私たちタイミーのスポットワーカーの働く環境を整える知見を活かし、独自のカリキュラムを組んでいます。「THE 赤提灯」で繰り返し働くことでスキルの習得やスキルアップを目指せる仕組みを作り、タイミーのレビュー機能を活用してスキルアップ状況を可視化してモチベーションを高めてもらったり、別の飲食店で働くきっかけにもなると考えています。

ーー飲食店の業務は、オペレーションやマニュアルを覚えるまでに時間がかかると一般的には認識されています。特に個人店など小規模店舗では、作業が属人的でマニュアル化されていないケースもあると思いますが、スポットでの業務はお店側、働く側でその課題を解決していますか?

業務を作業単位で切り分けをして、スポットワーカーにもできる業務に取り組んでもらっています。はじめての方でもすぐにできる業務を担ってもらうことで、正社員は本来の業務に集中できて、サービス全体のクオリティ向上に繋がります。業務の切り分けは私たちタイミーの知見を活かせるところで、ほかの飲食店さんやほかの業種でも同様のアドバイスやサポートをすることもあります。

ーー「THE 赤提灯」では、アルバイトスタッフ以外に正社員は何人くらいいらっしゃいますか?シフト作成、食材管理などは正社員が行うのでしょうか?スポットワーカーのみなさんは主にどんな業務をされますか??

「THE 赤提灯」は2フロアーあり、各階に正社員が1名以上いる状態で営業しています。調理は正社員が行います。初回勤務のスポットワーカーさんにはオリエンテーションで動画を見てもらったり、定番メニューを試食して理解を深めていただきます。その後に注文を取ったり、料理提供、テーブルの片付け、食器洗いを主にやってもらっています。卓番(テーブルごとの番号)をスタッフから見えるように貼ったり、お客さまから質問をいただいた時に答えられるようカンペを用意しています。

ーー全てのアルバイトスタッフがスポットワーカーであることで、お客さまの反応はいかがですか?
スポットワーカーが中心のお店と知った上で来店されるお客さまもいらっしゃいますが、サービスに対するネガティブな反応はなく、好意的に受け止めていただいています。来店した方がお店の雰囲気を気に入り、働きたいと思えば働けるところも、このお店の特徴です。


スポットワークをきっかけに
長期採用や社員への道も


ーーお客さまと働き手の良い循環が生まれているのですね。ちなみに、タイミーに登録している人の属性やボリュームゾーンを教えてください。

男女は半々で20代から40代の方がボリュームゾーンです。職業では会社員が33.5%と最も多いです。副業としてのニーズも高いです。

ーー飲食店がスポットワーカーに頼る場合、必要な時間、必要な場所に来られる人がいないという事も起こりえるものでしょうか?

タイミー全体のマッチング率は90%以上です。対象エリアも日本全国に広がっており、地方の人材不足も解消できる場が整ってきました。また、働き手にはキャンセルや遅刻に対するペナルティ制度を設けています。

ーー飲食店は一般的にシフトで出勤管理されていると思いますが、タイミーを活用してのスポット勤務は手続きなども簡単なのですか?

すぐに募集できるように、求人のひな形を用意できます。直前でも掲載可能で、人手がほしいお店側は前日や、場合によって当日に求人情報を出してもマッチングするケースも少なくありません。

ーースポットワーカーとして働く方にとっても、好きな時間に好きな場所で働けるメリットが非常に大きいですが、「THE 赤提灯」で全員スポットワーカーとして働くことで、他にはどんなメリットがありそうですか?


他の飲食店での仕事にも活かせるスキルアップの仕組みや、経験者じゃないと働きにくい気持ちを払拭できて、間口を広げる仕組みがよい評価をいただいています。独自のカリキュラムで自分のスキルが可視化されているので、やりがいも持てると聞いています。周りのメンバーもお互い初心者なので、よい雰囲気が自然とでき上がっています。

ーー今後、飲食店がタイミーの活用を考える時に「THE 赤提灯」はとても良いモデルケースになると感じます。飲食店の方が今後の取り組みや様子を知りたい時は、何か手段はありますか?

現時点ではまだオープンして間もないこともあり、飲食店向けに特に情報発信はしていませんが、今後は説明会の実施やレポートという形で公表することも検討しています。

ーー最後に「THE 赤提灯」に行ったらずばりこれを食べて欲しいというおすすめ料理があったら教えてください。

定番の名物ミックス焼きです。ホルモンの鮮度にこだわっていて、朝に〆て即0度に急冷されて納品される素材を使っています。もう一つはもつ煮込みで、3時間以上煮込んでいます。

ー松本さん、ありがとうございました。

人材不足解消は
機械化以外にも選択肢があった

慢性的な人材不足に悩む飲食店。一方で必要な分だけ好きな時に働きたいと考え、仕事の多様化を希望する働き手。両者の気持ちが一致する新しくてステキな働き方だと感じました。

スポットとは言いながらも気に入ったら継続的に働きに来てくれたり、ステップアップしてそこから正社員として働き始めることもあるのだとか。さらには、お店側がスポットワーカーさんを高く評価した際には「うちで働かない?」と声を掛けることも許容されており、働き手にとっては事前に環境や業務内容を知ってから長期アルバイトや正社員に移行することもできるわけです。双方にとって働くミスマッチを防げることも、非常に魅力的な部分ですね。

人口減少による働き手不足はこれからも続きます。これまでの記事でオペレーション改善や機械化による生産性アップについても多く言及してきましたが、働き方を見直して魅力ある職場をつくることも、本質的で大切な取り組みですね。

長らく飲食店の調理、接客をやっていた私も、実はときどき「飲食店の現場にまた立ちたい」と思うことがあります。気軽に実現できる選択肢を見つけたので、近々スポットワーカーとして働いてみたいと思います。
(吉田啓介)

【店舗情報】
店  名:THE 赤提灯
住  所:東京都港区新橋1-13-5
アクセス:新橋駅銀座口から徒歩1分
営業時間:16:00~23:30(ラストオーダー:お食事60分前 ドリンク30分前)
定休日 :月曜日、日曜日、祝日
https://www.instagram.com/akachochin_shimbashi/

※2023年6月の取材時点での情報です。


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